ITガバナンスは、大企業だけに必要な取り組みではありません。PCやクラウドサービスを使って業務を進めている以上、中小企業にも関係する重要な考え方です。特に、専任の情シス担当者がいない企業では、PC管理や情報漏洩対策が属人化しやすく、気づかないうちにリスクが高まることがあります。本記事では、ITガバナンスの基本的な意味から、内部統制やITマネジメントとの関係性、中小企業が確認すべき管理対象、情シス不在でも始められる進め方まで、順を追って解説します。

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ITガバナンスの意味を押さえる

ITガバナンスは、聞き慣れない言葉に見えるかもしれません。しかし内容を分解すると、「会社としてITをどう管理し、どう活用するかを決める仕組み」と理解できます。

まずは、ITガバナンスの意味を押さえた上で、混同されやすいITマネジメントや内部統制との違いを整理していきましょう。

ITガバナンスの意味

ITガバナンスとは、経済産業省の「システム管理基準」等でも提唱される、経営目標に向けIT投資やリスクを統制する仕組みです。

細かな構成要素は他にもありますが、要は「会社のITを、誰が、どの方針で、どのように管理するか」を決め、実行できる状態にすることです。

例えば、次のような状態を管理できているかを指します。

  • 誰がどのPCを使っているか
  • どの情報に誰がアクセスできるか
  • OSやソフトウェアは最新の状態か
  • 業務に不要なソフトが入っていないか
  • 情報漏洩や不正利用が起きた際に追跡できるか

ITガバナンスは、単なるIT部門の管理業務ではありません。ITを安全かつ効果的に使い、会社の信頼や業務継続を守るための経営上の仕組みです。

PC台数が増えたり、テレワークやクラウドサービスの利用が広がったりしている中小企業にとっても、避けて通れないテーマといえるでしょう。

ITマネジメントと何が違う?

ITガバナンスと混同されやすい言葉に、ITマネジメントがあります。両者の違いは、「方針を決めること」と「日々運用すること」に分けて考えると分かりやすくなります。

項目ITガバナンスITマネジメント
主体経営層・管理責任者情シス部門・IT担当者
役割IT活用の方針やルールを決める決められた方針に沿って運用する
視点経営視点実務視点
PC利用ルールを定めるPC台帳を更新し、設定を管理する

ITガバナンスは、「会社としてITをどう使い、どのリスクを管理するか」を決める仕組みです。一方、ITマネジメントは、その方針に沿ってシステムやPCを日々管理・運用する業務です。

中小企業では、経営者や総務担当者が両方の役割を担うこともあります。その場合でも、「方針を決める役割」と「実務を回す役割」を分けて考えると、管理すべきことが整理しやすくなります。

内部統制との関係

内部統制とは、会社が業務を適切に行うために設ける社内の仕組み全体を指します。業務の効率化、財務報告の信頼性確保、法令順守、資産の保全などが含まれます。

ITガバナンスは、この内部統制の中に含まれる考え方です。会社全体のルールや管理体制が内部統制であり、その中でITに関する管理の仕組みがITガバナンスだと考えると分かりやすいでしょう。

例えば、「従業員が業務に不要なソフトを勝手にインストールしてはいけない」というルールは、内部統制の一部です。そのルールを実際に守るために、インストール状況を確認したり、操作ログを残したりする仕組みがITガバナンスに当たります。

つまり、内部統制を機能させる上で、ITガバナンスは欠かせない要素です。

企業統治との関係

コーポレートガバナンス、つまり企業統治とは、会社が健全に運営されるよう、経営者、従業員、株主、取引先などの関係を適切に管理する仕組みです。

ITガバナンスは、この企業統治の中でも、IT領域に関わる管理の仕組みといえます。企業全体のガバナンスの中に、情報管理やIT活用を統制するITガバナンスが含まれているイメージです。

現在は、会計、人事、営業、顧客管理、ファイル共有など、多くの業務がIT上で行われています。ITの管理が不十分だと、情報漏洩や業務停止だけでなく、会社全体の信頼にも影響します。

そのため、ITガバナンスは単なるシステム管理ではなく、企業経営を支える重要な取り組みとして捉える必要があります。

中小企業にITガバナンスが必要な理由

「ITガバナンスは大企業が整えるもの」と思われがちですが、実際には中小企業にも必要です。むしろ、人手が限られ、情シス担当者が不在になりやすい中小企業ほど、仕組みで管理する重要性が高まります。

ここでは、中小企業にITガバナンスが必要な理由を五つの観点から見ていきましょう。

情報漏洩リスクを事前に減らす

情報漏洩は、外部からのサイバー攻撃だけで起こるものではありません。従業員の誤操作や、内部からの不正な持ち出しによって発生することもあります。

例えば、退職者のアカウントが残ったままになっている、誰でも共有フォルダを見られる、USBメモリへのコピーを把握できないといった状態は、情報漏洩のリスクを高めます。

ITガバナンスを整えることで、誰がどの情報にアクセスできるのか、どのPCでどのような操作が行われたのかを管理しやすくなります。アクセス権限や操作ログの管理を行えば、情報漏洩を未然に防ぎやすくなるだけでなく、万が一の際にも原因を追跡しやすくなります。

システム障害による業務停止を防ぐ

OSやソフトウェアを古い状態のまま使い続けると、セキュリティ上の弱点が残り、ウイルス感染やシステム障害につながる恐れがあります。

特に、サポートが終了したOSや更新されていないソフトウェアは注意が必要です。脆弱性が放置された端末を使い続けると、ランサムウェアなどの攻撃を受け、社内データが使えなくなる可能性もあります。

中小企業では、PCの更新状況を手作業で把握しているケースも多く、更新漏れに気づきにくいことがあります。ITガバナンスの仕組みを整え、OSやソフトウェアの状態を定期的に確認することで、業務停止につながる恐れを減らせます。

IT投資と管理コストを見直す

ITガバナンスは、セキュリティ対策だけでなく、コスト管理にも役立ちます。

社内で使われているソフトウェアやクラウドサービスを把握できていないと、使われていないライセンスに費用を払い続けたり、同じ目的のツールを複数部署で別々に契約したりすることがあります。

IT資産を一覧で管理できれば、不要なライセンスの解約、重複ツールの整理、端末の適切な更新計画などを進めやすくなります。

また、新しいシステムを導入する際にも、既存のIT資産や利用状況を把握していれば、無駄な投資を避けやすくなります。ITガバナンスは、情報漏洩対策とコスト最適化の両方に関わる取り組みです。

情シス不足でも管理体制を整える

中小企業では、専任の情報システム担当者がいないケースも少なくありません。総務や管理部門の担当者がIT管理を兼任していたり、ITに詳しい社員に対応が集中していたりすることもあります。

この状態では、担当者が異動・退職したときに、PC管理やアカウント管理の方法が分からなくなる恐れがあります。いわゆる属人化のリスクです。

ITガバナンスを整えることで、管理ルールや手順を明文化し、担当者が変わっても一定の水準で運用しやすくなります。さらに、ツールでPC情報や操作ログを自動的に収集できるようにすれば、少ない人手でも管理を続けやすくなります。

テレワークでも業務状況を見える化する

テレワークが広がると、社外から社内システムやクラウドサービスへアクセスする機会が増えます。一方で、オフィス外でどのように情報が扱われているのかは見えにくくなります。

例えば、業務用ファイルを私用のクラウドストレージに保存する、会社支給PCから外部メディアにデータをコピーする、業務時間外に不審なアクセスがあるといったリスクがあります。

ITガバナンスの観点では、社外での業務でも、アクセス状況や操作ログを確認できる状態を整えることが重要です。業務状況を見える化することで、情報漏洩対策だけでなく、適切な労務管理や業務負荷の把握にもつながります。

ITガバナンスで管理すべき5つの対象

ITガバナンスを強化する第一歩は、「何を管理するのか」をはっきりさせることです。管理対象があいまいなままでは、どこにリスクが潜んでいるのか、何から手をつければよいのかが見えてきません。ここでは、中小企業がまず押さえておきたい5つの管理対象を紹介します。

1. 社内PCと利用者

すべての管理の土台になるのが、「誰が、どの端末を使っているか」を把握することです。利用者や設置場所が分からない端末があると、アクセス権の設定もOSの更新も徹底できず、管理に穴が生まれます。

会社が支給したPCだけでなく、業務に使われているスマートフォンやタブレットも対象です。どの端末が、誰の手で、どこで使われているのかを一覧で見渡せる状態を目指しましょう。

2. OSとソフトウェアの更新状況

OSやセキュリティソフトが最新の状態に保たれているかは、必ず把握しておきたい対象です。更新が止まった端末には既知の脆弱性が残り、ウイルス感染やランサムウェア被害の入り口になりかねません。

特に、メーカーのサポートが終了したOSは、新しいセキュリティ更新が提供されません。古い端末を使い続けることが、そのまま会社全体のリスクにつながります。

3. 社内ルールの整備と遵守状況

パスワードの設定基準、ソフトウェアのインストール可否、USBメモリなど外部記録媒体の扱い、アカウントの管理方法といったルールが整っているかも、重要な管理対象です。

ここで見落としがちなのが、「ルールがあること」と「ルールが守られていること」は別だという点です。規程を作っただけで運用実態を確認していないと、形だけのルールになりがちです。後述する操作ログなどを使い、実際に守られているかまで見える状態にしておくことが大切です。

4. 操作ログ(情報の持ち出し)

操作ログとは、PC上で行われた操作の記録です。ファイルの閲覧・コピー・削除・印刷、USBメモリへの保存、Web上での操作などが対象になります。

ログを残しておけば、情報漏洩が起きた際に「誰が、いつ、どの情報を操作したのか」をたどれます。さらに、記録が残っていること自体が不正な持ち出しの抑止にもなります。大量のファイルコピーや業務時間外のアクセスなど、普段と異なる動きを早期に察知する手がかりにもなります。

5. テレワーク時の業務状況

テレワークでは、社外から社内システムやクラウドサービスへアクセスする機会が増える一方、オフィスの外で情報がどう扱われているかは見えにくくなります。

社外からのアクセス状況、クラウドサービスへのログイン履歴、業務時間外のアクセス、ファイル操作や外部デバイスの利用状況などを確認できる状態を整えておきましょう。社外での業務まで見える化することが、情報漏洩対策の要になります。

情シス不在でも進められる導入5ステップ

管理すべき対象が見えてきたら、次は実際に体制を整える番です。とはいえ、最初から完璧な仕組みを作る必要はありません。情シス専任者がいない中小企業では、効果の大きいところから段階的に進めるのが現実的です。ここでは、無理なく始められる5つのステップを紹介します。

ステップ1 IT資産を棚卸しする

最初に取り組むのは、社内のIT環境の棚卸しです。現状が分からなければ、リスクの所在も優先順位も判断できません。次のような情報を一つずつ整理しましょう。

  • PC、スマートフォン、タブレットなどの端末(台数・管理番号・設置場所・購入時期)
  • 利用者名と所属部署
  • インストールされているソフトウェア
  • 契約中のクラウドサービス
  • ライセンス数と利用状況
  • ネットワークやVPNの利用状況

棚卸しを行うだけでも、使われていない端末や不要なライセンス、放置されたアカウントといった「見えていなかったリスク」に気づけることが少なくありません。

ステップ2 管理方針と社内ルールを決める

現状を把握したら、管理方針と社内ルールを決めます。「どの情報を守るのか」「どの操作を禁止するのか」「トラブル時に誰へ報告するのか」を明確にしましょう。中小企業がまず整えたいルールには、次のようなものがあります。

  • パスワードの設定基準
  • 業務端末の私的利用の可否
  • 業務に不要なソフトのインストール禁止
  • USBメモリなど外部記録媒体の利用制限
  • 退職・異動時のアカウント削除手順
  • 情報漏洩や障害が起きた際の報告手順

ルールを細かくしすぎると、現場で守られなくなってしまいます。最初は実行しやすい内容に絞り、運用しながら改善していく形が現実的です。

ステップ3 責任者と運用体制を明確にする

ITガバナンスを機能させるには、「誰が責任を持つのか」をはっきりさせる必要があります。専任の情シス担当者がいない場合でも、管理責任者と日常運用の担当者は決めておきましょう。

このとき、一人にすべてを任せてしまうと、その人がいなくなった途端に運用が止まる属人化のリスクが残ります。できるだけ複数人で分担し、手順書を残しておくことで、担当者が変わっても同じ水準で運用できる状態を目指せます。

ステップ4 必要な機能だけのツールを選ぶ

IT管理ツールは、多機能であることよりも「自社に必要な機能がそろっているか」で選びましょう。機能が多すぎるツールは、使いこなせずに定着しないことがあります。確認したい主な機能は次の通りです。

  • PC情報を自動で収集できるか
  • OSやソフトウェアの状態を一覧で確認できるか
  • 不要なソフトの有無を把握できるか
  • ファイル操作やUSB利用などのログを取得できるか
  • テレワーク中のPC利用も確認できるか
  • ITに詳しくない担当者でも運用しやすいか

目的が「IT資産の把握」なのか、「情報漏洩対策」なのか、「操作ログの管理」なのかによって、必要な機能は変わります。まず目的を定め、それに合うツールを選ぶことが大切です。

ステップ5 低コストで続けられる運用にする

ITガバナンスは、導入して終わりではなく、続けられる仕組みにすることが重要です。中小企業では、初期費用だけでなく毎月の費用や運用の手間も大きな判断材料になります。コストを抑えながら継続するには、次のような工夫が役立ちます。

  • クラウド型ツールを活用し、サーバー管理の手間を減らす
  • すべての機能を一度に導入せず、必要な機能から始める
  • 年1回など、定期的にルールや運用を見直す
  • 担当者の交代に備えて手順書を残す

まずは社内PCの把握、OS更新状況の確認、操作ログの取得など、効果の大きい部分から着手しましょう。小さな改善を積み重ねることが、中小企業にとって現実的なITガバナンス強化につながります。

ITガバナンスを整え、情報漏洩と管理負担を減らす

ITガバナンスは、専任の情シス担当者がいない中小企業でも、段階的に整えていくことができます。まずは社内のIT資産を棚卸しし、管理方針や社内ルールを決め、責任者と運用体制を明確にすることから始めましょう。

その上で、PC情報の一元管理、OS更新状況の確認、操作ログの取得、外部デバイスの利用状況の把握などを進めることで、情報漏洩リスクと管理負担を減らしやすくなります。

こうした取り組みを支える選択肢の一つが、クラウド型IT資産管理・ログ管理ツールの「Watchy(ウォッチー)」です。Watchyでは、PC情報の管理、ソフトウェア情報の確認、フォルダ監視、USBドライブ監視、Web操作監視などを行えます。

ITガバナンスを整えるには、ルール作りだけでなく、実際のPC利用や操作状況を見える化する仕組みが欠かせません。まずは自社のIT資産やログ管理の状況を見直し、必要な対策から無理なく始めていきましょう。

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