Microsoft社が提供してきたWSUS(Windows Server Update Services)の廃止が発表され、多くの企業のIT環境に影響を与えています。廃止理由や新たな管理手法への移行に関して、知っておくべき事柄を解説します。主な切り替え先や、おすすめのシステムも押さえておきましょう。
目次
WSUSの廃止に関する基本情報
WSUS(Windows Server Update Services)は長年、Windows環境における更新プログラムの一元管理を担ってきました。しかし2024年9月、Microsoft社がWSUSの将来的な廃止と、今後は新機能の追加や開発をしない旨を発表しました。
現行の機能や更新プログラムの提供は当面継続されますが、今後リリースされるWindows OSやアプリケーションとの互換性は、徐々に失われる可能性があります。
WSUSが廃止される理由
WSUSの廃止が検討されている理由としては、クラウド環境の一般化や、Microsoft社の運用方針の変化があります。
従来、オンプレミス環境でのパッチ管理は、WSUSが担ってきました。しかしWindowsの更新頻度が上がり、セキュリティ上の脅威も高度化するなか、より柔軟性・即時性の高い管理体制が求められるようになりました。
また、WSUSは運用や管理が複雑な面もあり、専門的な知識を持つ管理者が必要です。こうした課題を解消するため、Microsoft社はクラウドベースのツールへの移行を推奨するようになり、WSUSを廃止する意向を表明しています。
WSUSはもう使えなくなる?
2025年の5月時点では、WSUSの即時終了は発表されていません。しかし長期的には非推奨とされ、サポートが段階的に縮小される見込みです。実際、WSUSに関するドキュメントや更新プログラムの提供頻度は低下しており、機能追加もされていない状況です。
そのため、今後登場するWindows OSやアプリケーションとの互換性は、徐々に低下し、脆弱性が発見されても対処できない可能性があります。中長期的にはWSUSに依存し続けることが、セキュリティや運用の面で大きなリスクとなるため、早めの移行計画の策定が必要です。
WSUSの廃止による影響は?
WSUSの廃止は、企業のIT運用やセキュリティ体制に、さまざまな影響を及ぼします。特にパッチ管理の集中制御が失われることで、以下のようにセキュリティ上のリスクや、管理者の負担の増加といった課題が顕在化します。
セキュリティリスクの高まり
WSUSの最大の強みは、セキュリティパッチを迅速かつ効率的に一元配布できる点でした。廃止後は各端末が個別に、Microsoftのアップデートサーバーにアクセスする必要があり、更新の遅延や適用漏れが発生しやすくなります。
結果としてシステムの脆弱性が放置され、ゼロデイ攻撃など、新たな脅威への対応が遅れるリスクが高まるでしょう。特に、事業規模の大きな企業や、セキュリティの強固さがとりわけ重視される業種では、コンプライアンスの面で大きな影響が出る可能性があります。
担当者の負担増
WSUSの廃止により従来の管理フローが使えなくなると、IT部門の担当者にかかる負担が増す可能性もあります。
更新管理の自動化やスケジュールの調整といった、基本的な作業をWSUSに依存していた場合、代替策が確立するまで、手動での対応が必要です。結果として、管理上のミスや遅延を招くリスクが高まります。
また、新しいツールへの移行や運用設計にも、相応の知識と時間が必要です。人的リソースが限られている組織では、対応が後手に回ってしまうケースも多いでしょう。とりわけ複数の端末を抱える環境では、設定の一貫性を保つことも難しくなり、管理そのものが煩雑化します。
こうした負担を軽減するためにも、計画的な移行スケジュールの策定が不可欠です。必要に応じて、外部の専門家やコンサルタントの支援を検討したり、Microsoft社が提供するトレーニングリソースを活用したりするのも有効です。
WSUSの切り替え先は?
WSUSに代わる新たなパッチ管理の選択肢として、Microsoft社は複数のクラウドベースツールを提供しています。ここでは、代表的な移行先となる「Windows Autopatch」「Microsoft Intune」「Azure Update Manager」について、簡単に特徴を押さえておきましょう。
Windows Autopatch
Windows Autopatchは、Microsoft社が提供するパッチマネジメントサービスで、更新プログラムの自動管理に特化しています。Microsoft 365の契約がある企業であれば、手軽に利用でき、Office・Teamsなどの主要アプリの更新も一括管理が可能です。
更新の段階的な展開や自動ロールバック機能により、更新による障害を最小限に抑えつつ、セキュリティを維持できる点が特徴です。ただし適用対象の細かな取捨選択はできず、Active Directoryと連携する場合は、追加の構成が求められます。
Microsoft Intune
Microsoft Intuneは、端末の構成管理やポリシー設定に加えて、アプリケーション配布や更新管理も可能な統合管理ツールです。クラウドベースで運用できるため、テレワークなど柔軟な働き方を支援しつつ、セキュリティも確保できます。
従来、WSUSでは困難だった外出先や自宅で利用される端末への更新配布も、Intuneを通じて一元管理が可能です。加えて、条件付きアクセスやデバイスコンプライアンスの設定により、企業ポリシーに沿った、安全な運用を実現できます。
ただし設定項目が多く、初期導入の設計と運用フローの確立には、専門的な知識が求められるため、社内で確実に運用できるか検討しましょう。
Azure Update Manager
Azure Update Managerは、主にサーバーの更新管理を担うクラウドサービスです。ハイブリッド構成に対応しており、オンプレミスとクラウドの両方を運用する企業にとって、有力な選択肢となります。
GUIベースでの操作が可能で、パッチ適用のスケジュール設定や、更新状況の可視化がしやすいのも特徴です。WSUSでは対応が難しかった、多様なOS環境に柔軟に対応できるため、クラウドへの移行を進める企業におすすめです。
一方、利用にはAzureサブスクリプションへの加入が必要なため、コストの算出が複雑になりやすい点は注意しましょう。
WSUSの廃止に備えてクラウド移行の計画を
WSUSの廃止は避けられない流れとなっており、企業はクラウドベースの更新管理への移行を、計画的に進めることが大事です。まずは、自社の環境を詳細に分析し、デバイス構成や更新管理の要件を明確にしましょう。
その上で、Microsoft社が推奨するサービスを中心として、自社に最適なソリューションを選定する必要があります。また、ソフトウェアのバージョン状況や端末の構成管理など、より広範な視点でIT資産を把握するならば、IT資産管理ツールの導入もおすすめです。
数あるIT資産管理ツールの中でも、「Watchy」は詳細なログ管理が可能なサービスで、Windows Updateの更新管理も可能でありながら、シンプルで使いやすい管理画面が特徴です。必要な機能のみ選んで導入できるため、スタートアップや小規模事業にも適しています。
この機会にぜひ、導入をご検討ください。

Watchy編集部
従業員が安心して働ける環境を提供するための、IT資産管理、情報漏洩対策、労務管理に関するコンテンツを発信しています。
Watchyは、株式会社スタメンが運営するクラウドサービスです。企業のIT情報統制の課題やバックオフィスの課題を、情報システム担当者が手薄な状況でも、Watchyが解決。設定・運用の手間を最小化しながら、押さえるべきポイントを確実に押さえた企業統制の実現を支援します。
【株式会社スタメンについて】 東京証券取引所グロース市場上場。Watchy、TUNAGなど、人と組織の課題解決を実現するSaaSを展開。情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)及びプライバシーマークを取得。