企業や組織において、情報セキュリティの基盤となるのがパスワード管理です。しかし、脆弱なパスワードや不適切な運用は、重大なセキュリティインシデントを招く原因になりかねません。パスワードポリシーの必要性や、設定のポイントを確認しておきましょう。

パスワードポリシーとは?

パスワードポリシーとは、社内で使用するパスワードに関する規則や、基準を定めたルールです。具体的には、パスワードの最小文字数や使用可能な文字種をはじめ、有効期限や再利用の制限・ロックアウトまでの試行回数などが挙げられます。

パスワードの作成から管理、変更に至るまでの一連の規定であり、単なる技術的な制約ではなく、組織のセキュリティ方針を反映した重要なガイドラインです。

適切なパスワードポリシーを策定することで、ユーザーが守るべき基準が明確になり、組織全体で統一されたセキュリティレベルを維持できます。また、万が一セキュリティインシデントが発生した際にも、パスワードポリシーは対応の指針の一つとなり、責任の所在を示す根拠にもなります。

パスワードポリシーの設定が必要な理由

パスワードポリシーの設定は、現代のサイバーセキュリティ対策において、必要不可欠な要素です。近年、サイバー攻撃の手法は高度化しており、辞書攻撃やブルートフォース攻撃・パスワードリスト攻撃など、パスワードを標的とした攻撃が増加しています。

統一されたポリシーがない場合、各ユーザーが独自の判断でパスワードを設定するため、セキュリティ上のリスクが高まります。例えば、推測されやすい単純なパスワードや、複数のサービスで同じパスワードを使い回すといった、危険な運用が横行しがちです。

そこで、組織全体で統一されたパスワードポリシーを設定することで、最低限のセキュリティ基準を担保し、人的ミスによるリスクを大幅に軽減できます。業界によっては法規制やコンプライアンス要件として、適切なパスワード管理が義務付けられているケースもあり、ポリシーの策定と実施は組織の信頼性を示す証しにもなります。

適切なパスワードポリシーを設定するためのポイント

強固なパスワードポリシーを定めるには、単に複雑なルールを設けるだけでは不十分です。安全性を高めつつ、業務効率やユーザーの使いやすさを損なわないように、注意しなければいけません。適切なパスワードポリシーを設定するためのポイントを、しっかりと押さえておきましょう。

パスワードの文字数・文字種を適切に設定する

パスワードの強度を高めるには、文字数と文字種のルール設定が重要です。一般的には8文字以上で、大文字・小文字・数字・記号を組み合わせることが推奨されます。

ただし、あまりに複雑すぎるルールを課してしまうとユーザーが覚えにくく、結果としてメモに書き留めるなど、他者が確認しやすい状況になりかねません。組織の利用環境やリスクレベルに応じて、適度な基準を設ける必要があります。

加えて、システム側でパスワードの再利用を防ぐ仕組みを導入するなど、ルールと運用を両立させる工夫も求められます。パスワード強度の自動チェック機能を活用することも、有効な対策の一つです。

多要素認証や定期変更と組み合わせる

パスワードポリシーを強化する上で有効なのが、多要素認証(MFA)の導入です。パスワードに加えて、ワンタイムパスコードや生体認証などを組み合わせることで、仮にパスワードが漏洩した場合でも、第三者による不正なログインを防げます。

また、パスワードの定期変更も一定の効果がありますが、過度な頻度で変更を求めると、ユーザーが単純なパターンに頼る可能性があるため注意が必要です。リスクベースで変更のタイミングを設計しましょう。例えば、情報漏洩が疑われる場合や、長期間ログインがなかったアカウントに限定して、変更を促すなどの柔軟な運用が求められます。

ユーザーの利便性と運用のしやすさを考慮する

パスワードポリシーは、セキュリティの強化だけではなく、ユーザーが無理なく守れることも重要です。過度に厳しいルールを設定すると、入力ミスや再設定の増加などを招き、結果的に運用負担を高めてしまいます。

そこで、シングルサインオン(SSO)の活用や、パスワードマネージャーの導入など、ユーザーの利便性を損なわずに、安全性を維持する仕組みが必要です。ポリシーの策定時には管理部門だけではなく、実際に利用する現場の意見も反映させましょう。

パスワードポリシーは定期的に見直しを

一度策定したパスワードポリシーは、社内環境や攻撃手法の進化などに合わせて、適宜見直す必要があります。定期的にポリシーや運用実態を点検し、現状のリスクに合わせて更新しましょう。ポリシーを見直す際には、社員への周知と教育を徹底し、スムーズに運用が定着するように工夫することも大切です。

ポリシーを単なるルールとして扱うのではなく、組織全体で守る「文化」として根付かせることで、安全な情報管理体制の維持・構築につながり、社員一人一人のセキュリティ意識も高まるでしょう。

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執筆者

Watchy編集部

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