働き方改革の推進などで、企業の勤怠管理はより重要な課題となっており、近年はPCログを利用したシステマチックな管理が注目されています。勤怠管理におけるPCログの重要性とともに、活用のポイントや注意点を解説するので、ぜひ参考にしてください。
目次
中小企業が抱える勤怠管理の課題
中小企業の勤怠管理では、人員や体制の制約から、効率的な仕組みを整備できないケースが多く見られます。その結果、属人的な対応や法改正への遅れが発生している組織は、決して少なくありません。まずは勤怠管理において、多くの中小企業が抱える課題を整理しておきましょう。
業務の属人化による非効率
勤怠管理を一部の従業員に依存しがちな企業では、担当者が不在になるだけで、当該業務が滞ってしまうケースが多くあります。紙やExcelに入力された勤怠データを個別に取りまとめる作業は、属人的になりやすく、担当者しか正確な把握ができない状況に陥りがちです。
特に、中小企業では総務や労務管理を少人数で担っていることが多く、一人に業務が集中しやすいため、業務効率の低下や引き継ぎの難しさが問題となります。
手作業によるヒューマンエラー
いまだ中小企業に多い手作業による勤怠管理は、入力漏れや打ち間違いといったヒューマンエラーを避けられません。例えば、出退勤時刻を手書きで集計してExcelへ転記する場合、数字を一つ間違えるだけでも、労働時間や残業代の算出に大きな影響を与えてしまいます。
特に、残業時間の集計ミスは労働基準法違反のリスクを高め、企業の法的責任問題に発展しかねません。さらに修正作業に多くの時間を要するため、人事担当者の業務負荷が増大し、他の重要な業務に支障を来すこともあります。
法改正や労務リスクへの対応不足
働き方改革関連法の施行などにより、労働時間の適切な把握・管理は企業の義務となっています。しかし中小企業の場合、最新の法改正を踏まえた勤怠管理の仕組みを、まだ導入できていないケースも見受けられます。
その結果、時間外労働の上限規制に違反したり、過重労働による労務トラブルが発生したりするリスクを抱えている企業が多いのが実態です。適切な勤怠管理を怠ると、法的なリスクだけではなく、従業員の健康やモチベーションにも悪影響を及ぼしてしまいます。
勤怠管理におけるPCログの重要性
現代の働き方において、PCは業務に欠かせないツールであるため、その使用状況を記録するログは、実際の労働実態を客観的に把握するための重要な指標です。
PCログを収集・管理すれば、従来の出退勤記録だけでは見えない、従業員の実際の作業時間や業務内容を詳細に把握できます。その結果、より正確で透明性の高い勤怠管理の実現につながるでしょう。一人一人の働き方も適切にサポートできるため、生産性の向上と労働環境の改善にも寄与します。
勤怠管理に利用できるPCログの種類
勤怠管理に利用できるPCログは、大きく分けて次の種類に分類できます。
- 操作ログ:PCの起動・シャットダウンやアプリケーションの利用履歴、マウスやキーボードの操作状況などを記録したログ。従業員が実際に業務に従事していた時間を把握でき、勤怠データの客観的な裏付けとして活用できる。
- 通信ログ:インターネットや、社内ネットワークへのアクセス履歴を記録したログ。業務時間中のWeb利用状況や、不適切なサイトへのアクセスを可視化できるため、セキュリティ対策と勤怠管理の両面で有効。
- 認証ログ:OSや業務システムへのログイン・ログオフの記録を残したログ。誰がいつPCを使用したかを正確に確認でき、出退勤の証跡として機能する。
これら3種類を組み合わせて活用することで、単なる出退勤の記録にとどまらず、労働時間や業務状況をより正確に把握できます。
勤怠管理でPCログを取得するメリット
PCログを活用することで、従来の勤怠管理では把握が困難だった労働実態の把握が可能です。正確性の高いデータを基に、従業員の働き方を適切に管理できるため、コンプライアンスや業務効率の改善につなげられます。勤怠管理において、PCログを取得するメリットを確認しておきましょう。
虚偽の申告を防止できる
PCログの導入により、従業員による労働時間の虚偽申告を効果的に防止できます。従来のタイムカード打刻や従業員の自己申告による管理では、実際の労働実態と申告内容に乖離が生じる可能性がありましたが、PCログは客観的な証拠として機能させられます。
実際にPCで作業していた時間と申告された労働時間を照合することで、不正な残業申請や早退の隠蔽などの発見につながるでしょう。同僚による代理打刻などの不正行為も防止できるため、労働時間管理の信頼性も向上します。
サービス残業の防止につながる
PCログの活用は、企業にとって深刻な問題であるサービス残業の発見・防止にも、大きく貢献します。従業員が定時後もPCを使用して業務を継続している場合、ログによってその事実を客観的に把握できます。
また定期的なログの確認により、特定の従業員に業務が集中していないか、適切な業務配分がされているか確認も可能です。これにより管理者が気付かないうちに、労働基準法に違反してしまうリスクを回避できます。
不審なサイトへのアクセスを防げる
PCログによるWebアクセス監視機能は、業務時間中の不適切なインターネットの利用を抑制する効果があります。SNSやショッピングサイト、ゲームサイトなどへの私的なアクセスを記録することで、従業員の業務への集中度の向上に寄与するでしょう。
また、セキュリティリスクの高いサイトへのアクセスを発見し、企業の情報資産を保護することも可能です。加えて、業務に関連するサイトと私的なサイトのアクセス比率を分析することで、実際の業務効率や集中度を客観的に評価できます。これらの情報は従業員の指導や研修計画の策定にも活用でき、組織全体の生産性の向上につながります。
勤怠管理におけるPCログ活用のポイント
PCログを効果的に勤怠管理に活用するには、以下のポイントを押さえることが大事です。単にログを収集するだけではなく、適切な分析と運用方法を確立することで、効果の最大化を目指しましょう。組織の規模や、業務の特性に応じたアプローチが求められます。
労働時間の正確な把握
PCログを活用して労働時間を把握する際には、単純な起動・終了の時間だけではなく、実際の作業活動を示すアクティビティログを併用しましょう。キーボード入力やマウス操作などの履歴を分析することで、PCが起動していても実際には作業していない時間を除外し、正確な労働時間を算出できます。
また複数のアプリケーションやシステムを使用する業務では、それぞれの使用時間を統合的に分析し、業務の性質に応じて、稼働状況を適切に評価することが大事です。単に利用時間の長さだけではなく、業務に直結する活動かを見極めることが、実態に即した勤怠管理のポイントです。
運用ルールの周知・徹底
PCログを用いた勤怠管理を成功させるには、明確な運用ルールの策定と、従業員への周知の徹底が必要です。どのようなログが取得され、どのような目的で使用されるかを説明し、理解と協力を得られるようにしましょう。
また、プライバシー保護の観点から、収集する情報の範囲と保管期間、アクセス権限などを明確に定義し、従業員に安心感を与えることも大切です。
改ざん防止・労働状況の透明性の確保
PCログを活用する際には、データの改ざんを防ぐため、強固なセキュリティ体制の構築も求められます。ログデータは法的な証拠としても機能するため、改ざん不可能な形式での保存と、詳細なアクセス履歴の記録が必要です。
タイムスタンプの信頼性の確保や、複数のバックアップ体制の構築により、データの完全性を保証できるようにしましょう。従業員が自分の労働状況を確認できるダッシュボード機能なども提供し、透明性を確保することで、信頼関係の構築につながります。
さらに、管理者による恣意的な解釈を防ぐため、ログデータの分析基準や評価方法も明文化し、客観的で公正な運用を心掛けましょう。
従業員とのコミュニケーション
PCログの取得・活用は管理者だけの負担にせず、上記のように、従業員の理解と協力を得て進める必要があります。データをどう扱うかをきちんと共有し、双方向のコミュニケーションを通じて、積極的に活用する文化を根付かせることも大切です。
例えば、勤怠データを一定の条件の下で、従業員本人が閲覧できる仕組みを導入すれば、自らの労働時間をセルフチェックできるようになります。これにより、従業員は「自分の働き方を守るデータ」としてログを活用でき、管理側と働き手の双方にメリットが感じられるようになるでしょう。
またログデータから発見された問題については、個人の責任追及に終始するのではなく、システムや業務プロセスの改善機会として捉え、組織全体の成長につなげる視点も必要です。
勤怠管理でPCログを運用する際の注意点
本格的にPCログの収集・運用を始める際には、以下の点にも注意しなければいけません。事前にリスクアセスメントを行い、不必要な情報や過剰な監視が含まれていないか確認することが大切です。留意すべきポイントを見ていきましょう。
PCログのみに頼らない
PCログは、勤怠管理に非常に有用なデータではあるものの、万能ではありません。従業員の外出や直行直帰勤務のように、PCを使用しない労働実態まで把握できるわけではないため、他の勤怠管理手段と併用しつつ、全体像をつかむ必要があります。
特に、現場での仕事が多い職種では、カード打刻やモバイル打刻などと組み合わせることで精度を高め、労務上の公平性を担保することが大切です。
さらに、実際の勤務状況を複数のデータから突き合わせることで、誤った記録や不正申告のリスクを減らせるため、管理者・従業員の双方にとって納得感のある勤怠管理が可能になるでしょう。
従業員のプライバシーに配慮する
PCログの収集は、従業員のプライバシーに深く関わる問題であるため、適切な配慮が求められます。必要以上に詳細な情報を収集することは避け、勤怠管理の目的に限定した最小限のデータ収集にとどめましょう。
また、収集したログデータの利用目的を明確に定義し、目的外使用を厳格に禁止する管理体制を構築することが大事です。従業員に対しては、どのような情報が収集され、どのように使用されるかを事前に説明し、きちんと収集の同意を得るようにしましょう。
勤怠管理システムと併用する
PCログを最大限に活用するには、専用の勤怠管理システムとの併用・連携が効果的です。単独でログを収集・分析するよりも、勤怠管理システムの機能と組み合わせることで、より精度の高い労働時間管理を実現できます。
例えば、出退勤記録や有給休暇の取得状況、残業申請などの情報とPCログを統合し、矛盾点の発見や総合的な分析が可能です。給与計算システムとも自動連携すれば、より正確で効率的な給与処理が実現できます。
さらに、労働基準法への準拠チェック機能や、アラート機能などを活用することで、法的リスクの早期発見と予防も可能になるでしょう。導入する勤怠管理システムを選ぶ際には、既存システムとの互換性や拡張性も考慮しつつ、将来的な機能追加にも対応できるソリューションを選択することが重要です。
PCログの活用なら「Watchy」がおすすめ
PCログを活用した勤怠管理は、現代の働き方に適応した効果的な労働時間の管理手法として、近年とりわけ注目されています。従来の方法では把握が難しかった従業員の労働時間を客観的に記録し、より正確で透明性の高い勤怠管理を実現できます。
ログを活用した勤怠管理をスムーズに始めるには、上記のポイントを意識するとともに、専用のログ管理ツールの導入がおすすめです。「Watchy」はPCの操作ログを自動で収集し、正確な労働時間の把握を強力にサポートします。
管理画面で直感的にデータを確認できるため、ITに不慣れな担当者でも簡単に扱えるのに加えて、必要な機能のみを選択して運用できます。特に勤怠管理の効率化と、透明性の確保を同時に実現したい中小企業におすすめできるサービスなので、この機会にぜひ導入をご検討ください。
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Watchy編集部
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