近年、企業を狙ったサイバー攻撃が増加する中で、パスワード管理の重要性がますます高まっていますが、多くの企業が課題を抱えているのが実態です。パスワード管理ポイントや効果的な手法、ツール選びのコツなどを解説するので、参考にしてみましょう。
目次
企業のパスワード管理の重要性
パスワード管理は情報漏洩のリスクを軽減し、業務システム全体の安全性を維持する上で、欠かせない取り組みの一つです。
攻撃者は弱いパスワードの設定や、安易なパスワードの使い回しなどを狙っており、機密情報に不正にアクセスしようとします。特に、クラウドサービスの利用が増えた昨今は、一つのパスワードが侵害されただけで、複数のサービスに被害が及ぶ恐れがあります。
パスワード管理が不十分だと、認証情報の紛失や不正な利用が発生し、業務の停止や社会的信用の失墜につながりかねません。実際、情報漏洩インシデントの多くは、脆弱なパスワードや不適切な管理が原因とされています。
そこで、システム管理者は社員の認証情報を適切に保護し、パスワード管理を徹底することで、業務の安全性や信頼性を高める必要があります。コンプライアンス順守の観点からも、一貫した管理体制の構築は、経営課題として認識すべき重要事項です。
企業が直面するパスワード管理の課題
パスワード管理の重要性が広く認識されている一方で、その管理に課題を抱えている企業は、決して少なくありません。パスワードの使い回しや設定の問題、社員のセキュリティ意識の低さなど、多くの企業が抱える課題を確認しておきましょう。
パスワードの使い回しや弱い設定
社員によるパスワードの使い回しや単純な設定は、セキュリティリスクを高める大きな要因の一つです。
近年は複数のシステムやクラウドサービスに、日常的にログインする企業は多いでしょう。しかし、社員がパスワードに覚えやすい短い文字列を選んだり、同じパスワードを繰り返し使用してしまうケースは、決して珍しくありません。
こうした状況は攻撃者にとって好都合であり、辞書攻撃や総当たり攻撃の標的になる恐れがあります。さらに、複数のシステムやクラウドサービスを運用している環境では、一つの認証情報が侵害されただけで、複数のサービスに影響が及びかねません。
社員のセキュリティ意識の低さ
社員のセキュリティ意識の低さも、企業のパスワード管理において大きな課題の一つです。サイバー攻撃は自分とは無関係だと考えていたり、パスワード管理の重要性を十分に理解していなかったりする人は、決して少なくありません。
また、パスワード管理の必要性を理解していても、日々の業務で安全性より手軽さを優先してしまい、安易な行動につながる人もいます。
例えば、パスワードをメモ書きして残してしまったり、共有端末でログアウトを忘れたりなど、ちょっとした油断でリスクを招いてしまうケースは多くあります。
こうしたリスクを防ぐには、社員一人一人のセキュリティ意識を高め、適切な行動を取れるように継続的な教育や啓発が必要です。
IT管理者の負担増
パスワードの管理をはじめとしたセキュリティ関連の業務に、多くの時間を割かれているIT管理者は多くいます。特に事業規模が大きくなるほど、アカウントの発行や権限管理、パスワードリセットの依頼対応など、日常的な運用作業だけでも時間と手間がかかるでしょう。
さらにセキュリティ強化のための監査や、不正アクセスの調査まで求められると、管理者の負担は一層増していきます。人手不足の状況では、運用が属人化し、設定ミスや確認漏れを引き起こす原因になりかねません。
こうした状況を改善するためには、運用ルールの明確化に加えて、ツールの導入による自動化や効率化などの施策も必要です。管理者の負担を軽減することで、より本質的なセキュリティ対策に多くの時間を割けるようになるでしょう。
安全で効率的なパスワード管理の方法
上記のようなパスワード管理の課題を克服し、社内のセキュリティを強化するには、明確な方針と実効性のある施策が求められます。以下のように、技術的な対策と社員教育の徹底、適切なツールの活用を組み合わせることが重要です。
強固なパスワードポリシーの策定
まずは、文字数・構成・変更頻度・禁止事項など、きちんと明文化したパスワードポリシーを定めることが重要です。長さや複雑性の基準を明確にして、使い回しを禁止するだけではなく、変更のタイミングや管理方法まで、具体的に決めておきましょう。
ただし、ポリシーが現場の負担にならないように、実態に合わせたルールの設計が必要です。過度に複雑なルールにすると、メモ書きなどの安易な方法で、パスワードを管理する社員が出てくる可能性もあります。セキュリティと利便性のバランスを意識しましょう。
なお、パスワードの設定や更新に関しては、総務省が安全なパスワードの設定・管理のポイントを解説しています。こちらも参考にしてみましょう。パスワードの定期変更は不要で、複数のサービスで使い回さないことが重要としています。
安全なパスワードの設定・管理 | 国民のためのサイバーセキュリティサイト
定期監査と社員教育の徹底
パスワード管理の仕組みを整えるとともに、運用状況を定期的に監査し、問題点を把握することも重要です。監査では、パスワードの強度やルールが順守されているか確認するとともに、日常的な運用で生じているリスクも洗い出しましょう。
また、継続的な社員教育も必要です。セキュリティ教育は単発で終わらせるのではなく、最新の攻撃手法や事例を交えて、繰り返し実施することで効果を高めることが大事です。
新入社員の研修はもちろん、全社員を対象とした定期的な研修を実施し、最新の脅威情報を共有しましょう。
定期的な啓発活動も継続し、社員にパスワードに関するセキュリティを「自分ごと」と捉えてもらい、日常業務の中で適切に管理する習慣をつけてもらう必要があります。
パスワード管理ツールの活用
パスワード管理ツールの導入は、パスワードの安全性と、運用の効率性を同時に高めるのに有効です。複数のアカウント情報を暗号化して一元管理できるため、社員が複雑なパスワードを無理なく使える環境を整えられます。
さらに、自動入力やパスワード生成機能により、弱いパスワードの設定や使い回しを防げるのもメリットです。さらに、アクセス権限の集中管理なども可能なため、セキュリティの強化だけではなく、管理者や現場の負担の軽減にも寄与します。
パスワード管理サービスの選び方
パスワード管理サービスを選ぶ際は、会社の規模や運用方法に合っているかをまず確認しましょう。
管理機能としては、誰が使えるかを設定できる権限管理や、利用履歴を追跡できるログ追跡が充実しているか、また、社内のパソコンやスマホとクラウドサービスがスムーズに連携できるかもチェックが必要です。
セキュリティ面では、データを守る暗号化方式や、すべてを信用せず安全を確認するゼロトラストといった新しいセキュリティ対策に対応しているかも重要です。
さらに、導入時にベンダーによるサポートがあるかどうかは、サービスを社内に定着させるために欠かせません。これらの点を総合的に評価し、長く安心して使えるサービスを選びましょう。
企業としてパスワード管理の徹底を
パスワード管理は、単なるルールの整備にとどまらず、組織全体で取り組むべき重要なセキュリティ対策の一つです。弱いパスワードの利用や使い回しなどは、情報漏洩や不正アクセスのリスクを高めるため、徹底した対策が必要です。
パスワードポリシーの策定と継続的な社員教育を通じて、安全にパスワードを利用できる環境の整備が求められます。併せて、自社の環境に合ったパスワード管理ツールの導入も検討しましょう。
Watchy編集部
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