行動的生体認証とは、ユーザーの無意識な動作や操作傾向をもとに、常時本人確認を行う技術です。パスワードや静的生体認証では検知できない“なりすまし”にも対応できるとして、セキュリティ強化とユーザー負担軽減を両立した手法として注目を集めています。行動的生体認証の仕組みや活用例・今後の展望まで、基本的なところを押さえておきましょう。

行動的生体認証とは何か?

行動的生体認証は、ユーザーが日常的に行う操作や動作のパターンを分析し、本人かどうかを特定する認証方式です。まずは技術の概要とともに、静的生体認証との違いや、導入のメリットを確認しておきましょう。

無意識の行動パターンで認証する方式

行動的生体認証の最大の特徴は、ユーザーの無意識の行動パターンを利用する点です。キーボードのタイピング速度やリズム、マウスの動き方、スマートフォンの持ち方やタッチ操作の傾向など、日常的な操作の中に現れる癖を組み合わせて認証します。

たとえば、同じ入力内容でも、キーを打つリズムや押す強さには個人差があるため、他人による模倣が極めて困難です。

こうした特徴を活用することで、ユーザーが意識しない自然な動作から認証できるため、利便性を損なわずに高いセキュリティを実現できます。

これらの情報はバックグラウンドで自動的に収集され、ユーザーに負担をかけることなく、継続的に本人確認に活用されます。従来の一度きりの認証ではなく、常時監視に近い形でセキュリティを担保できる点が、行動的生体認証の大きな強みです。

静的生体認証との違い

静的生体認証は、指紋や顔・虹彩など身体的な特徴を、一度スキャンして認証する方式です。一方、行動的生体認証は、人間の操作や動作のパターンなどに着目し、ログイン時だけではなく利用中も継続的に認証を行います。

そのためログイン後、他人が端末を操作した場合も異常を検知しやすく、セッション中のなりすまし対策としても有効です。
特に、VPN経由での社内アクセスや外部持ち出し端末の管理など、「ログイン後の安全性」を重視する場面で大きな効果を発揮します。

行動的生体認証のメリット

行動的生体認証の主なメリットは、模倣が非常に困難であることや、認証時のユーザーの負担が少ないこと、継続的な認証が可能な点です。ユーザーの身体情報のように秘匿性の高いデータが外部に流出するリスクも低く、万が一情報が漏洩しても悪用されにくいのも強みです。

さらに、多くの行動の特徴を組み合わせることで、より高い安全性を実現できます。行動情報の蓄積が進むほど認証の精度も向上するため、使えば使うほどシステムを強化できるのも特徴です。

行動的生体認証の活用例

行動的生体認証は、すでにさまざまな分野で実用化が進んでいます。特に、金融業界や多くの企業のセキュリティ管理の現場で、その有効性が注目されているようです。代表的な例を確認しておきましょう。

金融業界での不正アクセス対策

金融業界では不正なログインや、なりすましによる被害が後を絶ちません。こうした脅威に対抗する手段として、行動的生体認証を導入する企業が増えている状況です。

例えば、オンラインバンキングの利用者の操作パターンをAIがリアルタイムで分析し、異常な挙動が確認された場合には、追加認証を要求する仕組みの導入が目立ちます。これにより、万が一パスワードが漏洩しても、本人でない限りアクセスが完了しにくくなっています。

また、金融詐欺やマネーロンダリング対策としても、行動履歴の分析が有効です。このように、金融機関が多層的な防御を構築する上で、行動的生体認証は重要な役割を果たしています。

企業のセキュリティ管理

金融機関以外の企業における、情報漏洩や内部不正への対策としても、行動的生体認証の導入が進んでいます。社内システムへのアクセス時、個人ごとの操作習慣やアプリケーションの使用傾向を確認し、異常を即座に管理者にアラートする仕組みを導入する企業が増えています。

これにより社員が意図せずマルウェアに感染した場合や、不正なアクセス権限を使って情報を取得しようとした場合でも、早期に発見・対応が可能です。またオフィスの入退室管理やリモート業務環境における本人確認など、物理・デジタルを問わず活用領域が広がっています。

行動的生体認証の今後の展望

今後はAIや機械学習の進化により、行動的生体認証の精度や利便性は、さらに向上すると期待されています。スマートフォンやウェアラブル端末の普及により、取得できる行動データの種類や量が増え、より多角的な本人確認が可能になるでしょう。

また、データの安全管理技術も進化し、個人情報の漏洩リスクを抑えつつ、より高度なセキュリティを実現する方向に発展すると考えられます。個人向けのアプリやスマートデバイスにも標準搭載され、ユーザーがセキュリティを意識することなく、高度な認証が“当たり前”になる時代が、すぐそこまで来ています。

行動的生体認証でセキュリティを担保する

行動的生体認証は、ユーザーの無意識な行動パターンを活用することで、高い安全性と利便性を両立できる認証技術です。従来のパスワードや、静的生体認証では防げないなりすましや、不正アクセスのリスクを低減できるので、多くの企業で導入が進んでいます。

今後は、さらに多様な分野への応用が進むと考えられており、AIやIoTとの融合で、より精度の高い認証環境が整うでしょう。より快適で安全な社会の基盤技術として、より多くのシステム・サービスで広く活用されると考えられます。

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執筆者

Watchy編集部

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