会計事務所や税理士事務所におけるテレワークは、税理士法などの制約により、慎重なアプローチが必要です。しかし、適切な管理体制とセキュリティ対策により、効率的な運用が実現可能です。会計事務所が直面する課題と、必要な対策を見ていきましょう。

税理士・会計事務所のテレワークの現状

近年、多くの業界でテレワークが普及してきましたが、税理士や会計事務所においては導入のスピードが遅れている傾向があります。その理由として、クライアントから受領する書類が紙媒体であることや、税理士法による業務遂行の制限などが挙げられます。

さらに、他の業界以上にセキュリティ対策を徹底する必要もあり、一般的な企業に比べて、導入に慎重な事務所は少なくありません。ただし、ここ数年でクラウド会計ソフトの普及や電子帳簿保存法の改正に伴い、徐々にオンラインでの業務対応も進みつつあります。

従来はオフィスでしかできなかった業務の一部が、在宅でも可能になり始めており、会計事務所の中にもテレワークを試験的に導入し、働き方の多様化を模索する動きが広がりつつあります。

税理士・会計事務所が抱えがちなテレワークの課題

税理士・会計事務所のテレワークの導入には、税理士法による業務上の制限や紙ベースの証憑書類の取り扱い、機密情報のセキュリティ確保など、業界特有の複雑な課題があります。それぞれ見ていきましょう。

税理士法によるリモート勤務の制限

会計業務は税理士法に基づいて行われるため、テレワークに制限がかかる場面があります。特に、税理士本人が関与しなければならない業務や、署名押印が必要な手続きでは、物理的にオフィスへの出社が必要です。

そのため、完全に業務をリモート化するのは難しく、出社と在宅を組み合わせたハイブリッド型勤務が現実的な選択肢となっています。

紙の証憑の取り扱い

会計事務所の業務には、領収書や請求書など紙の証憑が数多く関わります。これらを受け取るために出社を余儀なくされるケースも多く、テレワーク推進の大きな障壁となっています。

電子帳簿保存法の改正により、スキャンデータや電子データでの保存が広まりつつあるものの、依然として紙で受領する顧客も少なくありません。

こうした状況では、事務所に証憑が集中し、在宅勤務を行う職員が資料にアクセスできないという非効率が生じます。テレワークの実効性を高めるためには、証憑の電子化を顧客にも促し、クラウド上で共有できる仕組みを整えることが求められます。

情報共有やセキュリティに関する問題

会計データは極めてセンシティブであるため、情報共有の仕組みを誤るとセキュリティリスクに直結します。メールでのやりとりは誤送信の危険があり、クラウドストレージもアクセス権限の管理を徹底しなければいけません。

また、オフィス内であれば口頭で済む相談も、リモート環境ではチャットやビデオ会議に置き換える必要が生じ、情報伝達に齟齬や時間的なロスが生まれることもあるでしょう。

税理士・会計事務所のテレワーク導入のポイント

会計事務所でテレワークを成功させるには、正確な勤怠管理や証憑書類の電子化推進、効果的なコミュニケーション手法の確立が不可欠です。これらを体系的に整備することで、業務効率と精度の両立を図りましょう。

正確に勤怠を把握するための仕組みづくり

テレワークを導入する際にまず課題となるのが、従業員の勤怠管理です。在宅勤務では労働時間が不透明になりやすく、過重労働や勤務態度の不安が生じやすくなります。

そのためログイン・ログオフの記録や、業務システムの稼働状況を自動的に取得する仕組みの整備が必要です。単なる時間管理だけではなく、成果物の進捗や対応状況も併せて確認できるようにすることで、在宅でもオフィス同様に適正な労務管理が可能になります。

証憑の電子化による会計業務の効率化

税理士・会計事務所のテレワークにおいて、紙の証憑が大きな課題となるため、電子化の推進は欠かせません。スキャナ保存制度や電子帳簿保存法の要件を満たせば、多くの領収書や請求書のデータ処理が可能になります。

これにより出社の必要性が減少し、リモートでもデータの入力・確認ができるようになります。ただし、電子帳簿保存法の要件を満たすために、スキャン時の解像度や保存形式、タイムスタンプの付与など、技術面でクリアすべき点は多くあるので、段階的に導入・改善していきましょう。

情報共有を円滑にするコミュニケーションの工夫

テレワーク環境では対面でのコミュニケーション機会が減少するため、情報共有の仕組みを意識的に構築する必要があります。
定期的にオンライン会議を実施すれば、チーム全体の情報共有と個別案件の進捗確認が可能です。
また、チャットツールやプロジェクト管理システムを活用することで、リアルタイムでの質問や相談にも対応できます。重要な決定事項や変更点については、文書化して全員が確認できる共有フォルダに保存することで、情報の見落としを防げます。

テレワークに求められるセキュリティ対策

会計事務所では顧客の機密情報を扱うため、テレワーク環境でも厳格なセキュリティ対策が必要です。包括的なセキュリティポリシーの策定から技術的対策・従業員教育まで、多層防御による安全な環境構築が求められます。具体的な対策を見ていきましょう。

セキュリティポリシーの策定・周知

テレワーク環境におけるセキュリティ確保のためには、明確なポリシーの策定と全従業員への周知徹底が不可欠です。テレワーク専用のセキュリティガイドラインを作成し、使用可能なデバイスの種類やアクセス可能なシステムの範囲、データの取り扱い方法などを、具体的に定める必要があります。

策定したポリシーは、定期的な研修や勉強会などを通じて従業員に浸透させ、理解度の確認や実践的な訓練などにより、実効性を高めましょう。

セキュリティソフトウェアの導入

情報漏洩を防ぐためには、エンドポイントセキュリティや、アクセスログ管理ソフトなどの導入も必要です。

エンドポイントセキュリティは、ウイルスや不正アクセスからPCを保護します。また、アクセスログ管理ソフトは、誰がいつどの情報にアクセスしたかを記録し、不正行為を早期に発見できます。この機会に導入を検討してみましょう。

エンドポイントセキュリティ

全ての従業員のPCにエンドポイントセキュリティソフト(例: ESET・Kasperskyなど)をインストールし、ウイルスや不正アクセスからの保護を強化します。こういったソフトは、リアルタイムで不正プログラムを検知し、感染リスクを軽減できます。

アクセスログ管理ソフト

アクセスログ管理ソフトを使用すれば、誰が・いつ・どの情報にアクセスしたかが記録され、不正行為を早期に発見できます。特に、税理士事務所では顧客情報の取り扱いが多いため、アクセス履歴を詳細に追跡できる仕組みが必要です。

例えば、IT資産全般の管理が可能な「Watchy」ならば、アクセスログに加えて端末利用状況や稼働時間も可視化でき、業務の透明性を高められます。さらに、不審な挙動を早期に察知して管理者に通知できるため、セキュリティリスクを未然に防げます。この機会にぜひ、導入をご検討ください。

Watchy(ウォッチー) - クラウド型IT資産管理・ログ管理ツール

セキュアな通信手段の確保

会計事務所では機密性の高い情報を取り扱うため、テレワーク環境における通信の暗号化が極めて重要です。VPN接続を必須とし、事務所のサーバーや業務システムへのアクセスは、全て暗号化された通信経路を通じて行うように徹底しましょう。

また、クライアントとの電子メールのやりとりにおいても、暗号化機能付きのメールシステムの使用が推奨されます。特に重要な書類の送受信時には、追加の認証手順も検討しましょう。

従業員のセキュリティ教育の徹底

どれだけ優れたシステムを導入しても、実際の情報漏洩は、人為的なミスに起因することが少なくありません。テレワーク環境でのセキュリティ確保には、技術的な対策だけでなく、従業員のセキュリティ意識の向上が不可欠です。

定期的なセキュリティ研修を実施し、最新のサイバー攻撃手法やフィッシング詐欺の事例を紹介することで、従業員のセキュリティ上の脅威に対する認識を高めましょう。さらに、セキュリティインシデントが発生した場合の報告手順を明確にして、迅速な対応ができるよう訓練することも大切です。

税理法人のテレワーク導入事例

実際にテレワークを導入した税理士法人の事例を紹介します。他社がどのように課題を克服しているのか確認し、どういった取り組みをすべきか考えてみましょう。

弓田会計事務所様の取り組み

弓田会計事務所では、新型コロナウイルスの影響を受けて、テレワークの導入を検討していましたが、従業員のPC管理やセキュリティに関する課題を感じていました。

さまざまなツールを検討したものの、多くは大企業向けのツールで高額だったため、必要な機能をピックアップして導入できる「Watchy」の導入を決めるに至りました。特に、以下の機能を活用しながら、従業員の業務効率化とセキュリティの向上を図っています。

弓田会計事務所様 - 税理士事務所のリモートワーク環境をWatchyが支援 - Watchy(ウォッチー)

ログオン・ログオフ監視で不正利用を防止

同事務所では、Watchyのログオン・ログオフ機能を活用し、従業員の実働時間を正確に把握する仕組みを構築しました。これにより従業員の始業・終業時刻の報告と、実際のPC使用時間との整合性を確認できるようになり、勤怠管理の質が大幅に向上しています。

同機能により取得したログは、アカウント・端末・日付・イベントで絞り込みが可能で、必要な情報を迅速に抽出・分析が可能です。稼働時間データも月単位で確認でき、PCやチームごとの労働時間をひと目で把握できるのも特徴です。

スクリーン監視によるリアルタイムの業務把握

一定間隔でPCのスクリーンショットのログを取得できる機能で、同事務所では不正行為の早期発見が可能となり、顧客データの安全性を確保しています。加えて、業務効率の落ちている従業員を発見し、適宜アドバイスをすることで生産性を担保しています。

スクリーン監視機能では、1分間隔で自動的にスクリーンショットの撮影が可能で、テレワーク中でも、従業員のPCの利用状況を詳細に確認できます。任意のタイミングでログを検索・確認できるので、業務外のサイト閲覧や隠れ残業などもすぐに発見が可能です。

ソフトウェア監視で業務外アプリの利用を制限

業務の効率性とセキュリティの確保を両立するため、ソフトウェア監視機能により、承認されたアプリケーション以外の使用を制限しています。ソフトウェアの起動や終了のログを取得し、日次でソフトウェアの稼働状況をレポートとして出力が可能です。

業務に無関係なソフトウェアの使用やシャドーITのリスクを把握でき、どのソフトウェアがどれだけ使用されているかを一目で確認できます。テレワークの安全な運用にも寄与するのに加えて、業務効率の向上にも活用できる機能です。

このように、同事務所ではツールを活用しながら段階的に課題をクリアすることで、従業員の働き方を「見える化」し、自律的な業務改善を促しています。

他の事例も参考にテレワークの体制を整備しよう

税理士・会計事務所におけるテレワークの導入は、法的制約や紙ベースの業務の多さなど、クリアすべき課題を多く抱えています。しかし、勤怠管理や証憑の電子化・セキュリティの強化を着実に進めることで、十分に実現可能です。

事例から学べるように、大規模なシステム構築は必須ではなく、段階的に導入しながら最適な運用方法を模索する姿勢が大切です。柔軟な働き方を取り入れることは、従業員の定着や採用力の強化にも直結します。テレワークに役立つツールも活用しつつ、自社に最適な体制づくりに努めましょう。 

段階的な、テレワークの導入・運用には、必要な機能を選択して導入可能な「Watchy」の利用がおすすめです。

IT資産管理・ログ管理に関する多くの機能が利用でき、PC1台当たり1機能100円からリーズナブルにお使いいただけます。この機会にぜひ導入をご検討ください。また、以下のテレワーク管理の資料もぜひご活用ください。

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執筆者

Watchy編集部

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【株式会社スタメンについて】 東京証券取引所グロース市場上場。Watchy、TUNAGなど、人と組織の課題解決を実現するSaaSを展開。情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)及びプライバシーマークを取得。