業務のデジタル化が進む現代において、IT資産の適切な管理は、事業継続と競争力維持のために必要な要素です。IT資産管理の必要性や提案書作成のポイント、説得力のある提案書を作成するコツまで、実践的なノウハウを紹介します。ぜひ参考にしてください。

IT資産管理の目的と重要性

IT資産管理は、企業が所有するハードウエアやソフトウエア、ライセンスなどの資産を適切に把握・管理し、リスクの低減やコスト最適化を図るための重要な業務です。多くの企業は以下の目的のため、IT資産管理の体制を整え、継続的な運用と改善に取り組んでいます。

コンプライアンスの順守と違反対策

ソフトウエアのライセンスの不正利用や、契約違反といった法令違反のリスクを低減するため、IT資産管理に注力する企業は多くあります。

コンプライアンスの順守は、現代企業にとって避けて通れない責務であり、特にIT資産に関する法規制は年々厳格化している状況です。ライセンス違反は著作権法違反となり、高額な罰金や企業イメージの低下を招くリスクがあります。

そこで、ソフトウエアの正規ライセンスや、セキュリティパッチの管理に注力する企業が増えています。IT資産管理システムを導入することで、コンプライアンスの状況を継続的にモニタリングし、証跡を残すことが可能です。

情報セキュリティの強化

セキュリティ対策の第一歩は、どの資産がどこに存在し、どのように使われているか正確に把握することです。IT資産管理により、不要なソフトウエアや不正な接続を排除し、脆弱性のある機器を早期に発見できます。

また紛失や盗難の際にも迅速な対応が可能になり、被害の拡大を防げるため、社員の出張が多い企業や、テレワークを実施している企業にとっても欠かせません。IT資産の使用状況を常に記録・監視することで、不正アクセスや情報漏洩の兆候を、早期に察知できる仕組みも構築できます。

資産管理コストの削減

IT資産の状況を正確に把握することで、無駄なツールの購入や、保守契約の重複などを防げます。例えば、使われていないライセンスや不要なデバイスを洗い出すことで、利用契約を見直す余地も生まれるでしょう。

また、機器の更新時期を把握しておけば、トラブルによる突発的なコストも抑えられます。IT資産管理は、単なるコストの削減にとどまらず、費用対効果の高いIT投資を実現するための基盤となります。

IT資産管理の提案をする際のポイント

IT資産管理の導入を提案する際には、現状の課題を的確に把握し、管理対象の明確化や導入効果を具体的に提示することが重要です。以下のポイントを意識しつつ、納得感のある提案ができるようにしましょう。

IT資産に関する現状の課題を把握する

経営層や関係部門に対し、IT資産管理に関する提案をする際には、まず現状の資産管理にどのような課題があるのか、きちんと整理する必要があります。

例えば、台帳が手作業で更新されていたり、どの端末にどのソフトウエアがインストールされているか不明だったりするケースは、多くの企業が抱える課題です。現場担当者へのヒアリングや現状の管理フローの可視化を通じて課題を把握し、客観的なデータとともに提案書に盛り込むと効果的です。

管理すべき対象となる資産を明確にする

IT資産は、PCやサーバーといったハードウエアだけではなく、ソフトウエアとライセンス情報、クラウドサービスの利用状況なども含まれます。提案時には、どの資産を対象とするのか明確にし、それぞれの管理目的を説明できるようにしましょう。

例えば、ライセンスはコンプライアンスの観点、ハードウエアはコスト管理の観点から、重要性を訴えると効果的です。

導入効果(業務効率化やコスト削減など)を提示する

提案書では、IT資産管理の導入によって得られる具体的な効果を、数値や事例を交えて分かりやすく説明することが大事です。

資産棚卸ろし作業の工数削減やライセンス費用の最適化、セキュリティリスクの低減など、経営層がメリットを実感できるポイントを強調しましょう。実際の業務改善イメージや将来的なコストの削減効果などを示すことで、経営層や関係部門に導入の必要性をより強く訴求できます。

IT資産管理の提案書の作り方

IT資産管理の提案書は、経営層や関係部門に導入の必要性や、メリットを理解してもらうための重要な資料です。以下のように提案書には、導入の目的や現状分析・具体的な提案内容に加えて、費用対効果や導入計画、リスクとその対策など、さまざまな要素を盛り込む必要があります。

提案書に盛り込むべき内容

提案書には、まず全体の概要と導入目的を簡潔に記載し、次に現状分析で自社の課題やリスクを明確にしましょう。その上で、具体的な提案内容(管理方法やシステム導入の有無など)を記載し、導入コストとROI(投資対効果)を算出して費用対効果を示すと効果的です。

さらに、導入スケジュールや運用体制、想定されるリスクとその対策も盛り込み、実現性や安全性をアピールする必要があります。これらの情報を体系的にまとめることで、経営層や関係部門の納得感を高められます。

提案職の基本的な構成

IT資産管理の提案書は、読み手が内容をスムーズに理解・判断できるように、きちんと構成を整えましょう。以下の項目を軸に組み立てることで、論理的で説得力のある提案書を作成できます。

  • 表紙・基本情報:提案書のタイトル・提出日・作成者(部署・担当者名)を記載
  • 提案の背景と目的:なぜIT資産管理が必要なのか、抱えている課題やその背景を示す
  • 現状分析: IT資産の管理状況、不備やリスクの所在、コストの課題などを整理する
  • 提案内容:導入を検討している管理手法やツール、管理体制の構築案などを説明する
  • 導入スケジュールと体制:システムの選定から運用開始までの流れや、各工程に関与する部門や担当者を明示する
  • 費用対効果(ROI):導入・運用のコストを提示し、それによって得られる効果を数値で示す
  • リスクと対応策:想定されるリスクと、その対処法・予防策を明記する
  • まとめ:提案の要点を簡潔に再確認し、承認・検討の次ステップに進んでもらうためのアクションを示す

さらに付録として、技術的な詳細情報やツールの比較検討に関する資料、参考文献なども添えておくとよいでしょう。

説得力のある提案書を作成するコツ

提案書の内容が適切でも、相手の理解が得られなければ承認は得られません。客観的な裏付けや導入後のイメージを具体化し、読み手にとってのメリットを明確に示す工夫が求められます。以下の点も意識しつつ、説得力のある提案書を作成しましょう。

提案の裏付けをきちんと示す

提案書に説得力を持たせるには、単なる主観や理想論ではなく、客観的な根拠やデータを伴った説明が欠かせません。特に、IT資産管理はコストや運用負担がかかる分野であるため、導入の必要性や効果を数値で示すことが、信頼を得るためのポイントです。

例えば、現状のIT資産に関する棚卸ろしの実績や、過去に発生したインシデントの件数、社内アンケートの結果などを引用し、どのような改善が期待できるかを示しましょう。また、他社の導入事例やベンダーの提供する効果検証データなども、比較材料として有効です。

一方で、数値だけに頼るのではなく、自社の実態に即した具体例や課題を交えて語ることで、導入の必要性に納得感を持たせることも重要です。

導入後の運用フローを具体化する

IT資産管理は、導入したら終わりではありません。実際に運用する段階において、誰がどのように管理業務を担うのか明確でなければ、形骸化する可能性があります。導入後の運用体制や日常的な作業フローについて、提案書の中で具体的に示しておくことが必要です。

まずは、IT資産管理の運用体制を明確に定義しましょう。その上で、全社的な責任者(資産管理責任者)を設置し、部門ごとに資産管理担当者を配置するのが一般的です。それぞれの役割と責任範囲を明確にし、組織図などを用いて視覚的に示すと効果的です。

また、日常的な運用フローも図式化して示す必要があります。新規機器の導入や社員の入退社、機器の移動・廃棄といった典型的なイベントごとに、必要な手続きと承認フローを明確にしておきましょう。

実践的な提案書でIT資産管理を始めよう

IT資産管理の提案書は、企業の情報資産を守り、効率的な運用を実現するための第一歩です。まずは現状の課題を正確に把握し、管理対象や導入効果を明確にした上で、説得力のある提案書を作成しましょう。

資産管理の必要性だけではなく、組織の経営課題との関連性を明確にし、費用対効果を具体的に示す必要があります。段階的な導入計画や明確な役割分担も提示することで、実現可能性の高い提案として評価されるでしょう。実践的な提案書を通じて、組織全体でIT資産管理の重要性を共有することが大事です。

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執筆者

Watchy編集部

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