社会の急速なIT化や、企業によるデジタルデータ活用の広がりなどを背景として、個人情報保護法は数年ごとに見直しが進められています。2025年の段階において、企業や組織が押さえておくべき最新の動向と、実務上の重要となるポイントを解説します。

2025年の個人情報保護法改正の状況

個人情報保護法は、IT技術や社会情勢の変化に対応するため、定期的な見直しが法律に組み込まれています。2025年現在も、3年ごとの見直し規定に基づき、改正を含む検討が進められている状況です。

現時点では最終決定には至っていませんが、個人の権利利益の保護や、データ利活用のバランスなどが大きなテーマとなっています。

3年ごとの見直し規定の概要

個人情報保護法には、社会情勢や技術の進展を踏まえた、3年ごとの見直しが規定されています。同制度は個人情報の保護と利活用のバランスを、時代に応じて調整するのが目的です。直近では2022年に改正法が施行され、次回の見直しが2025年に想定されています。

そのため総務省や個人情報保護委員会は、事業者や学識経験者などから意見を収集し、実務上の課題を踏まえた改正案の議論を進めています。こうした定期的な制度の見直しは、将来の技術進歩や社会の変化に対応するため、法律を定期的に点検し、実態に即した制度にするための重要な仕組みです。

改正に向けた現段階の状況

2025年の改正に向けた動きとしては、上記のように個人情報保護委員会が有識者検討会を設置し、検討会が定期的に開催されています。議題には本人同意の在り方や、情報が漏洩した時の報告体制、越境移転への対応強化、課徴金制度の導入などが含まれています。

特に注目されているのは、技術の進展により従来のルールでは対応しきれない、新たなケースが増えている点です。

AI(人工知能)やIoTの普及に伴い、とりわけビジネスシーンにおいて、大量のデータが無意識のうちに収集・分析される場面が日常化しつつあります。そこで情報の透明性を確保しつつ、柔軟で実効性のある運用ルールの整備が求められている状況です。

【2022年4月施行】これまでの個人情報保護法の改正内容

2025年に想定されている法改正は、その方向性について、いまだ議論が重ねられている段階です。そこで、2022年4月に施行された個人情報保護法の改正内容について、整理しておきましょう。

以下のように、同改正では個人の権利強化や事業者の義務強化・ペナルティの厳格化など、個人情報を取り巻くルールが大きく変わりました。2025年改正に向けた動きも、これらの流れを継承しつつ、さらに踏み込んだ内容が検討されています。

本人の権利の強化

2022年の改正では個人情報の本人が、自分の情報をより適切にコントロールできるように、権利の強化が図られました。具体的には、事業者に対する「利用停止請求」や「第三者提供記録の開示請求」など、新たな請求権が盛り込まれています。

これにより、個人は自らのデータの行方を把握しやすくなり、不要・不当な利用に対して、直接的に関与できる仕組みが整いました。さらにオプトアウトによる第三者提供についても、一定の制限が設けられ、透明性と選択肢の拡大が図られています。

事業者の義務の強化

2022年の改正では事業者に対して、個人情報の管理体制の厳格化が求められました。特に重要なのは、情報漏洩などの事案における報告・通知義務の新設です。

個人の権利・利益を害する恐れのある漏洩事案が発生した場合、事業者は個人情報保護委員会への報告と、本人への通知が義務付けられました。さらに、仮名加工情報の創設により、データの活用とプライバシー保護のバランスを取るための、新たな枠組みも導入されています。

ペナルティの強化

法令違反に対する抑止効果を高めるため、ペナルティの大幅な強化も実施されています。重大な違反があった場合、個人情報保護委員会からの命令違反に対し、より厳しい罰則や公表措置が科されることになりました。

特に、法人に対する罰金額の上限が引き上げられたことで、違反の抑止力が高まっています。さらに、違反事例が公表されることで、企業は社会的信用の失墜リスクが増し、内部統制や教育体制の見直しが不可欠になっています。

外国企業に対する規定の強化

個人情報のグローバルな流通の可能性を踏まえて、外国企業に対する規定も強化されました。日本国内の個人情報を取り扱う海外事業者にも、国内事業者と同等の義務が課されるようになり、国際的な個人情報保護水準の向上が図られています。

これにより、海外からのデータアクセスや第三者提供についても、厳格な管理が求められ、越境データ移転時の安全管理措置や委託先の監督義務も明確化されました。グローバル展開する企業は、各国の法令動向と合わせて日本の規制にも細心の注意を払う必要があります。

今後の個人情報保護法の改正ポイント

今後の個人情報保護法の改正では、個人の権利と社会全体の利益を、どう調和させるかが課題となる見込みです。

特に、AIやビッグデータを活用する場面での規律が注目されており、事業者の実務対応にも影響を及ぼす内容が検討されています。押さえておくべき、重要なポイントを見ていきましょう。

本人同意不要となる新たなケースの検討

現在検討されている論点の一つに、一定の条件下で本人の同意を得ずに、個人情報を利用できるケースの拡大があります。具体的には学術研究や公共衛生の向上など、社会的な有益性が高い目的に限り、本人の明確な同意がなくても、個人情報の利用が可能となる仕組みが提案されています。

ただし、個人の権利利益を損なわないことが前提であり、利用目的の明示や適切な安全管理措置が必要となる見込みです。本人の意思に反しない範囲において、データの活用と保護のバランスを取る制度の設計が求められています。

漏洩時の報告・通知義務の見直し

情報漏洩が発生した際の報告・通知義務についても、見直しが議論されています。漏洩した情報の性質やリスクに応じて、本人通知の義務を緩和する案が検討されており、権利利益の侵害リスクが低い情報の場合は、通知不要とする方向性も示されているようです。

その一方で、重大な漏洩リスクがある場合は、迅速な通知が引き続き求められるため、リスク評価の基準や判断プロセスの明確化が重要な課題です。今後の議論の行方によっては、業界ごとに異なる対応策が求められる可能性もあります。

違法な第三者提供への対応強化

個人情報の違法な第三者提供や目的外の利用、要配慮情報の不適切な取得に対する規律強化も、重要な論点です。特に、データ処理を委託された事業者(クラウドサービスやAI企業など)に対して、責任範囲の明確化や監督の強化が課題となっています。

違法提供が発覚した場合の罰則強化や、再発防止策の義務付けも検討されており、企業は委託先の選定や、契約内容の見直しが必要な場面が増えるでしょう。今後はサプライチェーン全体での個人情報管理体制の強化も不可欠で、違反時の社会的責任もより重く問われることが予想されます。

課徴金制度の導入検討

違反行為に対する実効性を確保するため、課徴金制度の導入も検討されています。現状は主に刑事罰や過料で対応していますが、経済的なインセンティブを持つ企業に対しては、課徴金の方がより効果的との声も少なくありません。

課徴金制度が導入された場合、重大な法令違反に対しては、売上高に比例した金額が課される仕組みが想定されています。そうなると企業は、より高度なコンプライアンス体制が必要になるでしょう。

個人情報保護法の改正状況を注視する

個人情報保護法は、デジタル社会の進化や国際的な潮流に対応するため、今後も定期的な見直しと改正が続く見通しです。2025年の改正に向けた議論は現在も進行中であり、特に企業は最新情報を常に把握し、柔軟かつ適切な対応が求められます。

法改正の内容によっては既存の業務プロセスや、管理体制の見直しが必要となるケースも考えられます。顧客や取引先との信頼関係の維持・強化の観点からも、平時からの備えと継続的な情報収集を心掛けましょう。

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執筆者

Watchy編集部

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