シャドーITとは、IT部門の許可や管理下にない機器やソフトウェアを、社員が勝手に業務で利用することです。近年のデジタル化の進展により、企業にとって無視できない深刻な問題となっています。シャドーITの原因や、取るべき対策について知っておきましょう。
シャドーITとは何か?
シャドーITとは、企業が公式に認可していないシステムやアプリ・端末などが、業務で利用される状況を指します。例えば、社員が利便性を求めて個人のクラウドサービスや、無料のアプリを使ってしまうケースが該当します。
業務の効率化につながる場合はあるものの、セキュリティやコンプライアンスの観点において、大きなリスクを孕んでいます。特に、近年はテレワークやクラウドサービスなどの普及により、企業は社員のITツールの利用を制御しにくい状況になっているため、十分注意が必要です。
シャドーITが企業にもたらすリスク
シャドーITは表面化しにくい潜在的な脅威として、組織全体に深刻な影響を与える可能性があります。
特に、情報セキュリティの観点からすれば、管理されていないIT資産は企業の防御システムの盲点となりやすく、サイバー攻撃の標的となるリスクが高いといえます。シャドーITが企業にもたらすリスクについて、具体的に見ていきましょう。
情報漏洩やセキュリティ事故の誘発
社員が私的に利用するツールは、必ずしも企業のセキュリティ基準を満たしているとは限りません。例えば、無料のファイル共有サービスに業務資料をアップロードすると、十分な暗号化やアクセス制限がされず、第三者にデータが流出するリスクが生じます。
また、認証の甘いアプリを使えば不正アクセスを招き、重要な顧客情報が外部に漏れてしまうケースもあるでしょう。こうした事故は一度発生すれば取り返しがつかず、企業に多大な損害を与えかねません。
被害の拡大による社会的責任
シャドーITが原因で情報漏洩が発生した場合、その被害は企業内部にとどまらず、取引先や顧客にも及ぶ可能性があります。顧客データの流出は直接的な金銭被害だけでなく、社会的な信頼の失墜という形で、企業に長期的なダメージを与えてしまうでしょう。
特に、近年は個人情報保護法をはじめとした法規制も厳しくなっており、企業が管理責任を問われるケースは珍しくありません。事故後の対応コストや訴訟リスクなどを考えると、シャドーITの存在の軽視は危険であり、企業としてしっかりと対策を講じる必要があります。
シャドーITの具体例
現代の職場では、社員が意識的・無意識的に、さまざまなツールやクラウドサービスを利用しており、シャドーITに該当することが珍しくありません。シャドーITの代表的な例を見ていきましょう。
フリーメールやメッセージアプリの利用
社員が会社のメールシステムを使わず、より利便性の高いフリーメールやメッセージアプリでやりとりしていることは、決して少なくないのが実態です。これらは暗号化や監査機能が十分ではなく、外部からの不正アクセスに対して脆弱なケースが多くあります。
任意で社員が利用しているフリーメールなどは、管理者が内容を把握できないため、機密情報の流出を未然に防ぐのは困難です。また、一部の社員がLINE・Slackなどのアプリを勝手に導入し、チーム内での情報共有に利用する例も増えています。
個人所有のスマホやPCからの業務アクセス
在宅勤務の拡大に伴い、社員が個人のデバイスから会社システムにアクセスする事例も目立ちます。セキュリティ対策が十分でない端末を経由すれば、ウイルス感染や不正アクセスの踏み台にされる恐れがあります。
また、社員が家族と共有するPCなどでは、業務情報が第三者の目に触れるリスクもあるでしょう。端末の紛失や盗難といった物理的リスクもあり、企業の重要な情報資産が外部に流出する可能性は否定できません。
SaaSの自己導入や無料ツールの使用
従業員が業務効率化のために、IT部門に無断でクラウドサービスや無料ツールを導入するケースがあります。タスク管理アプリやオンラインストレージなどは便利ですが、利用規約やセキュリティ要件が企業の基準を満たさない場合があるでしょう。
このようなシャドーITは、企業の重要情報が管理者の知らない間に国外サーバーに保存されるなど、情報の所在や管理体制が不透明になるリスクを伴います。その結果、外部からの不正アクセスやデータの不適切な使用を招き、企業は深刻なセキュリティリスクにさらされる可能性があります。
シャドーITの主な原因
社内でシャドーITが発生する背景には、技術的な要因から組織的な課題まで、複数の根本的な原因が複雑に絡み合っているケースがほとんどです。これらの原因を正しく理解することが、効果的な対策を講じるための第一歩です。シャドーITの主な原因について、具体的に見ていきましょう。
業務で使うツールの不便さ・複雑さ
企業が公式に導入したシステムが使いにくかったり、操作が複雑すぎたりすると、社員はより簡便なツールやサービスを使いたくなります。特に、日常業務で頻繁に利用するメールやファイル共有システムが不便だと、管理者の承認を得ずに代替ツールを導入する社員も出てくるでしょう。
さらに利用マニュアルが不十分であったり、サポート体制が整っていなかったりする場合も、現場での不満が高まり、自己判断で外部サービスを導入する可能性があります。
IT部門の対応遅れや制限の強さ
IT部門が社員のニーズに迅速に対応できていない場合も、シャドーITが発生する原因になります。
新しいツールの導入申請から、承認・展開まで数カ月を要したり、使用可能なソフトウェアを極端に制限したりする企業では、社員が業務のために独自の解決策を考えざるを得なくなります。結果として、未承認のツール・サービスを利用する人が増えるでしょう。
実際、承認プロセスが複雑で時間がかかることを嫌った社員が、IT部門の承認を得ずに、個人判断でツールを使い始めるケースは多くあります。
情報リテラシーやリスク意識の不足
社員の情報セキュリティに対する理解不足や危機意識の欠如も、シャドーITの問題を深刻化させる原因です。多くの社員は、個人で使っているアプリやクラウドサービスを、業務に流用する危険性を十分に理解していないのが実態です。
「便利だから」「みんな使っているから」という安易な理由でツールを選択し、業務データを無防備な環境に置くリスクを軽視しています。
さらに、セキュリティ上の脅威や対処法について、実践的な知識が身に付いていないケースも少なくありません。組織として十分なセキュリティ教育を施し、リスクに対する意識付けをする必要があります。
シャドーITに対して企業がすべき対策
企業としてシャドーITに対処するには、単純なツールの利用禁止や制限ではなく、社員のニーズを理解した上で、包括的なアプローチをする必要があります。
以下のポイントを意識しつつ、技術的な対策と組織的な取り組みを両立させることで、セキュリティリスクを最小化しながら、業務効率の向上も図りましょう。
ITの利用状況を可視化する
まずは、社内でどのようなIT機器やソフトウェアが実際に使用されているか、正確に把握することが重要です。社員の利用状況を「見える化」すれば、シャドーITが発生している領域や頻度を特定でき、具体的な対策につなげられます。
社員のITの利用状況を可視化する方法はさまざまですが、ネットワーク監視やエンドポイント管理ツールを活用するのがおすすめです。
例えば、「Watchy」のソフトウェア資産管理機能ならば、社内ネットワーク上にあるデバイスやアプリを、リアルタイムで監視できます。社員がどのようなクラウドサービスにアクセスしているか、どのソフトウェアをインストールしているかなど、詳細に把握できるので、ぜひ導入を検討してみましょう。
ソフトウェア資産管理の機能紹介 - Watchy(ウォッチー)
ルールの策定と従業員教育
業務でのツールやクラウドサービスの利用に関して、組織として明確なルールを設けることも大切です。承認を経ないツールの利用を明確に禁止するだけではなく、利用可能なサービスを具体的に示すことで、社員が判断に迷う余地をなくす必要があります。
さらに社員教育を通じて、シャドーITの危険性に関して浸透させれば、現場でのセキュリティリスクに対する意識も高まります。定期的な研修や事例の紹介などを通じて、ルールを単なる規制ではなく、企業の信頼を守る仕組みであることを理解してもらいましょう。
ITの利用環境を整備する
上記のように、社員が便利な外部ツールに頼る原因の一つに、社内システムの使いにくさがあります。利便性に欠けるシステムがある限り、社員は別の手段を探す可能性があります。公式に認可したツールを使いやすくするとともに、新しいサービスも柔軟に取り入れましょう。
組織としてツールやシステムを導入する際には、ユーザー目線での使いやすさを重視し、必要に応じて改善やカスタマイズを繰り返すことが大事です。利用頻度の高い未承認ツールがある場合には、きちんとセキュリティの評価をした上で、正式な導入も検討してみましょう。
まずは実態の把握から始めよう
シャドーITは利便性の裏に潜むリスクであり、企業にとって見逃せないセキュリティ上の脅威です。放置すれば、情報漏洩や社会的信用の失墜といった深刻な問題を招きかねません。まずは社員のITの利用実態を把握し、ルールの策定や利用環境の改善につなげましょう。
社内のITツールを安全に利用するには、アクセスログや操作ログを詳細に記録・監視することも重要です。継続的にログを収集・分析することで、通常とは異なるアクセスや不審なツールの利用を早期に発見できます。
数あるログ管理ツールの中でも、「Watchy」ならば社員のITの利用状況を可視化し、ログを基にしたリスクの分析が可能です。シャドーITの発生を早期に把握し、適切な対策を打ち出すのにも役立ちます。この機会にぜひ導入をご検討ください。
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Watchy編集部
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【株式会社スタメンについて】 東京証券取引所グロース市場上場。Watchy、TUNAGなど、人と組織の課題解決を実現するSaaSを展開。情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)及びプライバシーマークを取得。

