テレワークの普及により、従来の労務管理では対応しきれない課題が多く生まれています。社員の労働時間の把握や適正な人事評価、新たな管理手法とツール活用が不可欠です。テレワーク時代に必要な労務管理のポイントと、効果的なツールの選び方を解説します。
目次
テレワーク時代に求められる労務管理とは
テレワークにおいても、企業は社員の労働条件を適正に管理しなければいけません。しかし従来のオフィス勤務を前提とした中心の管理手法では、テレワーク環境における社員の状況を正確に把握するのは、難しいのが実態です。
そこで、新しい働き方に対応するために、デジタルツールを活用した効率的な管理体制の構築が必要です。テレワークに対応した労務管理の体制を構築するために、まずは労務管理の目的や具体的な業務について、整理しておきましょう。
労務管理の目的
労務管理の主な目的は、社員の働き方を適切に把握し、労働基準法などの法令や社内規程を遵守することにあります法令や社内規程に従い適正に管理することです。労働時間の適正な把握や給与計算をはじめ、健康管理や職場環境の安全確保など、社員の権利を守らなければいけません。
特にしかし、テレワークの環境では、管理者と社員に物理的な距離があるため、従来の目視や直接的な確認手段に頼ることはできません。そのためそこで、社員の勤怠・業務の状況を客観的かつ正確に記録できる仕組みのを導入が不可欠でし、管理の透明性を高めることが重要です。加えて、社員が安心して働けるように勤務ルールを明文化し、全員が順守しやすい体制を整える必要があります。
労務管理で求められる業務
労務管理では、社員の労働時間や残業時間の記録をはじめ、休暇申請の承認や給与計算・人事評価・健康・安全管理など、多岐にわたる業務が求められます。
テレワークでは社員の勤務出社状況を直接確認できないため、クラウドシステムやデジタルツールを活用して、社員の勤務実態をできるだけ正確に把握しなければいけません。勤怠情報を一元的に管理することで、トラブルや不正の早期発見にもつながり、組織全体のコンプライアンスや信頼性の向上につながり、業務効率化にも寄与します。
テレワークの労務管理が難しい理由
テレワークの環境では、多くの企業が以下のような問題・課題を抱えています。特に労働時間の把握や評価、健康管理などで不透明さが増すため、適切な対策を講じる必要があります。
社員の労働時間を把握しにくい
テレワークでは社員がオフィスにいないため、勤務開始・終了時刻や休憩時間など、管理者が目視で確認ができません。タイムカードや打刻による管理だけでは、実際の業務状況や生産性を把握することが難しく、過重労働や労働時間の不正確さが生じやすくなります。
そこで、できる限り正確に労働時間の管理ができるツールや、勤怠に関するルールの整備が必要です。特に在宅勤務では、仕事と私生活の境界が曖昧になりがちで、社員自身が気付かないうちに長時間労働をしてしまうケースが少なくありません。
社員の過労やメンタルの不調を防ぐためにも、リアルタイムで労働時間を可視化する仕組みの構築が求められます。
公正・公平な人事評価が困難
テレワーク環境では、従来の勤務態度や職場での協調性を中心とした、評価基準の適用が困難になります。直接的な観察ができないため、社員の働きぶりや貢献度を客観的に評価することが難しく、管理者の主観に左右される可能性が高まります。
また、成果物の質や量だけでは測れない業務プロセスや創意工夫、チームワークなどの評価が複雑になりがちです。評価者と被評価者の間でコミュニケーションが不足しやすく、評価の透明性や納得感の確保が課題となります。公正で納得性の高い評価制度の構築には、評価基準の明確化に加えてと評価プロセスの見直しと、業務の実態を客観的に把握できる仕組みの導入がが必要です。
社員間のコミュニケーションが不足しがち
テレワークでは対面でのコミュニケーションの機会が大幅に減少し、情報共有や意思疎通に支障を来すケースが多発します。雑談や偶発的な会話から生まれるアイデアや相互理解の機会が失われ、チーム結束力の低下や社員の孤独感の増大なども問題になりがちです。
テキストベースのコミュニケーションでは、感情や微妙なニュアンスが伝わりにくく、誤解や認識のずれも生じやすくなります。特に、新入社員や中途採用者にとっては、企業文化の理解や人間関係の構築が困難になるでしょう。社員間の効果的なコミュニケーション環境の整備と、意図的な交流機会の創出が求められます。
労災の判断に迷うケースも
テレワーク環境では、労働災害の認定基準も曖昧になりがちです。事実、自宅での業務中に発生した事故やけがについて、業務起因性の判断が困難なケースが増加しています。在宅勤務中の転倒や腰痛、眼精疲労などが業務に関連するものか判断するのは困難でしょう。
また精神的な健康被害についても、職場環境と家庭環境の境界が曖昧で、業務起因性の立証は難しいのが実態です。労働基準監督署の判断基準も完璧ではないため、企業としては予防策の徹底と適切な記録管理が重要になります。
テレワークの労務管理のポイント
効果的なテレワークの労務管理を実現するには、従来の管理手法を根本的に見直し、新しい働き方に適応した管理体制を構築する必要があります。法令の順守はもちろん、社員の自律性を尊重し、成果重視の管理手法への転換が重要です。テレワークの労務管理のポイントを確認しておきましょう。
法令に準拠した正確な労働時間管理
テレワークの環境でも、企業の労働基準法に基づく労働時間管理の義務は変わりません。36協定の範囲内での労働時間管理や適切な休憩時間の確保、残業時間の上限規制の順守など、基本的な法令要求事項を満たす必要があります。
法令に準拠した正確な労働時間の管理には、デジタルツールを活用した客観的な勤怠管理の体制が欠かせません。詳しくは後述しますが、近年はテレワークに対応できる労務管理ツールも増えています。うまく活用しつつ、社員の労働時間の実態を可視化できるようにしましょう。
さらに、打刻やシステムログに依存するのではなく、業務の進捗や稼働状況を定期的に確認し、労働時間の過不足や偏りを早期に発見できる仕組みを整える必要があります。労働時間の記録は後の労働紛争防止の観点からも重要であり、社員と会社の双方が納得できる透明性の高い管理体制の構築が求められます。
就業ルールや管理方法の明確化
テレワーク特有の状況に対応した就業規則の整備と周知徹底も必要です。勤務場所の制限や勤務時間の報告ルールをはじめ、中抜けや休憩の取り方や業務連絡の手段や頻度、セキュリティの順守事項など、テレワークでの決まり事を明文化しておきましょう。
また勤怠管理の方法についても、日報の提出ルールや定期的な進捗確認の頻度、緊急時の連絡体制など、明確な手順を定めることが大事です。ルールを策定する際には現場の実態を反映し、実行可能性を重視した内容にしなければいけません。加えて、定期的なルールの見直しと改善により、社員の働きやすさと管理の両立を図ることも大切です。
人事評価基準の見直し
テレワークでは社員の目に見える成果だけではなく、業務の進め方やチーム内での協力姿勢なども、評価指標に取り入れることが大事です。従来の成果指標とともに、チームへの貢献度なども組み合わせたハイブリッドな人事評価の仕組みを導入し、社員の努力を適切に評価できるようにしましょう。
そのためには、目標設定の明確化や定量的な成果指標の再設定、定期的なフィードバック機会の創出などが必要です。同時に評価の透明性を高めるため、評価基準の明文化と社員への周知が求められます。管理者には新しい評価手法の研修を実施し、リモート環境での適切な評価スキルの習得を支援するとよいでしょう。
スムーズなコミュニケーションの仕組みづくり
テレワークでのコミュニケーション不足を解消するため、社員同士がスムーズに意思疎通を図れる環境づくりに注力しましょう。定期的なオンラインミーティングの開催や、チャットツールを活用したリアルタイムのコミュニケーション、バーチャルオフィス空間の活用など、多様な手段を組み合わせると効果的です。
また、日常の業務連絡だけではなく、雑談や相談ができるカジュアルなコミュニケーション機会の創出も求められます。オフィス環境以上に、テレワークでは業務に直接関係のないやりとりも安心感につながり、チーム全体の一体感や心理的安全性を高める基盤となります。
管理者はチャットを通じた積極的な声掛けと、定期的なフォローアップの実施を心掛けましょう。社員の孤立感を軽減する工夫が必要です。
テレワークの労務管理に役立つツール
テレワークの労務管理を効率化し、さまざまな課題の解決を図るには、適切なデジタルツールの活用が不可欠です。
以下のように、基本となる勤怠管理システムや、チャットツールなどのコミュニケーション関連ツールの導入は、必須といえるでしょう。さらにセキュリティ関連のツールや、ログ管理ツールなども導入を検討しましょう。それぞれのツールの特徴を紹介します。
勤怠管理システム
テレワークにおける勤怠管理システムは、従来のタイムカードに代わり、労働時間管理の要となるツールです。PCやスマートフォンから簡単に打刻できる機能や、GPS機能による勤務場所の確認、労働時間の自動集計・分析機能などを備えたシステムがおすすめです。
また、36協定に基づく残業時間の上限管理や、有給休暇の残日数管理などの法令対応機能も搭載されていると、管理者の業務負担を軽減できます。勤怠データを正確に蓄積しやすいシステムならば、将来的な労務トラブルも未然に防げるようになるでしょう。
さらに一部のシステムでは、PCの操作ログやWebカメラを活用した在席確認機能も利用でき、より客観的な労働時間の管理が可能です。導入時には機能性や拡張性・カスタマイズ性なども十分に検討し、現場で使いやすいシステムを慎重に選択する必要があります。
コミュニケーション関連ツール
テレワークで社員同士の意思疎通をしやすくするため、複数のコミュニケーションツールを組み合わせた環境の構築が必要です。
例えば、ビデオ会議システムでは画面共有や録画機能、チャット連携などの高度な機能を活用し、対面に近いコミュニケーションを実現するのが効果的です。加えて、チャットツールでは、プロジェクトやチーム単位でのグループ作成、ファイル共有機能、タスク管理連携などを活用して情報共有を効率化します。
社内SNSや掲示板機能を活用して、全社的な情報共有や文化醸成を図るのも効果的です。また、近年はバーチャルオフィスツールも多くリリースされており、アバターを使った仮想空間での交流や、偶発的な会話機会を創出するのもよいでしょう。
セキュリティ関連ツール
テレワーク環境では、業務で社外ネットワークを利用する機会が増えるため、セキュリティリスクが大幅に増加します。そこで、包括的なセキュリティ対策ツールの導入も欠かせません。
まずは、VPN接続により安全な通信環境を確保し、エンドポイントセキュリティソフトでデバイス保護を徹底しましょう。加えて、多要素認証システムの導入により、不正アクセスのリスクを軽減することも重要です。
さらに、日常業務で利用するクラウドストレージは、アクセス権限の細かな設定や、ファイルの暗号化機能を活用して情報漏洩を防止する必要があります。定期的なセキュリティ研修と併せて、技術的対策と人的対策の両面から、セキュリティ体制の強化を図りましょう。
IT資産管理・ログ管理ツール
テレワーク環境では、社員が使用するPCやモバイルデバイスの管理も困難になるため、IT資産管理ツールの活用も求められます。デバイスの位置情報や使用状況、インストールされたソフトウェアの管理、セキュリティパッチの適用状況などを一元的に管理できるようにしましょう。
またログ管理ツールにより、システムアクセスログや操作ログを収集分析し、セキュリティインシデントの早期発見や、労働時間管理の客観的データとして活用するのも効果的です。コンプライアンス監査や、内部不正の抑止にも役立ち、組織全体のセキュリティ水準を高められます。
テレワーク向けの労務管理ツールを選ぶ際のポイント
上記のような労務管理に役立つツールを導入する際には、自社の規模や業務特性に適合しているか、コストと運用負担のバランスが取れているかなど、きちんと確認する必要があります。労務管理ツールを選ぶ際、注目すべきポイントも押さえておきましょう。
自社の規模・業務特性との適合性
ツール選定の初めのステップは、自社の規模や業務特性に適したソリューションを見極めることです。社員数が少ない企業では、シンプルで導入コストの低いツールが適している一方で、大企業では高度な機能と拡張性が求められるでしょう。
また、業界特有の規制要件や業務プロセスに対応した機能の有無も、重要な判断材料です。製造業では現場作業との連携機能、サービス業では顧客対応機能、IT企業では開発プロセス連携機能など、業界特性を反映した機能要件を明確にしておきましょう。
必要な機能の網羅性
自社の規模や特性に合っているツールを絞り込んだら、労務管理に必要な機能が網羅されているかチェックしましょう。勤怠管理やシフト管理をはじめ、給与計算や人事評価の支援など、テレワークの業務要件を満たす機能の有無を確認します。
また、法令改正への対応力や、新たな機能の追加頻度なども評価のポイントです。単一のツールで全ての要件を満たすのが難しく、複数のツールの組み合わせが必要な場合、連携機能の充実度も重要な判断基準となります。
異なるシステム間でスムーズにデータをやりとりできれば、管理工数を削減し、業務の正確性や効率性を高められるでしょう。加えて、将来的に必要となる可能性の高い機能についても事前に確認し、拡張可能性を評価することが重要です。
コスト・運用負担のバランス
導入コストやライセンス料に加えて、運用に必要な工数や管理体制への影響も含め、利便性とコスト負担のバランスを考慮する必要があります。たとえ安価なツールでも、管理者の負担が増えたり、社員が使いにくかったりすると、運用は定着しないでしょう。逆に機能が多すぎる場合、運用コストが膨らむ可能性もあります。
また、長期的な利用を前提にした場合、保守費用やアップデート対応の有無、サポート体制にかかるコストも考慮すべきです。短期的な価格の安さにとらわれず、トータルでの投資対効果を見極めることが大切です。
操作性・使いやすさ
ツールの操作性や使いやすさは、導入後の定着率に影響する大切な要素です。直感的なインターフェースとシンプルな操作手順、充実したヘルプ機能など、社員がストレスなく利用できるツールか確認しましょう。特に、ITリテラシーの個人差が大きい組織では、誰でも容易に操作できるツールの選択が重要になります。
さらに、モバイル対応や複数デバイスでの同期機能の有無なども、テレワーク環境では使いやすさの指標の一つです。導入前に試用版やトライアル版を使える製品も多いので、事前に使い勝手を確認し、現場の社員からフィードバックを得るようにしましょう。
既存システムとの連携性
給与計算システムや人事評価システムなど、すでに導入済みの社内システムとスムーズに連携できるかも、重要な判断材料です。データの二重入力やフォーマット変換などの手間が発生すると、現場の負担が増えるだけではなく、管理上のミスも起こりがちです。
導入を検討中のツールがAPI連携やCSV出力など、柔軟なデータ連携機能を備えているかも、よく確認しておきましょう。システムによって連携の仕組みが異なるケースも多いため、自社のインフラ環境に適した形で統合できるか、見極める必要があります。
サポートの充実度
導入後の安定的な運用を担保するために、サービスベンダーのサポート体制も調べておきましょう。マニュアルやFAQが充実しているか確認するのはもちろん、導入初期のオンボーディング支援の有無や、チャットや電話でのサポート対応の充実度も評価する必要があります。
特にテレワークの環境では、社内のIT担当者だけで解決できない問題が発生する場合も、決して珍しくありません。ベンダーによるサポートが手厚いツールを選ぶことで、たとえシステムトラブルが発生しても、迅速に解決できるようになります。
テレワークの労務管理なら「Watchy」
テレワーク環境下の労務管理は、勤怠状況の把握や適正な人事評価だけではなく、コミュニケーションやセキュリティに関する内容も含む総合的な取り組みが必要です。多くの企業では、社員の勤怠状況の把握やコミュニケーションの不足など、さまざまな課題を抱えています。
これらを解消するには、労務管理に役立つツールを戦略的に導入することが大事です。自社に合ったツールを活用し、勤怠管理の効率化とともに、社員間のコミュニケーションの活性化を図りましょう。
労務管理に関わるツールの中でも、「Watchy」ならばテレワーク環境に適した勤怠管理を実現し、PCログやPC画面のスクリーンショットを自動で収集し、曖昧になりがちな勤務実態を客観的に可視化します。これにより、活用して正確な労働時間のを把握やできます。また、長時間労働の兆候をいち早く検出できるため、過重労働や労災リスクの軽減にもつながります。
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