自社のセキュリティ対策の水準を客観的に示したいと考える企業にとって、格付け制度は注目すべき仕組みです。セキュリティ格付け制度の概要や背景、対策の段階、導入するメリットと注意点について分かりやすく解説します。ぜひ参考にしてみましょう。

<IT資産管理・情報漏洩対策をPC1台100円から!手軽に始めるならWatchy>
→PDF資料をまずはダウンロードする

セキュリティ格付け制度とは何か

セキュリティ格付け制度とは、企業や組織が取り組んでいる情報セキュリティ対策のレベルを、一定の基準に基づいて評価するものです。

評価の結果は、星マーク(スター、★)などの段階で可視化する仕組みになっています。まずは、同制度の概要と、混同されやすい「認証」「評価」との違いを解説します。

セキュリティ格付け制度の概要

セキュリティの格付けは、経済産業省や独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が構築を進めている制度です。企業のセキュリティ対策水準を客観的な指標で評価し、段階的に示す仕組みを目指しています。

具体的には「★1から★5」までの5段階評価が検討されており、取り組みの成熟度や対策の網羅性に応じて格付けされます。この制度の大きな目的は、企業のセキュリティ対策における「見える化」の実現です。従来、組織の対策状況は外部から見えにくく、取引先や政府機関が客観的に安全性を判断することは困難でした。

そこで本制度の導入により、対策状況が数値や段階として明確に可視化されるようになります。2026年度末ごろの制度開始に向け、現在は詳細な設計が進んでいる段階です。将来的には、企業間の信頼構築や取引の検討において、格付けの内容が信用の尺度として活用されることが期待されています。

なお、★1と★2については、先行して運用されている中小企業向けの自己宣言制度「SECURITY ACTION」をベースとして活用する方針が示されています。

※参考:「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度に関する制度構築方針(案)」(SCS評価制度の構築方針(案))を公表しました (METI/経済産業省)

格付けと「認証」「評価」の違い

セキュリティに関する仕組みには、格付け以外にも「評価」や「認証」といった考え方があります。似た言葉のため混同されがちですが、役割がそれぞれ異なります。

まず「評価」は、自社のセキュリティ状態を診断・点検する「行為(プロセス)」を指します。専門機関によるアセスメントや、自社のチェックリスト運用などが該当し、課題や対策の実施状況を把握することが目的です。

一方「格付け」は、評価で得られた結果を段階(スターの数など)で「見える化」し、社外にも分かる形で示せるようにしたものです。さらに「認証」は、定められた基準を満たしていることを第三者機関が「保証」する仕組みで、ISMSやPマークなどが代表例です。

つまり、「評価=診断する(プロセス)」「格付け=結果を示す(表現)」「認証=基準適合を保証する」といったように、概念の性質が異なります。セキュリティ格付け制度は、上記のうち評価と格付けの要素を組み合わせた仕組みといえるでしょう。

セキュリティ格付け制度が検討された背景

経済産業省を中心として、セキュリティ格付け制度が検討された背景には、企業を取り巻くサイバーリスクの変化や、ビジネス上の要請といった複数の背景があります。どういった理由で制度が打ち立てられたのか、その経緯を確認しておきましょう。

サイバー攻撃リスクの高度化・多様化

近年、サイバー攻撃の手法は急速に高度化・多様化しており、事業の規模を問わず深刻な被害が報告されています。

例えば、ランサムウェアによるデータの暗号化・身代金の要求や、標的型攻撃メールによる機密情報の窃取など、手口がますます巧妙化している状況です。サプライチェーンを経由した間接的な攻撃なども、決して少なくない被害が出ています。

こうした状況において政府や業界団体は、企業が最低限実施すべきセキュリティ対策の水準を示す必要性を、強く認識するようになりました。

しかし、従来の対策指針は「何をすべきか」は示せても、「その対策がどの程度実施されているか」を客観的に示す手段がなかったわけです。セキュリティ格付け制度は、こうしたギャップを埋めるための仕組みとして、徐々に検討が進められるようになりました。

取引先・サプライチェーンからの要請

業界・職種を問わず多くの企業が、取引先や委託先のセキュリティ対策を確認したいと考えるようになったのも、同制度の確立が求められた大きな理由です。

大企業を標的にした攻撃の多くは、セキュリティが相対的に手薄な中小企業や、委託先を踏み台にして行われるケースが珍しくありません。

こうしたサプライチェーン攻撃の深刻化を受けて、大手企業や官公庁では、取引先に対してセキュリティ対策の実施・報告を求める動きが広がっています。しかし、取引先が実際にどの程度のセキュリティ体制を敷いているかは、外部から判断しにくいのが現状です。

そこで格付け制度により、中小企業も自社の対策水準を格付けとして示せるようにするために、制度の普及が急務とされていました。

自社のセキュリティを客観的に示す必要性

企業が政府の公共調達(物品やサービスの購入・発注)に参入する際、客観的なセキュリティ対策の提示を求められる機会が増えています。これが、新たな格付け制度が構築される重要な背景となりました。

従来、対策を証明するには「ISMS」の認証取得や「プライバシーマーク(Pマーク)」の申請が主な手段でした。しかし、これらの取得には多額の費用と長い準備期間を要するため、中小企業にとっては負担が重いという課題がありました。

そこで、より取り組みやすい格付け制度を導入することで、中小企業を含む幅広い層が自社のセキュリティ体制を外部へ示せるようになります。政府は、この格付けを調達審査の基準として活用することを検討しており、企業側も受注機会を広げるための有効な手段として注目しています。

本制度におけるセキュリティ対策の段階

セキュリティ格付け制度では、★1から★5の5段階でセキュリティ対策の水準が定義されています。段階が上がるにつれて、求められる対策の範囲や管理の成熟度が高くなります。ここで、各段階の概要を押さえておきましょう。

★1・★2|既存のSECURITY ACTION制度

★1・★2は、IPAが運営する「SECURITY ACTION」の枠組みと対応しています。SECURITY ACTIONは、中小企業が自社のセキュリティ対策を宣言するための制度で、「情報セキュリティ5か条」への取り組みにより★1が認められます。

さらに、「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」の実施と、情報セキュリティ基本方針の策定・公表を行った企業は、★2として認められる仕組みです。

この段階は、これからセキュリティ対策に取り組む企業にとって、最初のステップとして位置付けられています。格付け制度に組み込まれることで、既存のSECURITY ACTIONを宣言した中小企業が、格付け制度の文脈でも、自社の取り組みを示せるようになりました。

★3|全ての企業が最低限満たすべき基礎的なセキュリティ対策

★3は、全ての企業が最低限実施すべき、基礎的なセキュリティ対策のレベルを意味します。具体的には、OSやソフトウェアの定期的なアップデートやウィルス対策ソフトの導入、パスワード管理の徹底などです。

さらに、重要データのバックアップや不審メールへの対応ルールの策定など、基本的な技術的・運用的対策が求められます。

★3は格付け制度の中で、あらゆる企業が到達すべきベースラインとして設定されており、SECURITY ACTIONの次のステップとして目指すべき水準です。中小企業がサイバー攻撃の踏み台にされるリスクを低減するためにも、このレベルの達成が推奨されています。

★4|管理・運用まで含めた標準的なセキュリティ対策

★4は技術的な対策だけでなく、組織的な管理・運用体制の整備まで含めた、標準的なセキュリティ対策が求められる水準です。具体的には、情報資産の管理台帳の整備や適切なアクセス制御、インシデントの対応手順の策定、従業員に対するセキュリティ教育の実施などが含まれます。

★3が「何をするか(対策の実施)」に主眼を置くとすれば、★4は「誰が・いつ・どのように管理・運用するか」といった、体制面の整備が加わるイメージです。

事業規模の大きな企業や、顧客情報・機密情報を多く取り扱う企業にとっては、このレベルへの到達が実質的に求められる場面が増えています。

★5|継続的改善を前提とした高度なセキュリティ対策

★5は本制度における最上位の段階として位置付けられています。未知の脅威も含めた高度なサイバー攻撃への対応を想定しており、継続的な改善活動を前提とした、高い水準の対策が求められる見通しです。

具体的な要件については今後精査される予定ですが、自組織のリスクを適切に把握した上で、現時点でのベストプラクティス(最善の手法)に基づく対策を実行する体制が想定されています。また、PDCAサイクルを組み込んだセキュリティマネジメントの実施や、第三者による評価の受審なども検討材料に含まれています。

高いセキュリティ水準を必要とする政府機関との取引や、金融、医療、インフラなどの重要分野を担う企業にとって、将来的な到達目標となる段階です。★5については、2026年度以降に対策基準や評価スキームの具体化が進められる予定となっており、今後の動向が注目されます。

セキュリティ格付け制度を導入するメリット

セキュリティ格付け制度の活用により、自社のセキュリティ対策の改善だけでなく、対外的な信頼の獲得やビジネス上のメリットも期待できます。制度を導入するメリットを整理しておきましょう。

自社のセキュリティレベルを客観的に可視化できる

セキュリティ格付け制度を活用する最大のメリットは、自社のセキュリティ対策について、客観的な基準により確認できる点です。

日頃から対策に取り組んでいても、「自社の対策は十分か」「どのレベルに位置するのか」を自己評価するのは難しいのが実態です。そこで、格付けという形で段階が明確に示されることで、現状の課題や次に取り組むべき対策が整理しやすくなります。

また担当者レベルだけでなく、経営層が自社のセキュリティ水準を把握しやすくなる点も、メリットといえるでしょう。セキュリティ対策への投資判断や、優先順位の設定に客観的な根拠を持てるようになります。

政府や取引先・顧客からの信頼の獲得につながる

格付けの結果を外部に示すことで、政府機関や取引先・顧客に対して、自社のセキュリティ対策水準を分かりやすく伝えられます。文章による説明よりも、段階的な格付けの方が直感的に理解されやすく、信頼の獲得に効果的です。

政府調達の条件として、セキュリティ対策の水準が求められるケースが増えている中、格付けがビジネス上の差別化要因になる可能性もあります。また、サプライチェーン全体のセキュリティを重視する大企業との取引においても、格付けの取得が評価に寄与する場面もあるでしょう。

取引先の取り組み状況も把握できる

セキュリティ格付け制度が広く普及することで、自社だけでなく取引先や、委託先のセキュリティ対策水準を確認しやすくなります。取引先に格付けの取得を求めることで、サプライチェーン全体のセキュリティ水準を、一定以上に保てるようになります。

従来は、取引先のセキュリティ状況を確認するために、アンケートや監査といった手間のかかる方法に頼らざるを得ない企業は少なくありませんでした。

そこで、格付けという共通指標が普及することで、確認の手続きが効率化されるとともに、取引先に対して明確な基準を示せるようになります。

セキュリティ格付け制度を導入する際の注意点

セキュリティ格付け制度を導入する際には、格付けの取得自体が目的にならないように注意が必要です。評価の基準に合わせて書類や手続きを整えることだけに注力すると、実態を伴わない対策になりやすく、形骸化のリスクがあります。

格付け制度が本来目指しているのは、評価結果をベースとして、自社のセキュリティ対策を継続的に改善することです。取得した段階で満足するのではなく、評価で明らかになった課題に対して、具体的な改善策を講じましょう。

また、サイバー攻撃の手法は常に進化しており、今日有効な対策が数年後にも通用するとは限りません。定期的に評価を見直し、最新の脅威動向に合わせた対策の更新を続ける必要があります。

格付けはあくまでも「現状確認のツール」として活用し、継続的に強固なセキュリティ体制の向上に努めましょう。

自社の目的に合ったセキュリティ格付け制度を活用しよう

セキュリティ格付け制度は、企業のセキュリティ対策の水準を★1〜★5の段階で可視化し、自社の現状の把握や、取引先・顧客への信頼訴求に活用できる仕組みです。

サイバー攻撃のリスクや、サプライチェーン全体でのセキュリティの強化が求められる現代において、その意義はますます高まっています。

まずは、自社の現状を正しく把握し、状況に見合った格付けの取得を目指しましょう。ただし、格付けの取得自体を目的化せず、評価結果を基に、継続的な改善に取り組む姿勢を持つことが大切です。

事業の特性や取引先からの要請なども考慮しつつ、達成可能な段階から取り組みを始めましょう。

低コスト&簡単運用 必要な機能だけを導入!だから低コストに始められる 低コスト&簡単運用 必要な機能だけを導入!だから低コストに始められる
編集部のイメージ画像
執筆者

Watchy編集部

従業員が安心して働ける環境を提供するための、IT資産管理、情報漏洩対策、労務管理に関するコンテンツを発信しています。

Watchyは、株式会社スタメンが運営するクラウドサービスです。企業のIT情報統制の課題やバックオフィスの課題を、情報システム担当者が手薄な状況でも、Watchyが解決。設定・運用の手間を最小化しながら、押さえるべきポイントを確実に押さえた企業統制の実現を支援します。

【株式会社スタメンについて】 東京証券取引所グロース市場上場。Watchy、TUNAGなど、人と組織の課題解決を実現するSaaSを展開。情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)及びプライバシーマークを取得。