IT資産管理と構成管理は、いずれも企業のIT運用の基盤を支える重要な管理手法ですが、役割や視点には明確な違いがあります。両者の関係性を整理するとともに、構成管理の必要性や管理項目、CMDB(構成管理データベース)を活用した管理のポイントなどを解説します。
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目次
IT資産管理と構成管理の関係
IT資産管理と構成管理は密接に関連していますが、それぞれ異なる目的と役割を持っています。両者の違いを理解することで、自社のIT環境に適した管理体制の構築につながります。まずは、それぞれの管理手法の特徴を理解しておきましょう。
IT資産管理の目的と管理の範囲
IT資産管理は、企業が保有するIT資産を正確に把握し、コストの最適化やセキュリティリスクの低減を図る取り組みです。管理対象となるのは、パソコンやサーバー、ネットワーク機器といった物理的な機器だけでなく、ソフトウェアライセンスやクラウドサービスの情報も含まれます。
IT資産管理は「何をどれだけ保有し、誰がどのように使っているか」を明らかにするのが目的であり、調達から廃棄までのライフサイクル管理を重視するのが特徴です。
これにより無駄な資産の購入を抑止するとともに、ライセンス違反の防止や棚卸し業務の効率化が可能になります。
構成管理の考え方と管理対象
構成管理は、ITシステムを構成する要素と、それらの関係性を体系的に管理する手法です。単に資産の保有状況を記録するだけではなく、各要素がどのように連携し、どのような依存関係にあるかを可視化することに重点を置いています。
管理対象には、ハードウェアやソフトウェアの構成情報に加えて、ネットワークの構成やサーバー間の通信関係、アプリケーションとデータベースの接続関係などが含まれます。さらにシステムの変更履歴なども、重要な管理項目です。
構成管理で重要なのは、IT資産の情報自体よりも、構成アイテム同士がどのように依存し合っているか、変更によってどこに影響が及ぶかを把握する点にあります。障害対応や変更管理と密接に関係しており、安定したITサービスを運用するための基盤となります。
IT資産管理と構成管理の違い
IT資産管理と構成管理の大きな違いは、管理の目的とライフサイクルの捉え方にあります。
IT資産管理は、IT機器やソフトウェアなどを、資産(所有物)の観点から捉えるのが特徴です。主に調達から廃棄までのコストの最適化やライセンスの順守、財務報告といったガバナンスと、コンプライアンスの維持を目的としています。
そのため管理項目は、購入日・価格・設置場所・契約期間・ライセンス数といったように、財務・契約情報が中心です。
一方、構成管理は、ITサービスを支える各要素(CI:構成アイテム)の技術的な状態と、相互関係に焦点を当てた取り組みです。システムのバージョンや他のシステムとの関係、変更履歴などを把握し、サービスの安定稼働と変更作業の安全性の向上を目的としています。
両者は互いに補完し合う関係にあり、IT資産管理で把握した資産情報を基盤として、構成管理でより詳細な運用管理を実現するといった流れが理想的です。
IT資産管理に構成管理が求められる背景
従来のIT資産管理は、保有状況やコスト把握を中心とした管理手法でした。しかし近年は、IT環境の複雑化や運用要件の高度化により、資産情報だけでは十分な判断ができない場面が増えています。
こうした状況から、資産の「使われ方」や「関係性」を把握するために、構成管理の重要性が高まっています。IT資産管理に構成管理が必要とされる背景について、詳しく見ていきましょう。
IT環境の複雑化と資産管理の限界
近年のIT環境は、オンプレミスに加えて、クラウドサービスやSaaSを組み合わせた構成が一般的となり、システム全体の構造が複雑化しています。仮想サーバーやクラウドリソースは柔軟に増減できる半面、構成の変化が頻繁に発生します。
このような環境では、台帳ベースのIT資産管理だけでは、最新の利用状況を正確に把握するのは困難です。資産として登録されていても、実際にどのシステムで利用されているのか、現在の稼働状況はどうかといった情報が不足しがちです。
そこで構成管理を取り入れることで、変化を前提とした管理が可能となり、実態に即したIT資産の把握につながります。
障害対応・セキュリティ対応の強化
システム障害やセキュリティインシデントが発生した際には、影響範囲を迅速に特定することが重要です。IT資産管理では、対象の機器やソフトウェアの一覧は把握できても、どの業務システムやサービスに影響を与えるか、即座に判断するのは容易ではありません。
一方、構成管理では、システム間の依存関係や接続情報を管理できるため、障害時に効率的な影響分析が可能です。
さらに脆弱性情報が公開された際にも、該当する構成要素を特定し、優先度を付けた対応計画を策定できます。重要なシステムへのリスクを最小限に抑えつつ、迅速かつ的確なパッチの適用や設定変更が可能になります。
システムの運用効率の改善
システムの変更作業や、新規導入時の影響分析が容易になるのも、構成管理が必要とされる理由の一つです。新しいアプリケーションを導入する際、既存システムとの互換性や依存関係を事前に確認できるため、導入後のトラブルを未然に防げます。
また、システムの変更履歴が記録されていることで、変更前の状態に戻す必要が生じた際にも、迅速なロールバックが可能です。復旧作業にかかる時間や担当者の負担が軽減され、運用業務の属人化防止や作業品質の安定化にもつながります。
構成管理の具体的な管理項目
構成管理を効果的に実施するためには、適切な管理項目を定義することが重要です。管理項目が不足していると必要な情報が得られず、逆に過剰であれば管理の負担が増大します。構成管理で押さえるべき主要な管理項目について、カテゴリ別に確認していきましょう。
ハードウェア・ソフトウェアの構成情報
構成管理における基本的な管理項目として、ハードウェアとソフトウェアの構成情報があります。ハードウェアでは、サーバーやネットワーク機器などの種別や性能情報に加えて、設置場所や利用目的、稼働状況といった運用に関わる情報が重要です。
ソフトウェアに関しても、アプリケーションの名称やバージョンだけではなく、インストールの場所や、どの業務システムで使用されているかといった情報を管理します。
さらに、ソフトウェアの設定情報やパラメータも管理対象に含めることで、トラブル発生時の原因究明や設定の復元が容易になるでしょう。
これらの情報を整理することで、更新作業や障害調査の際、影響範囲を把握しやすくなります。作業の手戻りや判断ミスを防ぎつつ、システム運用の安定性・効率性も向上します。
ネットワーク・クラウド環境の構成情報
ネットワーク構成に関しては、物理的な接続構成だけではなく、論理的なネットワーク設計も管理対象です。ルーターやスイッチの設定情報やVLANの構成、IPアドレスの割り当て状況、ファイアウォールのルール設定などを記録しましょう。
ネットワーク機器間の接続関係を図式化して管理すれば、ネットワーク障害時の影響範囲の把握や、変更作業時の効率的な影響分析が可能になります。
クラウド環境では、利用しているクラウドサービスの種類、契約プラン、利用リージョン、仮想ネットワークの構成といった情報も管理対象となります。クラウドリソースは容易に変更(追加・削除)できるので、構成が頻繁に変わります。この結果、構成情報を常に最新に保つ仕組みが不可欠です。
依存関係・変更履歴の管理
システム間の依存関係は、構成管理において重要な管理項目の一つです。アプリケーションがどのデータベースに接続しているか、どのAPIを利用しているか、どのサーバーやサービスと通信しているかといった情報を詳細に記録しましょう。
依存関係が可視化されることで、一つのシステムを変更した際、影響を受ける他のシステムを事前に特定でき、計画的な変更作業が可能になります。さらに変更の承認プロセスや作業手順書とのひも付けもすることで、ガバナンスの強化につながります。
構成管理の方法と使用されるツール
構成管理は、表計算ソフトや文書による管理から始められる場合もありますが、管理対象が増えるにつれて、情報の更新や整合性の維持が難しくなります。特に構成情報は頻繁に変更されるため、手動での管理では、いずれ限界が訪れるでしょう。
そこで、構成管理の専用ツールやITサービス管理ツールなどを活用し、構成情報を一元的に管理する方法が一般的です。自動収集機能や変更履歴の管理機能を備えたツールを導入することで、IT資産管理と連携しつつ、最新かつ正確な構成情報を維持できるようになります。
構成管理データベース(CMDB)とは?
構成管理データベース(CMDB)は、IT環境における構成情報を一元的に管理するためのデータベースです。
単なる資産台帳とは異なり、各構成要素の詳細情報と相互の関係性を体系的に記録し、システム全体の構成を可視化します。CMDBの役割や活用メリット、運用上の注意点に関しても、ここで理解しておきましょう。
CMDBの役割
CMDBは、IT環境を構成するあらゆる要素をCI(構成アイテム)として定義し、それらの関係性を一元管理する役割を持つデータベースです。ハードウェアやソフトウェアをはじめ、ドキュメントや契約情報、担当者情報などもアイテムとして扱うのが特徴です。
これらの構成アイテム間の関係性を記録し、システム全体の構成を俯瞰的に把握することで、障害発生時の影響範囲の特定や、変更作業に伴うリスク評価が可能になります。これによりインシデント管理や変更管理といった、運用プロセスの判断精度の向上に寄与します。
CMDBを構築・活用するメリット
CMDBを導入することで、障害の発生時に影響を受けるシステムや、サービスを即座に把握できるため、迅速な原因の特定と復旧が可能になります。構成要素間の依存関係が明確に記録されていれば、どのサーバーやミドルウェアが影響を受けているのか、正確に特定できるようになるでしょう。
さらに、システムの変更作業の前にCMDBを参照することで、影響を受ける可能性のあるシステムを洗い出し、事前にリスクを評価できるのもメリットです。使用されていない資産や重複した機能なども可視化できるため、IT資産の最適化やコストの削減にもつながります。
CMDBを運用する際の注意点
CMDBの運用では、定期的に構成情報の更新が必要です。情報が古くなったり不正確だったりすると、判断の根拠として使えなくなり、次第に活用されなくなる可能性があります。
定期的な更新ルールを定めるとともに、自動収集ツールなどを活用して、手作業による更新の負担を軽減しましょう。
また、CMDBに登録する情報の粒度や範囲も、適切に設定しなければいけません。必要以上に詳細な情報まで管理しようとすると、更新作業が負担となり、結果的にデータのメンテナンスが追いつかなくなるケースも考えられます。
自社の管理目的に沿って、本当に必要な情報に絞ることも重要です。管理対象は段階的に拡大しつつ、重要度の高い構成要素から、優先的に整備していくのが現実的でしょう。
CMDBを構築するシステムを選ぶ際のポイント
CMDBを構築するシステムを選定する際には、自社のIT環境や運用体制に適しているか、きちんと確認しましょう。既存のITサービス管理ツールや、資産管理ツールなどと連携できる仕組みがあれば、手作業による入力を減らし、情報を最新の状態で維持しやすくなります。
また、ネットワーク機器やサーバー、クラウド環境の情報を自動的に収集できる機能があれば、日々の管理負担を抑えられます。また、構成アイテムの種類や管理項目を自社の要件に合わせて調整できる柔軟性や、構成要素間の関係を可視化できる機能も重要です。
加えて、ベンダーの導入実績やサポート体制、将来的な拡張性などを含めて、自社に合ったシステムを慎重に選択する必要があります。
IT資産管理・構成管理の重要性を理解する
IT資産管理と構成管理は、それぞれ異なる視点からIT環境を管理する手法ですが、両者を組み合わせることで、より高度で効果的な管理体制を構築できます。
複雑化するIT環境において、単にIT資産の状況を把握するだけでは、障害の対応やセキュリティ対策、運用効率の改善などに十分に生かせません。構成管理の考え方を導入し、CMDBなども活用することで、システム間の依存関係を可視化でき、迅速な障害対応が可能になります。
両者を一体として捉え、継続的な運用と改善を重ねることで、社内のITガバナンスを強化するとともに、安定したIT基盤を構築しましょう。
Watchy編集部
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