メールはビジネスに不可欠なコミュニケーション手段ですが、サイバー攻撃や誤送信による情報漏洩のリスクもあります。安全に業務の運営を続けるためには、メールセキュリティ対策の徹底が欠かせません。組織として取るべき対策を確認しておきましょう。

メールセキュリティ対策の必要性

メールは日常業務に欠かせないツールである一方で、サイバー攻撃の温床になっているのが実態です。企業が安全に情報をやりとりするには、メールセキュリティ対策の必要性を正しく理解し、適切な施策を講じなければいけません。

メール経由での攻撃の増加

近年、サイバー攻撃の多くがメールを経由して実行されており、フィッシング詐欺やマルウェア・標的型攻撃メールなど手口は多様化・巧妙化しています。特にビジネスメール詐欺(BEC)やランサムウェアの感染など、企業活動に甚大な被害を及ぼすケースが増加中です。

事実、情報処理推進機構(IPA)の調査でも、サイバー攻撃の9割がメールかウェブサイト経由で発生しています。攻撃の対象はIT部門だけでなく、経理や人事など全社的に及ぶため、従業員一人一人のリテラシーの向上と、メールセキュリティ基盤の整備が必要です。

出典:情報セキュリティ10大脅威 2025|情報処理推進機構(IPA)

メールの誤送信も重大なインシデントに

メールの誤送信は、サイバー攻撃とは異なるものの、情報漏えいの大きな原因です。送信先のミスや添付ファイルの誤りによって、機密情報や個人情報が意図しない相手に渡ると、企業の信用の失墜や損害賠償リスクが生じます。

誤送信は人的ミスによるため、完全にゼロにすることは困難ですが、きちんと対策を講じることで、できる限りリスクを低減することが重要です。メール送信時のダブルチェックや送信制御システムの導入など、組織的な仕組みづくりが求められます。

内部不正の対策も重要に

外部からの攻撃だけではなく、内部不正による情報漏えいも近年問題視されています。従業員による意図的な情報持ち出しや、不注意による漏えいが発生すると、企業の損失は計り知れません。

内部不正のリスクを抑えるには、アクセス権限の厳格な管理や、送信内容・宛先の監査、ログの記録・監視体制の強化が必要です。また、従業員教育を通じて情報管理の意識を高めることも、内部不正防止に直結します。

基本となるメールセキュリティ対策

メールに関する多様な脅威に対抗するには、まず基本的なセキュリティ対策を徹底する必要があります。企業として必ず導入すべき、基本的な対策を確認しておきましょう。

スパムメールのブロック

スパムメールは迷惑な広告であるのみならず、マルウェアやフィッシング詐欺の温床にもなっています。スパムを未然にブロックするのは、メールセキュリティの基本です。必ず対策をしておきましょう。

一般的には、IPアドレスや送信ドメイン認証などの仕組みを組み合わせることで、不審な送信元からのメールを自動で振り分けられます。また、アンチスパム機能を備えたメールセキュリティ製品を導入すれば、大量の迷惑メールや悪意あるメールの自動検知・隔離が可能です。

スパム対策は、管理者の負担を軽減するだけでなく、従業員が悪意あるメールに触れる機会を減らせる点でも効果的です。

添付ファイルとリンクの自動スキャン・検疫

メールに添付されるファイルや記載されたURLは、攻撃の起点となるケースが多いため、自動でスキャンし、問題がある場合は検疫する仕組みも必要です。特に、ZIPファイルにパスワードが設定されている場合や、クラウドサービスへのリンクが含まれる場合は、検出が難しいため注意しましょう。

スキャンシステムは、ウイルスの定義ファイルだけに頼らず、振る舞い検知やヒューリスティック検出など、多角的な観点で判断できるものを選定すべきです。検疫によって安全性が確認されるまでファイルを開けない運用にすれば、マルウェア感染のリスクを大きく抑えられます。

ウイルス対策とスパムフィルタの導入

メールの内容が第三者に盗み見られたり、なりすましに利用されたりするのを防ぐために、暗号化と多要素認証の導入が有効です。暗号化には、メール本文や添付ファイルを対象とするもの、メール通信そのものを保護するTLSなど、さまざまな方式があります。

一方、多要素認証はメールシステムへのログイン時に、ID・パスワードに加えて追加認証を要求する仕組みで、なりすましやアカウント乗っ取りの防止に効果的です。どちらも一度導入すれば恒常的に役立つため、初期の投資や運用手間に対して、得られるメリットが大きいといえます。積極的に導入を検討しましょう。

メールの暗号化と多要素認証の導入

メールの内容が第三者に盗み見られたり、なりすましに利用されたりするのを防ぐために、暗号化と多要素認証の導入が有効です。暗号化には、メール本文や添付ファイルを対象とするもの、メールの通信そのものを保護するTLSなど、さまざまな方式があります。

一方、多要素認証はメールシステムへのログイン時に、ID・パスワードに加えて追加認証を要求する仕組みで、なりすましやアカウント乗っ取りの防止に効果的です。どちらも一度導入すれば恒常的に役立つため、導入を検討するとよいでしょう。

誤送信を防ぐ仕組みづくり

人的ミスによる誤送信を防ぐには、単なる注意喚起だけでなく、メールの運用ルールの整備やシステム面での対策が必要です。

送信前に確認画面を表示する仕組みや、特定の条件下で一時送信を保留し、内容をダブルチェックするなどのルールを設けるのがよいでしょう。また、特定の送信先ドメインを制限したり、Bccの強制設定なども誤送信対策としておすすめです。

誤送信は一度でも重大な信用失墜につながることがあるため、運用ルールと技術対策を組み合わせ、うまくリスクの低減を図る必要があります。

メールセキュリティ技術を活用した対策

上記の基本的な対策に加えて、新しいメールセキュリティ技術の活用も有効です。AI(人工知能)やサンドボックスなどの先進技術を取り入れることで、未知の攻撃にも柔軟に対応できます。詳しくみていきましょう。

サンドボックス環境でのリアルタイム検証

サンドボックスは、メールに添付されたファイルやリンク先の動作を仮想環境で実行し、安全性を判定する仕組みです。従来の対策では検知が難しい未知のマルウェアやゼロデイ攻撃も、サンドボックスなら挙動を観察して判断できるため、より高度な防御が可能になります。

特に標的型攻撃や偽装メールでは、一般的なスキャンでは見抜けない巧妙なコードが使われているケースも多いため、サンドボックスによる動的解析が有効です。

また検知結果に応じて、自動で隔離や管理者への通知ができるため、リアルタイムでの対応力も向上します。導入時にはネットワークの遅延や、業務への影響を抑える設計が必要ですが、セキュリティレベルの底上げに寄与する有用な技術です。

AIによる不審メールの自動判定と対応

近年は、AI技術を活用したメールセキュリティ製品が登場し始めており、大量のメールをリアルタイムで分析し、不審なものを自動で判定・遮断できます。AIは過去の攻撃パターンや最新の脅威情報を学習しているため、従来のルールベースでは見抜けない巧妙な攻撃にも対応が可能です。

またAIを用いた対策は、自動でスパムやマルウェアを分類するだけでなく、将来の脅威への適応力にも優れているため、中長期的な投資効果も期待できます。導入には相応のコストと運用に手間がかかりますが、人的負担の軽減と検知力の強化を両立できる技術です。

ファイル転送サービスの活用

機密性の高い資料をメールに添付して送ることには、依然として高いリスクが伴います。そこで近年はメールに代わり、ファイル転送サービスを利用する動きも目立ちます。

ファイル転送サービスは、データを一時的に専用サーバーに保存し、受信者は認証を経てダウンロードする方式が一般的です。アクセス制限やダウンロード回数の制御、期限付き公開などの機能により、誤送信や第三者による傍受のリスクを大きく軽減できます。

また、ファイル送信ログも自動で記録されるため、送信後のトラブル対応や内部統制の観点でも有効です。セキュリティ機能の充実した法人向けサービスも多いので、社内ルールに沿った活用を進めることで、より安全にデータの共有が可能です。重要なファイルは、専用サービス経由で送信することも検討しましょう。

進化する脅威に備えてメールセキュリティ対策を見直す

サイバー攻撃や情報漏えいの手口は日々進化しており、従来の対策だけでは防ぎきれないリスクも増えています。企業は基本的な対策を徹底するのはもちろん、最新の技術や運用ルールを取り入れ、定期的にメールセキュリティ対策を見直すことが重要です。

定期的なセキュリティ監査と従業員教育を通じて、技術と人の両面からメールセキュリティの向上を図り、重要な情報資産を守りましょう。

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執筆者

Watchy編集部

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