サイバー攻撃による中小企業の被害は、取引先にも及び、信頼関係の喪失という深刻な問題を引き起こします。しかし、「何から手をつければいいか分からない」という担当者も少なくありません。そこで、IPA(情報処理推進機構)が毎年発行する情報セキュリティ白書と10大脅威が対策のヒントとなります。この記事では、2025年版の内容に基づき、中小企業の担当者がすぐに実践できる対策を分かりやすく解説します。

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情報セキュリティ白書とは何か

情報セキュリティ白書は、専門家向けで難解な資料という印象を持たれやすく、実際に読んだことのある情報システム担当者も少ないかもしれません。まずは、この白書の概要と、しばしば混同される「10大脅威」との違いについて確認していきましょう。

IPAが毎年発行する白書の概要と目的

情報セキュリティ白書は、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が2008年から毎年発行している、セキュリティ情報の年次報告書です。IPAとは、経済産業省が所管する独立行政法人で、日本のIT推進とセキュリティ対策を担う公的機関です。

白書には、その年に起きたサイバー攻撃の動向や、国内外のセキュリティインシデントの分析が詳細にまとめられています。企業の情報セキュリティ担当者や経営者が「今年のセキュリティ情勢を把握する」ための、信頼性の高い公式資料として広く活用されています。

難しそうに見えますが、要点を押さえれば中小企業の担当者でも自社対策に生かせる内容が含まれています。「今年何に備えるべきか」を知るための、最も信頼できる情報源といえるでしょう。

情報セキュリティ白書 | 書籍・刊行物 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構

セキュリティ白書と「10大脅威」は何が違うのか

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が発行する「情報セキュリティ白書」と「情報セキュリティ10大脅威」は、どちらも国内のセキュリティ対策において重要な指針となりますが、その役割は明確に異なります。

まず10大脅威は、前年に発生した社会的に影響の大きな情報セキュリティ事案から、特に警戒すべき種類を選出したものです。例年1月下旬に速報として公表されるため、最新の攻撃手法を迅速に把握する際に重宝します。以前は個人向けと組織向けの両方が発表されていましたが、現在は組織における脅威への対策に主軸を置いた構成に変化しました。

対して白書は、国内外のセキュリティ情勢を包括的に記録した年報としての性質を持ちます。10大脅威の解説にとどまらず、最新の技術動向や統計データまで幅広く網羅しており、数百ページに及ぶ充実した内容が特徴です。発行時期は例年夏頃となっており、情報を深く掘り下げて体系的に理解することに適しています。

実務においては、まず10大脅威を確認して喫緊の課題を整理し、背景知識や具体的な対策事例を補完するために白書を活用する流れが効率的といえます。

情報セキュリティ10大脅威 2026 | 情報セキュリティ | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構

2026年に注意すべき3つの脅威

2026年版の10大脅威では、例年と変わらず組織を狙う攻撃が上位を占めています。特に中小企業の担当者が押さえておくべき脅威が3点あります。難しい技術の話ではなく、「どんな被害が起こるのか」という視点で確認しておきましょう。

11年連続ランクインのランサムウェア

ランサムウェアとは、感染したパソコンやサーバー内のデータを暗号化し、復元と引き換えに身代金(ransom)を要求する不正プログラムです。2026年の10大脅威でも組織部門の第1位を維持しており、11年連続でランキング入りしています。

被害を受けた企業の多くは、業務が完全にストップする状況に追い込まれます。ファイルにアクセスできなくなるだけでなく、顧客情報や取引データが外部に流出するリスクも伴います。

中小企業も例外ではありません。むしろセキュリティ対策が手薄な中小企業は、格好の標的になりやすい状況です。感染経路はメールの添付ファイルや不審なリンクのクリックが多く、一人の従業員の操作ミスが全社的な被害につながるケースもあります。

取引先を経由して大企業を狙うサプライチェーン攻撃

サプライチェーン攻撃とは、セキュリティの強固な大企業を直接狙うのではなく、その取引先や委託先を踏み台にして攻撃する手口です。2026年の10大脅威では第2位に位置しています。

「自社は大企業と直接的な接点がないから無関係だ」と考える方も多いはずです。しかし、実際には大企業の二次請け企業や保守を担当する会社など、ビジネスを支える幅広いネットワークのどこかが標的となります。攻撃者は、守りが手薄な中小企業を侵入口として悪用し、そこを起点として最終目標である大企業の内部システムへ侵入を試みます。

自社が被害者になるだけでなく、攻撃の中継点として取引先に迷惑をかけてしまうリスクも無視できません。

AIを利用したサイバーリスク

IPAが発表した「情報セキュリティ10大脅威2026」において、今回初めて選出されたのが「AIの利用をめぐるサイバーリスク」という項目となります。生成AIの技術が急速に社会へ浸透する一方で、悪意を持つ攻撃者側もこの技術を悪用した巧妙な手口を本格的に使い始めました。

具体的には、生成AIによって精巧に作成された自然なビジネスメールによるフィッシング詐欺が増加傾向にあります。これまでの「日本語が不自然なメール」という見分け方が通用しなくなりつつあり、従業員教育のみでは十分に対応しきれないのが実情です。

また、社内でのAI活用が進むほど、機密情報を誤って入力してしまう情報漏洩のリスクも高まっています。利用ルールの整備をセキュリティ対策の一環として捉え直す必要が出てきました。

セキュリティリスクを放置すると何が起こるのか

「まだ被害に遭ったことがないから大丈夫」と思っている企業ほど、実は危険な状態にあることが少なくありません。被害が発生してから後悔しても、失ったものは簡単には取り戻せません。ここでは、セキュリティ対策を怠った場合の具体的なリスクを確認しておきましょう。

情報漏洩により取引先・顧客からの信頼を失う

情報漏洩が発生した場合の影響は、金銭的な損害にとどまりません。顧客や取引先に対して謝罪・報告対応が必要になり、信頼関係が大きく損なわれます。

特に顧客の個人情報が流出した場合、プレスリリースによる公表や個別通知が求められます。「あの会社に情報を預けて大丈夫なのか」という疑念を持たれることで、既存取引の見直しや新規受注の機会損失につながるケースも少なくありません。

一度失った信頼を回復するには、長い時間と多大なコストがかかります。

復旧まで業務ができず膨大な損害がでる可能性も

ランサムウェアなどのサイバー攻撃を受けた場合、システムの復旧には数週間から数カ月を要することがあります。その間、業務が完全に停止する事態も珍しくありません。

復旧にかかるコストも無視できません。専門業者への依頼費用、システム再構築の費用、そして業務停止による機会損失などを合計すると、数百万円から数千万円規模の損害になることもあります。バックアップがなければ、重要なデータが永久に失われるリスクもあります。

中小企業にとってこれだけの損害は、事業継続そのものを脅かす深刻な問題です。

被害を受けた中小企業が取引先に及ぼす影響

IPAが実施した「2024年度中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査」の結果によれば、サイバー攻撃の被害を受けた中小企業の事例において、その影響が自社のみに留まらず、取引先まで波及するケースが報告されています。

自社が被害を受けて終わるわけではなく、攻撃の起点として悪用されることで、大切なビジネスパートナーにウイルスを拡散させたり、共有している機密情報を流出させたりするリスクが生じます。

このような事態が発生した場合には、取引先から多額の損害賠償を請求されるだけでなく、長年築き上げてきた信頼関係を根底から失う事態も想定しなければなりません。

実際に、セキュリティ対策の不備を理由に取引を停止される事例も後を絶ちません。セキュリティ対策を講じることは、自社の資産を守るためだけではなく、サプライチェーン全体に対する責任を果たすためにも不可欠な取り組みといえます。

中小企業が今すぐできるセキュリティ対策

「セキュリティ対策は費用も時間もかかる」というイメージがあるかもしれません。しかし、基本的な対策の中には今日からでも始められるものがあります。まずは優先度の高い対策から順番に取り組んでいきましょう。

IPAの無料診断を活用する

まず最初に取り組んでほしいのが、IPAが提供する無料の診断ツールの活用です。「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」は、専門知識がなくても自社のセキュリティ状況を簡単にチェックできるツールです。

質問に答えるだけで現状の問題点が分かり、優先して取り組むべき対策が明確になります。費用は一切かからないため、まず現状把握から始めることが対策の第一歩です。

5分でできる!情報セキュリティ自社診断 | 情報セキュリティ | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構

OSやソフトウェアを常に最新に保つ

サイバー攻撃の多くは、古いOSやソフトウェアの脆弱性(セキュリティ上の欠陥)を悪用して侵入します。最新のアップデートを適用することで、既知の攻撃手口をブロックできます。

社内のパソコンやサーバーのOSを定期的に確認し、アップデートが適用されていない端末がないかチェックする習慣をつけましょう。特にWindowsのセキュリティ更新プログラムは、リリースされたら速やかに適用することを推奨します。

社内向けのセキュリティポリシーを作成する

ルールがなければ、従業員はそれぞれの判断でセキュリティに関する行動を取ることになります。「個人のUSBメモリを業務に使っていいのか」「社外でWi-Fiに接続していいのか」という基準が曖昧なまま放置されているケースは多くあります。

セキュリティポリシーとは、社内のセキュリティに関するルールをまとめた文書です。難しいものを作る必要はありません。「パスワードの管理方法」「メールの取り扱い」「個人デバイスの利用制限」といった基本的なルールをA4一枚にまとめるだけでも、大きな効果があります。

情報管理を一元化し、個人デバイスに機密情報を入れさせない

機密情報が従業員の個人パソコンやスマートフォンに保存されている状態は、非常にリスクが高い状況です。デバイスを紛失したり、個人端末がウイルスに感染したりするだけで情報漏洩につながります。

クラウドサービスを活用してファイルの保存場所を会社管理のシステムに集約することで、情報の所在を把握しやすくなります。アクセス権限を適切に設定することで、必要な人だけが必要な情報にアクセスできる環境を整えられます。

リモートワーク向けのセキュリティ対策も重要

テレワークの普及に伴い、社外から社内ネットワークへのアクセスが増えています。自宅や外出先でのWi-Fi利用は、情報漏洩リスクが高まる場面の一つです。

VPN(仮想プライベートネットワーク)を活用することで、社外からの通信を暗号化して安全に社内システムに接続できます。社外からのアクセスに多要素認証(パスワードと別の認証手段を組み合わせる方式)を設定するだけでも、不正アクセスのリスクを大幅に下げられます。

IT資産管理・ログ管理をまとめて解決するなら「Watchy」

ここまで紹介した対策を実際に運用するには、「誰が何をしているか」を日常的に把握する仕組みが必要です。専任のIT担当者がいない中小企業でも管理しやすいツールとして、IT資産管理・ログ管理サービスの「Watchy」があります。

操作ログで「誰が何をしたか」を記録する

情報漏洩が発生した場合、「いつ・誰が・何をしたか」を追跡できなければ原因究明ができません。Watchyのフォルダー監視機能では、ファイルの作成・削除・名称変更などの操作ログを自動で取得できます。

社内の重要ファイルに対する操作があった際にアラートを設定することも可能です。問題が起きてから慌てて調べるのではなく、日常的に記録が残る仕組みを整えておくことが重要です。

OSアップデートの状態を一括で把握して脆弱性を放置しない

社内のパソコンが10台・20台と増えてくると、全ての端末のアップデート状況を手動で確認するのは困難です。Watchyのデバイス更新機能では、Windows Updateの更新状況を管理画面上で一括把握し、未適用の端末をまとめて更新することができます。

対応漏れが一目で分かる環境をつくることで、脆弱性を放置したまま業務を続けるリスクを減らせます。

USBの持ち出しやWeb閲覧を記録・制限して情報漏洩の入り口をふさぐ

情報漏洩の経路として多いのが、USBメモリへのデータコピーや不審なWebサイトへのアクセスです。WatchyのUSBドライブ監視機能では、USBドライブ上のファイル操作のログを取得し、必要に応じてUSBの利用自体を制限することもできます。

Web操作監視機能では、ブラウザの閲覧・ダウンロード履歴を取得でき、特定のサイトを閲覧した際のアラート設定も可能です。社内ルールが実際に守られているかをデータで確認できる環境が整います。

Watchy(ウォッチー)

白書は自社の状況確認に活用しよう

情報セキュリティ白書や10大脅威は、専門家だけが読む難しい資料ではありません。「今年何に備えるべきか」を知るための、信頼性の高い公的な指針です。

2026年は特に、ランサムウェア・サプライチェーン攻撃・AIを使った攻撃の3点を意識した対策が求められます。まずIPAの無料診断で自社の現状を確認し、優先度の高いところから一つずつ対策を進めていきましょう。

セキュリティ対策は完璧を目指す必要はありません。何もしないよりも一歩踏み出すことが、自社と取引先を守る最初の行動です。白書の内容を参考にしながら、今年のセキュリティ対策を見直してみてはいかがでしょうか。

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執筆者

Watchy編集部

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