情報の管理とセキュリティ対策がいっそう難しくなっている現代において、退職者による情報漏洩は人ごとではありません。退職者による情報漏洩は、取引先との信頼関係の毀損や法的トラブルにつながる重大なリスクとなっています。この記事では、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の調査データを基に、退職者による情報漏洩の実態を整理します。具体的な手口や企業へのリスク、そして今日から取り組める防止策まで解説しますので、ぜひ参考にしてください。

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ウィルス対策ソフトでは防げない情報漏洩を食い止める方法

本文7ページで、「ウイルス対策ソフトでは防げない情報漏洩を食い止める方法」について解説します。

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目次

退職者による情報漏洩の実態

IPAが2025年1月に実施し、同年8月に公開した「企業における営業秘密管理に関する実態調査2024」では、国内企業の情報セキュリティ系関連部門や経営層など1,200人を対象にWebアンケートを実施しています。その結果は、情報漏洩が一部の企業だけの問題ではないことを明確に示しています。まず、調査が明らかにした実態を確認しましょう。

参考:「企業における営業秘密管理に関する実態調査2024」報告書 | 情報セキュリティ | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構

企業の約3社に1社が営業秘密の漏洩を経験

同調査によると、「明らかに情報漏洩事例と思われる事象が複数回あった」「1度あった」「おそらく情報漏洩ではないかと思われる事象があった」の3項目を合わせた割合は35.5%に達しています。2020年度の調査では5.2%だったことと比較すると、わずか数年で約7倍に増加したことになります。

この数字は、企業規模を問わず多くの組織が当事者になり得ることを示しています。「うちはまだ経験していない」という企業も、対策を講じていなければいつ同じ状況に直面してもおかしくないといえるでしょう。

漏洩ルートの約44%が退職者起因

情報漏洩のルートの内訳を見ると、退職者が大きな比率を占めていることが分かります。「中途退職者(役員・正規社員)による漏洩」が17.8%、「契約満了後または中途退職した契約社員・派遣社員等による漏洩」が14.6%、「定年退職者による漏洩」が12.0%でした。これらを合わせると、漏洩ルート全体の約44%が退職者に起因していることになります。

退職時という節目は、データ持ち出しのリスクが高まる重要なタイミングであり、現職従業員によるルール不徹底や金銭目的の漏洩と並んで、対策を講じるべき大きな課題といえます。

漏洩した情報の種類

どのような情報が漏洩しているのかも、同調査から明らかになっています。流出があった・可能性があったと回答した割合を見ると、「製造に関するノウハウ・成分表等」が61.5%で最多でした。次いで「顧客情報」が60.1%、「生産プロセス等の工程」が57.2%と続きます。

顧客情報や独自のノウハウは、企業の競争力の核心ともいえるデータです。これらが外部に流出すれば、競合他社に利用されたり、顧客に実害を与えたり、信頼の失墜につながったりします。「流出しても大した影響はない」と軽視できる情報はほとんどないと考えるべきでしょう。

漏洩の発覚は3分の1が「偶然」

情報漏洩に気づくきっかけとして最も多かったのは、「第三者からの指摘」と「自社しか知り得ない情報を他社が使用しているのを偶然発見した」の2項目で、いずれも33.3%でした。つまり、約3件に1件は外部からの指摘や偶然の発見によって明らかになっているという実態があります。

計画的に発見できているわけではなく、偶然に気づくケースが多い。これは、多くの企業がログ管理や監視の仕組みを持っていないことを示唆しています。なお、同調査では、2020年度に0%だった「10億円以上の損害額」の割合が、今回の調査では約30%と大幅に増加したことも報告されています。発覚した時点では、すでに甚大な被害が発生しているケースも少なくないのです。

退職者がデータを持ち出す主な手口

退職者によるデータ持ち出しは、特別な技術がなくても実行できる手口が多いのが実態です。「在職中から少しずつ準備していた」というケースも珍しくありません。どのような方法で持ち出されるのかを把握しておくことが、対策の第一歩になります。

メール転送

最も手軽な手口の一つが、私用メールアドレスへの業務データの転送です。社内のメールシステムから、GmailやYahoo!メールなどの個人アカウントへファイルを送付するだけで完了します。大量のファイルを圧縮して一度に送る場合もあれば、毎日少量ずつ転送し目立たないようにするケースもあります。

特に退職前の数週間は、「必要な資料をまとめておく」という名目でデータを個人メールへ転送しやすいタイミングです。メールの送信履歴を記録・監視する仕組みがなければ、事後になっても証明が難しくなります。

クラウドストレージへのアップロード

Google DriveやDropbox、OneDriveなどのクラウドストレージへのアップロードも、よく使われる手口です。社内のネットワークに接続したPCから外部のクラウドへファイルをアップロードするだけで、社外から自由にアクセスできる状態になります。

個人利用のクラウドサービスは、企業の管理外のため追跡が困難です。退職後もデータにアクセスし続けることができるため、被害が長期化するリスクもあります。

USBメモリや外付けHDD

USBメモリや外付けHDDなどの物理的な記録媒体も、データ持ち出しの定番の手口です。容量の大きなデータを一度に持ち出せる上、社外に持ち出してしまえば追跡がほぼ不可能になります。

「退職あいさつに来た日にこっそり差し込んだ」「業務の合間に自席で操作した」といったケースもあります。物理的な持ち出しは、ネットワーク監視では検知できないため、別途USBの使用履歴を記録する仕組みが必要になります。

在職中のアカウントを利用した持ち出し

退職手続きが完了した後も、アカウントの削除が漏れていたために元社員がシステムにアクセスし続けられたという事例もあります。アカウント管理が属人的で、退職時の削除手順が定まっていない企業では特に起きやすいリスクです。

退職日に全てのアカウントが無効化されている状態にするためには、退職手続きのチェックリストにアカウント削除・権限剥奪の項目を明記しておくことが欠かせません。

退職者によるデータ持ち出しが企業に与えるリスク

データが持ち出されても、「実際に大きな問題にはならないのでは」と思う方もいるかもしれません。しかし、情報漏洩が発覚した場合のリスクは非常に深刻です。特に中小企業は、1件の漏洩が事業継続を揺るがすほどのダメージになり得ます。

法的責任と被害者に対する損害賠償リスク

退職者が情報を不正に持ち出した場合、企業は不正競争防止法や個人情報保護法違反を理由として、元社員や転職先の競合企業に対し損害賠償を請求できる可能性があります。

しかし、企業側の情報管理が不適切であった場合、今度は顧客や取引先から損害賠償を求められるリスクも生じます。

訴訟対応や弁護士費用だけでも、中小企業にとっては大きな負担です。法的リスクを軽視せず、事前の管理体制づくりに取り組む必要があります。

企業ブランドや信頼性の低下

顧客情報や営業秘密が漏洩した事実が公になれば、企業の信頼性は大きく傷つきます。特に顧客データが流出した場合、取引先からの信頼を一気に失うことになります。

「あの会社は情報管理がずさんだ」という評判が広まれば、新規顧客の獲得にも影響します。一度失った信頼を取り戻すには長い時間がかかるため、予防策への投資がいかに重要かが分かります。

二次被害が発生するリスク

持ち出されたデータが、さらに第三者へ渡るケースもあります。退職者が転職先の企業に情報を提供したり、悪意ある者に売却したりすることで、二次・三次の被害が発生するリスクがあります。

また、アカウント情報が漏洩した場合、不正アクセスによるシステム侵害に発展する可能性もあります。データが一度外部に出てしまえば、その後の影響を完全にコントロールすることは不可能です。

自社のノウハウや情報が他社に流出するリスク

長年かけて培った技術情報・製造ノウハウ・営業手法が競合他社に流れれば、自社の競争優位性は大きく損なわれます。新製品の開発情報が漏洩すれば、先に類似品を市場に出される可能性もあります。

無形の知的財産こそが企業の競争力の源泉であるにもかかわらず、それが外部に流出するリスクを十分に認識していない企業はまだ多くあります。

退職者のデータ持ち出しを防ぐための具体的な対策

ここからは、今すぐ着手できる具体的な防止策を解説します。特に専任の情シス担当者がいない中小企業でも実行しやすい内容を中心に紹介します。

退職予定者のアクセス権限を段階的に制限する

退職が決まった社員のシステムアクセス権限を、退職日を待たずに段階的に制限することが重要です。例えば、退職の1〜2カ月前から機密情報へのアクセスを制限し、退職日には全ての権限を無効化するという運用フローを事前に設計しておきましょう。

こうした手順を「退職手続きチェックリスト」として文書化しておくことで、担当者が変わっても一定の品質で対応できます。属人的な管理をやめ、仕組みとして機能させることが大切です。

PCログ・操作履歴の記録で「証拠を残せる」環境をつくる

ログ(操作の記録)が残っていなければ、たとえデータ持ち出しが疑われても、事後の調査や法的手続きが困難になります。PCの操作ログ・USB使用履歴・ファイルの操作記録を日常的に取得しておくことで、「証拠を残せる」環境が整います。

ログがあることで、「持ち出しを試みた形跡がある」という早期発見にもつながります。退職前後の特定の期間だけログを確認するという運用も、実務上は有効な方法です。

USBポート制限・外部アップロード制御による物理的なブロック

USBポートの使用自体を制限したり、特定のクラウドストレージへのアクセスを制御したりすることで、データ持ち出しの手段そのものを封じることができます。全社での完全な制限が難しい場合でも、機密情報を扱う部署や退職予定者のPCに限定して適用するだけでも効果があります。

物理的なブロックは「抑止力」としても機能します。「監視されている」という意識があれば、不正行為の動機を持つ者も実行に移しにくくなります。

情報の扱いや持ち出しのリスクについて教育する

技術的な対策と並んで重要なのが、従業員への教育です。入社時・定期的な研修・退職前の説明など、複数のタイミングで「どの情報が秘密保護の対象か」「データ持ち出しは不正競争防止法違反になり得る」という認識を共有しましょう。

「悪意がなかった」では通用しないケースもあります。「業務上使っていた資料だから持っていっても問題ない」と思い込んでいる社員も少なくないため、明確な基準とルールを繰り返し伝えることが重要です。

秘密保持契約(NDA)を採用時・退職時の手続きに組み込む

採用時だけでなく、退職時にも秘密保持契約(NDA:Non-Disclosure Agreement)を締結することが、法的な予防策として有効です。「退職後も一定期間、業務で知り得た情報を第三者に開示しない」という内容を書面で確認しておくことで、万が一の際の法的手続きをスムーズに進められます。

退職フローの中にNDA締結を組み込み、退職手続き書類の一つとして標準化しておきましょう。NDAには「秘密保持期間(一般的に2〜5年)」「対象とする情報の範囲」「違反時の損害賠償条項」を明記することがポイントです。弁護士に依頼して作成したテンプレートを用意しておくと、都度対応する手間を省けます。

退職者による情報漏洩対策なら「Watchy(ウォッチー)」

退職者によるデータ持ち出しを「仕組みで防ぐ」ためには、ログ管理と操作監視が欠かせません。ここでは、IT資産管理と操作ログ管理をまとめて解決できるクラウド型ツール「Watchy(ウォッチー)」を紹介します。情シス専任者がいない中小企業でも導入しやすい設計となっており、退職前のリスク管理に活用できます。

退職前のPC操作をリアルタイムで記録

Watchyのフォルダー監視・USBドライブ監視機能を使えば、ファイルの作成・削除・コピーなどの操作ログをリアルタイムで取得できます。社内の重要フォルダを対象にアラートを設定しておくことで、退職予定者が不審なファイル操作を行った際に即座に気付ける体制を整えられます。

「持ち出されてから気付く」ではなく「起きる前に察知する」体制が、Watchyを使うことで実現できます。操作ログは証拠としても活用できるため、事後に法的手続きが必要になった際にも力を発揮します。

情シス不在の中小企業でも即日導入できる

Watchyはクラウド型のサービスのため、社内サーバーの設置が不要です。ITの専門担当者がいない企業でも直感的に使えるシンプルな管理画面設計となっており、導入後すぐにPCのログ監視・IT資産管理を開始できます。

退職手続きのタイミングで対象者のアカウント管理や操作履歴の確認を行う運用フローにも組み込みやすく、総務・管理部門の担当者が主体的に運用を回しやすいのも特徴です。

必要な機能だけを選び、コストを抑えてセキュリティ対策を実現

WatchyはPC1台・1機能当たり月額50〜100円で利用でき、パッケージ購入ではなく必要な機能だけを選んで契約できます。情報漏洩対策に最低限必要な「フォルダー監視」「USBドライブ監視」「Web操作監視」だけを選んでスモールスタートすることも可能です。予算・リソースが限られた中小企業でも、無理なく始められる価格帯となっています。

Watchy(ウォッチー) - クラウド型IT資産管理・ログ管理ツール

データ持ち出しは「仕組み」で防ぐ時代へ

退職者によるデータ持ち出しは、気付いてから対処しようとしても手遅れになるケースがほとんどです。ログがなければ証拠もなく、法的手段も取れません。IPA調査が示すとおり、漏洩の3分の1は偶然に発覚しており、多くの企業が「監視されている」という意識を持たせる仕組みを持っていない実態があります。

大切なのは、「信頼していた社員が悪意を持つとは思えない」という性善説だけに頼らず、仕組みと記録によって予防することです。アクセス権限の段階的な制限・ログの日常的な取得・退職フローの標準化といった対策を組み合わせることで、リスクを大幅に下げることができます。

まずは自社の現状を見直し、「ログが取れているか」「退職時の手順が定まっているか」という2点から確認を始めてみてはいかがでしょうか。

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執筆者

Watchy編集部

従業員が安心して働ける環境を提供するための、IT資産管理、情報漏洩対策、労務管理に関するコンテンツを発信しています。

Watchyは、株式会社スタメンが運営するクラウドサービスです。企業のIT情報統制の課題やバックオフィスの課題を、情報システム担当者が手薄な状況でも、Watchyが解決。設定・運用の手間を最小化しながら、押さえるべきポイントを確実に押さえた企業統制の実現を支援します。

【株式会社スタメンについて】 東京証券取引所グロース市場上場。Watchy、TUNAGなど、人と組織の課題解決を実現するSaaSを展開。情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)及びプライバシーマークを取得。