企業や団体でIT機器を導入する際、キッティングと呼ばれる初期設定作業が必要です。技術面のみならず、運用面の理解や計画力なども求められるため、IT管理者として必要なスキルを確認しておきましょう。キッティングの作業手順や注意点も解説します。

キッティングとは?

キッティングとは、PCやタブレットなどのIT機器の初期設定作業です。必要なソフトウェアのインストールに加えて、ネットワーク設定などを一括して行います。まずはキッティングの概要と必要な場面など、基本的なところを理解しましょう。

IT機器の初期設定作業

キッティングはIT機器を使用できる状態にする作業で、OSや業務に必要なソフトウェアのインストール、ネットワークやアカウントの設定などが含まれます。さらにセキュリティ対策の反映や周辺機器の設定なども必要であるため、初めて経験する人は、作業量が多いと感じるケースは少なくありません。

これら一連の作業を事前に完了させておくことで、機器の利用者は余計な設定作業に時間を取られることなく、スムーズに業務を開始できます。特に大規模な組織では、きちんと統一されたIT環境を提供することで、サポートコストの削減にもつながります。

キッティングが必要な場面

キッティングが必要になるのは、主に新入社員のパソコン導入や既存機器の入れ替え、大規模なOSアップデート、新しい業務システムの導入時などです。

特に多数の端末を一度に準備する必要がある場合、手作業で1台ずつ設定するのは非効率であり、ミスも起きやすいため、あらかじめ手順を統一したキッティングが不可欠です。作業の正確さとスピードが求められるため、事前準備や手順の徹底が求められます。

またセキュリティ要件が厳しい環境においては、標準化された手順での作業が情報漏洩の防止にもつながります。

キッティングに必要な知識・スキル

上記のように、キッティングは単なる機器のセットアップではなく、一定の専門知識や判断力が求められる作業です。OSやネットワーク・ソフトウェアの知識に加え、チームや関係者との連携も欠かせません。キッティングに必要とされる基本的なスキルを、詳しく確認しておきましょう。

OSやソフトウェアに関する基本的な知識

キッティングはWindowsやmacOSといったOSの操作や、設定変更が頻繁に求められるため、OS・ソフトウェアに関する基本的な知識は必須です。加えて、Microsoft 365やウイルス対策ソフト、業務で使用する特定のアプリケーションのインストールや、各種設定も必要になります。

特に企業によっては、ポリシーに準拠した初期設定が求められるため、細かな項目にも注意を払わなければいけません。OSのバージョンごとの差異を把握し、トラブル発生時には適切に対応できる柔軟性も必要です。

ネットワークやアカウント設定に関する理解

ネットワーク設定やユーザーアカウントの管理も、キッティングには欠かせないスキルです。Wi-Fiや有線LANの接続設定、ユーザーごとの権限設定など、ネットワークやアカウントに関する正確な知識が求められます。

これらの設定が正しくされていなければ、業務に支障を来すだけでなく、セキュリティリスクも高まるでしょう。確実に設定を完了させることで、社員が安心して業務をスタートできます。

コミュニケーション能力

キッティング作業は、一人で完結するものではありません。情報システム部門や各部署との調整、マニュアルの確認、場合によっては利用者への初期説明も必要です。担当者には周囲と円滑なコミュニケーションを取る力が求められます。

特に、複数人で作業を分担する現場では、認識のずれや作業ミスを防ぐためにも、日常的な声かけや進捗の共有が必須です。

さらに予期せぬトラブルが発生した際には、関係者への的確な報告や相談を迅速に行えるかどうかで、対応のスピードや品質が大きく変わってくるでしょう。技術面に加えて、こうした対人スキルも、キッティング業務の質を左右する要素です。

キッティングの作業内容と進め方

キッティングの現場では、準備から作業完了までに一貫した流れがあります。機器の受け入れから必要な設定や確認・動作検証など、それぞれ注意すべきポイントを確認しておきましょう。

必要な準備と進め方の確認

キッティングを始める前に、作業対象となる機器のリストアップに加えて、必要なライセンスやソフトウェアの確認が必要です。さらに設定内容のテンプレートの作成など、事前準備の徹底が欠かせません。

準備不足は作業ミスやトラブルの原因となるため、事前に作業計画と手順を明確にしておきましょう。作業に必要なネットワーク環境やアカウント情報、マニュアル類の整備も求められます。

特に、複数人で分担して進める場合は、情報の共有と作業の統一が成否を左右します。事前に全体の流れを把握し、リスクを想定した準備を進めることが大事です。

キッティングの作業手順

キッティング作業は上記のように、機器の受け取りから動作確認まで、一定の手順に従うことが重要です。一般的には、以下の手順に従って作業を進めます。

  1. 機器の受け入れと外観の確認
  2. OSやソフトウェアのインストール
  3. ネットワーク設定やアカウント設定
  4. セキュリティ設定やパスワードの管理
  5. 業務用アプリケーションの導入
  6. 動作確認と設定内容のチェック
  7. 機器ごとの管理ラベル貼付・記録
  8. 納品・ユーザーへの引き渡し

現場によって手順や必要な作業は異なる場合も多くありますが、基本的には上記の流れをベースに、社内のルールや業務内容に応じて調整することが大事です。標準化されたフローがあることで、ある程度は作業の属人化も避けられます。

キッティング作業時の留意点

キッティングを効率的かつ確実に進めるには、以下の点にも留意が必要です。作業手順の標準化やスケジュールの徹底管理、作業環境の整備などが、作業の品質やスピードに直結します。

作業の標準化・均一化を図る

キッティングは基本的に、多数の端末を扱う作業であるため、設定内容にばらつきが出ると運用上の問題が発生しやすくなります。事前に設定内容や手順を標準化し、誰が作業しても同じ品質で仕上がる体制を整えることが重要です。

上記のように作業手順を明確にした上で、チェックリストの活用や設定ファイルの共有、手順書の整備をしておきましょう。標準化により後のトラブルシューティングも容易になり、保守コストの削減にもつながります。

作業品質の安定は、業務全体の信頼性を高める要素でもあるため、適宜、作業精度を担保する仕組みも積極的に取り入れましょう。

スケジュールと作業環境を管理する

キッティングには一定の作業時間がかかるため、スケジュール管理の徹底が必要です。納期に間に合わない、機器が手元にそろわないといった事態を避けるために、具体的な日程と作業量は早期に見積もっておきましょう。

また、作業に適した環境の確保も重要です。十分な作業スペースと安定した電源やネットワーク回線、必要機材の整備など、物理的な環境が整っていないと効率が著しく低下します。適切な準備と環境整備が、作業精度や作業者の負担軽減にも直結するため、計画段階から配慮が必要です。

クローニングによる効率化も検討する

多数の端末に同じ設定を施す場合、手作業では時間と労力がかかります。そこで、マスターイメージを使った、クローニングを導入している企業は珍しくありません。あらかじめ設定済みの端末をベースに複製を重ねることで、作業時間を大幅に短縮できます。

特に、OSやソフトウェアのインストール、設定の適用などを一括で反映できるため、手作業によるミスを減らせるのがメリットです。

ただし、クローニング後には個別の設定やライセンス認証が必要になる場合も多いため、作業の一部は手動対応を残す必要があるでしょう。効率と正確性のバランスを見極めた上で、導入の可否を判断することが大事です。

キッティングの基本と手順を押さえておこう

キッティングは、IT機器を業務で使用できる状態に整える重要な作業です。単なる初期設定にとどまらず、全体の運用効率やトラブルの発生率にも影響するため、正確かつ効率的に進めなければいけません。

社内の人材で全て対応するならば、必要なスキルを身に付け、標準化された手順と十分な準備のもとで実施しましょう。徹底した準備と手順の順守が、IT運用の安定と業務効率化につながります。

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執筆者

Watchy編集部

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