情報セキュリティにおける危殆化とは、暗号化技術や認証システムが脆弱性を抱え、危険な状態に陥ってしまう状況を指します。危殆化の意味や実例を通じて、企業に求められる実践的な対策を解説します。インシデントが起こる前に備える、組織のセキュリティ水準を守るうえで欠かせません。
目次
危殆化(きたいか)とは?
危殆化とは、情報システムが技術的・運用的な要因により、保守や維持が困難となり、機能不全や停止に陥るリスクが高まった状態を指します。特にセキュリティの分野では、サポートの終了したOSや古い暗号技術、形骸化した管理プロセスによる脆弱性などが、問題視されています。
危殆化を放置すれば、情報漏洩やシステム停止などの甚大な被害を受けかねません。外部からの攻撃だけではなく、内部の問題や事業継続上のリスクも大きくなるため、現場の担当者や経営層が正確に理解しておく必要があります。
情報セキュリティにおける危殆化の例
危殆化は特定の業界やシステムに限られた話ではなく、あらゆる企業に起こり得る現象です。実際に多くの組織で発生している、代表的な危殆化の事例を紹介します。。
レガシーシステムの維持不能化
長期にわたり利用されているレガシーシステムは、対応可能な技術者の減少や、部品の供給の停止、サポート切れなどで保守が極端に困難になります。その結果、セキュリティパッチの適用ができずに既知の脆弱性が放置され、攻撃者による標的となるケースは決して珍しくありません。
安全な運用が難しくても業務上の理由から手放せず、部分改修や仮設的な運用に依存することで、システム全体の健全性が損なわれることもあります。システムの老朽化は、多層的な対策に着手しない限り、不可逆的に進んでしまいます。
セキュリティポリシーや手順の形骸化
セキュリティポリシーやシステムの運用手順は、導入当初に最新のリスクを反映して設計しても、時間の経過とともに実態に即さなくなる場合もあります。
例えば、業務フローの変化に対応できず、現場では実行不可能なルールが残っていたり、誰も読まなくなったマニュアルが放置されていたりするケースは少なくありません。
こういった状態では、ルールが守られないだけでなく、現場の独自判断が常態化すると、組織全体としてセキュリティ軽視の風潮が根付いてしまう恐れもあります。結果として組織全体のセキュリティ意識が低下し、深刻なインシデントの温床となる恐れがあります。
パスワードや認証情報のずさんな管理
パスワードや認証情報の管理不足は、危殆化の中でも特に頻繁に見られる問題です。初期設定のまま未変更のパスワードや、複数のサービスで同じパスワードを使い回している状況がよくあります。これらは、第三者による不正アクセスを招く要因となるので、注意が必要です。
特に、業務用と私用のアカウントを使い分けずに併用していたり、退職者のクラウドアカウントがそのまま残っていたりするケースでは、内部からの情報漏洩リスクが長期にわたって放置されることになります。こういったパスワードや認証管理の甘さが積み重なると、大規模な情報漏洩につながりかねません。
危殆化への対処と予防策
危殆化を未然に防ぎ、万一発生した場合でもリスクを最小限に抑えるには、多角的な対策が求められます。企業として押さえておくべき対策を見ていきましょう。
暗号アルゴリズム・鍵の見直しと運用管理
情報の保護に不可欠な暗号技術は、時の流れとともに危殆化するリスクがあります。現状では安全とされているアルゴリズムでも、計算能力の向上や新たな解析手法の登場によって、将来的には破られる可能性があるため、定期的な見直しが欠かせません。
また鍵の長さや生成方法、保管・更新の仕組みに関しても、慎重な運用が求められます。鍵の有効期限が過ぎたまま使用し続けていたり、担当者の個人管理に依存していたりすると、情報が流出するリスクがあるので注意しましょう。
クレデンシャル(認証情報)危殆化への対策
認証情報が危殆化すると、システム全体の安全性が大きく崩れてしまいます。定期的なパスワードの変更や多要素認証(MFA)の導入、アクセス権限の最小化が求められます。さらに、パスワード管理ツールの活用や、不正利用や漏洩時の速やかな対応体制の整備も必要です。
加えて、社員に対する運用ルールやガイドラインの周知、セキュリティ意識の向上も継続的に実施することが大事です。仕組みづくりとセキュリティ意識の向上の両面から、きちんと対策を講じましょう。
継続的な情報収集と教育・啓発
危殆化への対策には、継続的な情報収集と社員への教育・啓発が必要です。技術や脅威の動向は日々変化しており、現在の対策が将来も通用するとは限りません。最新のセキュリティ情報や業界動向に常に目を配り、必要に応じて対策を見直す姿勢が求められます。
また、全社員に対する定期的なセキュリティ研修や、実践的な演習(演習型インシデントレスポンスなど)なども実施しましょう。知識と実行の両面で危殆化を防ぐ文化を社内に定着させることが、長期的なセキュリティリスクの低減につながります。
問題が起こる前に徹底した対策を
危殆化は静かに進行し、気付いた時には重大なインシデントや損害に発展することの多い問題です。見た目には正常に機能していても、システムの内部では脆弱性が進行していることもあります。一度トラブルが起こると、情報漏洩や業務停止といった重大な被害につながるので、徹底した対策が必要です。
特に、運用フローの形骸化や操作履歴の見えづらさといった「内部のブラックボックス化」は、セキュリティの盲点となりがちです。
こうした課題に対して、技術的な改善だけでなく、運用フローの可視化や異常の早期検知も重要です。例えば、PCやクラウドサービスの操作ログを自動で可視化し、不正兆候を検知できる「Watchy」のようなツールの導入も、リスクの早期把握に有効です。
技術・体制・可視化の3点から、多層的な対策を検討しましょう。
Watchy編集部
従業員が安心して働ける環境を提供するための、IT資産管理、情報漏洩対策、労務管理に関するコンテンツを発信しています。
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【株式会社スタメンについて】 東京証券取引所グロース市場上場。Watchy、TUNAGなど、人と組織の課題解決を実現するSaaSを展開。情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)及びプライバシーマークを取得。

