パッチ管理は、システムの安全性・安定性を維持するために欠かせない作業です。適切な手順で実施しなければ、セキュリティリスクが高まり、システム障害を招く恐れもあります。パッチ管理の基本概念から実践的な流れ、注意点を押さえておきましょう。
目次
パッチ管理とは?
パッチ管理とは、ソフトウェアやOSにおける不具合や、脆弱性を修正する更新プログラム(パッチ)を、適切に適用・管理するプロセスです。
新たな脆弱性が発見された際、ソフトウェアベンダーは修正パッチを提供するので、ユーザーはそれを適切に入手し、速やかに適用することが大事です。パッチは主にセキュリティ上の脆弱性や不具合を修正するために配布されるため、適切な管理を怠ると、サイバー攻撃やシステムトラブルの原因になりかねません。
パッチ管理の必要性
パッチ管理は、単なるソフトウェアの更新作業ではありません。以下のように、サイバー攻撃をはじめとした脅威からシステムを守るための重要な対策です。さらに、ソフトウェアの安定運用や法令順守の観点からも、計画的かつ継続的に実施する必要があります。
セキュリティリスクの低減に不可欠
近年、サイバー攻撃は日々巧妙化しており、既知の脆弱性を狙った攻撃が頻発しています。パッチを未適用のまま放置すると、攻撃者にとって格好の標的となり、情報漏洩やサービス停止などの深刻な被害を引き起こす恐れがあります。
特に、ゼロデイ攻撃のような緊急度の高い脅威に対しては、迅速なパッチ適用が最も有効な対策です。セキュリティリスクを最小限に抑えるために、定期的に脆弱性情報を収集し、適切なパッチをタイムリーに適用する必要があります。
OS・ソフトウェアの安定運用のため
パッチは脆弱性の修正だけではなく、ソフトウェアの不具合の修正や、機能の改善も目的としています。
例えば、特定の操作でアプリケーションが停止する不具合や、ネットワーク接続の不安定さなどが、パッチによって改善されるケースは珍しくありません。これによりシステムが安定的・効率的に稼働できるようになり、利用者のストレスの軽減にもつながります。
一方、最新のパッチを適用していない場合、既知の不具合によるトラブルが繰り返されるケースもあるため、業務効率に悪影響を与えかねません。
コンプライアンスの維持・強化につながる
多くの業種において、情報セキュリティや個人情報保護に関する法令・ガイドラインが、年々厳格化している状況です。ISO 27001やISMSなどのセキュリティ基準では、厳格な脆弱性管理が求められており、適切なパッチ管理がされていない場合、問題になるケースもあります。
さらに、パッチの未適用により情報漏洩が発生した場合、企業として社会的信用も失いかねません。パッチ管理を通じてリスクを抑制し、法令や業界基準に準拠した運用をすることは、コンプライアンスの維持・強化の観点からも必要です。
一般的なパッチ管理の流れ
パッチ管理は単発の作業ではなく、情報収集から適用・確認まで、一連のプロセスとして捉える必要があります。以下では、代表的な流れを3ステップに分けて解説します。
パッチ情報の収集と最適なパッチの入手
まずは、使用中のソフトウェアやシステムに関する最新のパッチ情報を、定期的に収集する必要があります。メーカーの公式サイトや、セキュリティ情報の配信サービスなどを活用し、リリースされたパッチの内容や重要度を確認しましょう。
その上で、自社のシステム構成や運用状況に照らし、適用すべきパッチを選定・入手します。情報収集の遅れや見落としがないように、担当者の役割分担やチェック体制を整えることが重要です。
パッチの検証とスケジューリング
入手したパッチは、すぐに本番環境へ適用するのではなく、まずテスト環境での検証が必要です。パッチによる不具合や他のシステムへの影響を事前に確認し、問題がないことを確かめてから、本番環境に適用するためのスケジュールを立てましょう。
業務への影響を最小限に抑えるため、適用のタイミングや対象範囲を慎重に計画し、関係者への周知を徹底することが大事です。
パッチの適用と定期的な確認
検証を終えたパッチは、計画に従って本番のシステム環境に適用します。適用後は、システムの動作確認やログのチェックを行い、問題がないかを確認しましょう。
加えて、パッチ適用状況を定期的に監査・記録し、未適用のパッチがないか継続的にチェックすることも大切です。常に最新のセキュリティ状態を維持し、安全にシステムを運用できる体制をつくりましょう。
パッチ管理の注意点
パッチ管理は、単に更新作業をすればよいわけではありません。パッチの適用で新たな不具合やシステム障害が発生するリスクがあるため、上記のように、必ずテスト環境での検証を徹底しましょう。特定の環境下において、システムの不安定化を招くパッチもあるので注意が必要です。
また、パッチの適用が属人的な作業になると、属人化リスクが高まり、担当者の不在時に対応できない事態も起こり得ます。特に、複数の拠点で多様な端末を管理している組織では、適用手順のドキュメント化やツールの活用などにより、誰でも確実に作業ができる体制にしておきましょう。
パッチ管理の基本を押さえて安全にシステムを運用する
パッチ管理は、セキュリティ対策やシステムの安定運用、コンプライアンス維持の観点から、現代のIT環境において欠かせない業務です。
日々進化する脅威に対応するために、パッチ情報の収集から適用・確認まで、一連の流れを確実に実施する必要があります。適用ルールの整備や関係者との連携、継続的な改善活動により、パッチ管理の質の向上を図りましょう。

Watchy編集部
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