情報資産とは、組織にとって価値のある情報やそれに関連するシステム、設備などの「ヒト、モノ、コト」を指します。情報資産は企業活動の根幹を支える重要な資源であり、競争力の源泉ですが、管理を怠れば情報漏洩や業務停止などのリスクにつながります。情報資産の種類や効果的な管理方法、最適な管理ツールの選び方まで、包括的に解説するので、参考にしてみましょう。

情報資産の管理はなぜ重要か

現代の企業活動はデータやシステムを基盤としており、以下のように管理すべき資産は、徐々に多様化・複雑化しています。さらに情報漏洩や不正アクセスの防止や、法令・規制への対応、業務継続性の確保などの点において、非常に重要な取り組みです。

管理すべき資産の多様化・複雑化

現代の企業は紙媒体の文書だけではなく、各種管理システム上で運用するデータやクラウド上の情報、SNSや外部サービスを通じて収集されるデータまで、多種多様な情報資産を取り扱っています。

これらは従業員の利用環境や業務プロセスに応じて複雑に絡み合い、全体像のを把握すること自体が難しくなっています。取り扱うべき資産が多様化・複雑化している状況において、管理を怠れば、不要な情報の肥大化やセキュリティリスクの増大などにつながります。

従って、まずは組織として「どの情報がどこに存在しどのように利用されているか」を、きちんと整理することが大切です。

情報漏洩・不正アクセスの防止

情報資産は企業の信頼を左右する重要な要素であり、一度の漏洩や不正アクセスが大きな損失を招きかねません。特に、個人情報や取引先データが流出すると、顧客や取引先の信用を失うだけではなく、法的な責任や賠償問題に発展する恐れもあります。

さらにサイバー攻撃は年々巧妙化しており、従来の防御策だけでは十分にカバーできないケースも珍しくない状況です。徹底したアクセス管理や暗号化などの多層的な対策を講じることで、万が一のリスクを最小限に抑える必要があります。

法令・規制への対応

情報資産の管理は、法令や業界ごとの規制に適切に対応する上でも、欠かせない取り組みです。個人情報保護法やGDPR(EU一般データ保護規則)などの規制は、情報の取り扱い方や保存期間、利用目的の明確化を求めています。これらを怠ると、行政からの指導や罰則に加えて、企業として社会的信用の失墜につながるリスクがあります。

特に、グローバルに事業を展開する企業では、複数の法域にまたがる規制に準拠する必要があるため、徹底した管理体制の強化が必要です。

業務継続性の確保とコストの削減

情報資産の体系的な管理は、災害や障害発生時の早期復旧を可能にし、業務の中断を最小限に抑える点でも必要な取り組みです。自然災害やシステム障害などが発生した際、情報資産が適切に管理されていなければ、業務の停滞や取引機会の損失を招きかねません。

バックアップや冗長化を含めた管理体制を構築しておくことで、問題が発生しても、業務を迅速に復旧できるように事前の仕組みづくりが必要です。管理の一環として、無駄な情報や重複したデータを整理しておけば、ストレージや管理コストの削減にもつながるでしょう。

情報資産の種類

情報資産は一部のデータや機器だけではなく、企業が保有する多様な知的・物理的資源を指します。部門や業務ごとに扱う情報は異なり、それぞれに適した管理手法を選択する必要があります。企業が管理すべき情報資産を、種類別に整理しておきましょう。

従業員や顧客の個人情報

従業員や顧客の個人情報は、最も機密性の高い情報資産の一つです。従業員の人事評価の内容や給与情報、健康診断結果などの人事情報は、プライバシー保護の観点から厳格な管理が求められます。さらに、顧客の氏名・住所・電話番号・購買履歴・信用情報などは、事業運営に不可欠である一方で、漏洩時の影響は甚大です。

これらの情報は適切な暗号化やアクセス制限、監査ログの記録により管理を徹底し、法的要件を満たす保管期間の設定や、適切な廃棄手順の確立なども求められます。

企業の取引情報や財務情報

企業の財務諸表や決算資料・予算計画・資金調達情報などの財務情報は、企業価値を直接的に表す重要な情報資産です。取引先との契約書や発注書・請求書・支払い記録などの取引情報も、事業活動の根幹を支えるもので、徹底した管理が必要です。

これらの情報は、株主や投資家への説明や税務申告・監査対応においても不可欠であり、正確性と完全性が強く求められています。またインサイダー取引防止の観点から、アクセス権限の厳格な管理と、情報開示のタイミングの制御なども重要です。

業務に関する知識・ノウハウ

企業が長年培ってきた業務ノウハウや作業の手順書、品質管理基準や研修資料などは、組織の知的資産として高い価値を持ちます。さらに、熟練従業員の暗黙知を形式知化したマニュアルや、過去のプロジェクトから得られた教訓、顧客対応のベストプラクティスなども、事業の承継に不可欠でしょう。

これらの情報は適切に整理・共有されることで、組織全体の生産性の向上に寄与しますが、競合他社に流出した場合は競争優位性の喪失につながりかねません。そのため、社内での適切な共有とともに、外部への流出を防ぐための管理が求められます。また情報の陳腐化を防ぐため、定期的な更新と見直しも必要です。

製品・特許情報などの知的財産

企業の研究開発の成果である、特許情報や商標・著作権・営業秘密などの知的財産も、企業の競争力の源泉となる重要な情報資産です。新製品の設計図面をはじめ、製造プロセス・ソフトウェアのソースコード・研究データなどは、企業の将来の収益性を左右する戦略的資産といえます。

これらの情報は、特許出願前の機密保持が特に重要であり、厳格なアクセス制御と秘密保持契約による保護が必要です。また知的財産権の取得・維持・活用戦略との連携も重要で、情報の管理と事業戦略を一体的に考えなければいけません。

社内の物理的な資産

各種IT機器やサーバー・ネットワーク機器などのハードウェア情報も、重要な情報資産です。これらの機器の仕様や設定情報・保守履歴・リース契約情報なども、システムの運用と資産管理において不可欠な要素です。

また、オフィスの鍵やセキュリティカード・金庫の暗証番号なども、物理的なセキュリティに関わる重要な情報といえるでしょう。特に近年はIoT機器の導入により、これらの機器から生成されるデータも、新たな情報資産と見なされています。物理的資産の情報は、減価償却や保険・廃棄時のデータ消去などの観点からも、適切な管理が必要です。

情報資産管理の方法

効果的な情報資産管理には、体系的なアプローチが必要です。単発的な対策ではなく、以下のように、継続的な管理プロセスとして確立することで、情報資産の価値を最大化するとともに、リスクの最小化を図ることが大切です。情報資産管理の各プロセスについて、それぞれ具体的に見ていきましょう。

資産の棚卸しと分類による可視化

情報資産管理の第一歩は、自社が保有する全ての情報資産を洗い出し、体系的に整理することです。

データの種類や保管場所・アクセス権限をはじめ、利用目的・重要度・法的要件などの属性を明確にして、統一的な基準で分類する必要があります。クラウドサービスや社内システム・個人デバイスなどを含めて、分散している情報を網羅的に把握しましょう。

さらに資産台帳を作成し、各情報資産の所在と状態を可視化するとともに、管理責任者を明確にしなければいけません。定期的な棚卸しにより、新たに発生した情報資産の追加や、不要になった情報の廃棄も適切に実施し、台帳を最新の状態に保つ必要があります。

アクセス権限の設定と認証の強化

管理すべき情報資産を整理して管理台帳により可視化できたら、誰がどの情報にアクセスできる状態にするか、厳密に決める必要があります。全従業員に同じ権限を与えるのではなく、役割や業務内容に応じて適切にアクセス権を制限することで、不正な利用や誤操作を防がなければいけません。

また、パスワードの複雑化や多要素認証の導入などにより、外部からの不正アクセスを防止することも重要です。アクセス権限の設定は、セキュリティの基本であると同時に、業務効率を維持・向上につながる取り組みです。

バックアップや暗号化による安全対策

情報資産の安全性を高めるには、データのバックアップと暗号化が欠かせません。バックアップを定期的にすることで、システム障害や災害発生時にも迅速に業務を復旧できます。さらに、保存データや通信の暗号化を徹底することで、外部からの情報の窃取や改ざんを防ぎましょう。

これらの安全対策は相応のコストや手間はかかりますが、被害発生時の損失に比べれば、はるかに小さい投資といえます。さらに、クラウドやオフサイト環境を利用した多重バックアップを組み合わせれば、さらなる堅牢性を確保できるので、万が一の状況でも柔軟に対応できるようになります。

情報の保管場所の選定・維持

情報の性質と重要度に応じて、最適な保管場所を選定する必要があります。機密性の高い情報は社内システムに、一般的な業務情報はパブリッククラウドに保管するなど、適材適所の配置を検討しましょう。

保管場所のセキュリティレベルや可用性に加えて、コストや法的要件への適合性なども総合的に評価し、継続的な監視と改善を実施します。データの移行や複製時には、適切な暗号化とアクセス制御を確保し、保管場所の変更履歴を記録することも大事です。

情報資産管理のポイント

効果的な情報資産管理のためには、技術的な対策だけではなく、組織的な取り組みと継続的な改善が求められます。以下のポイントを意識して、管理体制の維持・強化を図りましょう。

定期的なリスクの評価・監査

情報資産に対する脅威の度合いは常に変化するため、定期的なリスク評価により現状を把握し、対策の妥当性を検証することが大事です。脆弱性診断や侵入テスト・内部監査などを通じて、セキュリティギャップを特定し、優先順位をつけて必要な対策を実施しましょう。

適宜、第三者による外部監査も活用し、客観的な評価を取り入れることも大切です。リスク評価の結果は経営層に報告し、必要に応じて予算配分や組織体制の見直しを図りましょう。

セキュリティ教育の実施

セキュリティインシデントの多くは、人的な要因で引き起こされることが多いため、従業員への継続的な教育が必要です。新入社員研修や定期的なセキュリティ研修などを通じて、セキュリティ意識の向上を図りましょう。

職種や役職に応じてカスタマイズされた教育プログラムを提供し、実際の業務に即した内容にすることも大切です。最新の脅威の動向や、社内インシデントの事例などを教材に活用し、リアリティのある教育を実施しましょう。加えて、教育効果の測定と改善により、従業員のセキュリティリテラシーの向上を継続的に支援する必要があります。

基本的なセキュリティ対策の徹底

社内の情報資産を確実に守るには、高度な仕組みだけではなく、基本的な対策を徹底することが大切です。OSやソフトウェアの更新、ウイルス対策ソフトの導入、物理的な施錠管理など、日常的にできることは数多くあります。

さらに、物理的セキュリティも軽視せず、入退室管理や施錠管理、監視カメラの設置などを適切に実施しましょう。基本的な対策を確実に実践することで、重大なリスクの大部分を防げるようになります。これらの取り組みを、各従業員に「当たり前の習慣」として定着させることが大事です。

情報資産の管理ツールの導入

近年は、情報資産の管理をサポートするツールが数多くリリースされており、効率的かつ高度な管理を実現できます。資産の棚卸しや権限設定・ログ監視などを自動化できるため、担当者の負担を軽減しつつ、管理の精度を高められます。

管理ツールの導入に当たっては、自社の課題や目的に合致しているか、慎重に見極めることが大事です。ベンダーによる導入後のサポート体制や、アップデートの提供状況なども確認しておきましょう。

情報資産管理ツールの選ぶ際のポイント

情報資産管理ツールの選定は、企業の情報セキュリティ戦略の成否を左右する重要な決定事項です。以下のポイントを確認し、多様な製品の中から、自社の要件に適合するものを慎重に選びましょう。機能性だけではなく、カスタマイズや将来的な拡張の可能性も含めた多角的な評価が必要です。

自社の規模・情報管理体制に合っているか

情報資産管理ツールを選定する際には、まず自社の規模や管理体制との適合性を考慮する必要があります。大企業と中小企業では、必要とする機能や導入にかけられるコストが異なります。

例えば、大規模組織では複雑なアクセス管理や監査機能が求められる一方で、中小企業では導入や運用が容易で、機能の分かりやすさに重点を置く方が現実的です。運用負担や導入コストを考慮して、無理のない範囲で高い効果を発揮できるものを選びましょう。 

さらに既存システムとの親和性や、社内リソースで対応できるかも、十分に検討する必要があります。

必要な機能が網羅されているか

必要な情報資産を問題なく管理できる機能が実装されているか、詳しく確認しましょう。資産台帳の管理機能やアクセス制御機能、監査ログやレポート機能などに加えて、業界固有の要件や法的要件への対応機能も評価します。

さらに、ワークフロー機能や承認プロセスの自動化、アラート機能などにより、組織の業務プロセスに適合した運用が可能かも重要なポイントです。将来的に必要となる可能性のある機能についても、アップグレードや追加モジュールでの対応可能性を確認し、長期的な視点で機能の充足性を評価します。

システムの操作性・拡張性は問題ないか

ツールの操作性・拡張性も重要な要素です。直感的に操作できるインターフェースであれば、管理担当者の習熟にかかる時間を短縮できます。管理者向けの設定画面やレポート機能も、ITの専門知識がなくても操作できるレベルならば、スムーズに運用の定着を図れるでしょう。

また、事業の成長に伴う利用者数の増加や管理対象データの拡大、新たな機能要件への対応など、将来的な拡張性も重要な評価項目です。クラウド型サービスの場合は、性能のスケーラビリティと追加費用の体系を確認し、急激な利用量の増加にも対応できるか評価しましょう。

中小企業の情報資産管理なら「Watchy」

中小企業における情報資産管理は、限られたリソースの中で、最大限の効果を発揮させる必要があります。複雑で高コストなソリューションではなく、実用性と費用対効果の高いツールを選ぶことが重要です。

数ある情報資産管理ツールの中でも、必要な機能を選んで導入できる「Watchy」は、主に中小企業向けに開発されています。PCの構成情報だけでなく、インストールされているソフトウェアや利用状況も自動で収集・可視化できるため、情報資産の棚卸し作業の大幅な効率化が可能です。

さらに、権限管理や利用ログの記録、ソフトウェア更新状況の監視なども一元管理できるため、セキュリティリスクの把握やコンプライアンス対応も容易になります。導入後はクラウドを通じて常に最新の状態を保てるため、少ない負担で安全かつ効率的な管理を実現できます。この機会にぜひ、導入をご検討ください。

Watchy(ウォッチー) - クラウド型IT資産管理・ログ管理ツール

低コスト&簡単運用 必要な機能だけを導入!だから低コストに始められる 低コスト&簡単運用 必要な機能だけを導入!だから低コストに始められる
編集部のイメージ画像
執筆者

Watchy編集部

従業員が安心して働ける環境を提供するための、IT資産管理、情報漏洩対策、労務管理に関するコンテンツを発信しています。

Watchyは、株式会社スタメンが運営するクラウドサービスです。企業のIT情報統制の課題やバックオフィスの課題を、情報システム担当者が手薄な状況でも、Watchyが解決。設定・運用の手間を最小化しながら、押さえるべきポイントを確実に押さえた企業統制の実現を支援します。

【株式会社スタメンについて】 東京証券取引所グロース市場上場。Watchy、TUNAGなど、人と組織の課題解決を実現するSaaSを展開。情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)及びプライバシーマークを取得。