情報漏えい事件は、企業の信頼と存続を脅かす重大なリスクです。個人情報や機密情報が流出すれば、顧客離れを招き、法的責任を問われ、賠償金が発生する可能性があります。これにより、株価の下落やブランドイメージの損失が企業に重大な影響を与えることになります。
本記事では、情報漏えい事件の定義や具体例、企業に与える影響、原因と防止策、発生時の対処法について詳しく解説します。
さらに、情報セキュリティポリシーの策定、従業員教育、技術的対策、IT資産管理とログ管理ツールの導入など、企業が取り組むべき包括的な情報セキュリティ対策についても提案していきます。
この機会に自社の情報セキュリティ体制を見直してみましょう。
目次
情報漏えい事件とは?その定義と具体例
情報漏えい事件について理解を深めるために、その定義や個人情報漏えい、企業機密情報漏えい、インサイダー取引につながる情報漏えいの具体例を見ていきましょう。
情報漏えい事件の全体像を把握することが、効果的な対策を講じる第一歩となります。
情報漏えい事件の定義
情報漏えい事件とは、個人情報や企業の機密情報が意図せずに外部に漏洩してしまう事態を指し、個人情報保護法では、個人情報の不正な取得、使用、提供、または個人情報の漏えいが該当します。
情報漏えい事件は、人的ミス、不正アクセス、内部犯行、サイバー攻撃など、様々な原因によって発生します。企業は、情報漏えい事件の定義を正しく理解し、リスクを認識することが重要です。
個人情報漏えい事件の具体例
個人情報漏えい事件の具体例として、従業員のUSBメモリの紛失、不正アクセスによる顧客データの流出、内部犯行による情報の持ち出しなどが挙げられます。
個人情報の漏えいは、顧客の信頼を大きく損ない、企業の評判に深刻な影響を与えます。
また、個人情報保護法違反に該当する場合、行政処分や罰則の対象となる可能性があるため、企業は、個人情報の適切な管理と保護に努める必要があります。
企業機密情報漏えい事件の具体例
企業機密情報漏えい事件の具体例としては、従業員による機密情報の持ち出しや、サイバー攻撃による機密情報の窃取などがあります。
企業の競争力の源泉である技術情報、営業情報、経営戦略などの機密情報が漏えいすれば、競合他社に利用されるリスクが生じ、最終的には企業の競争力を失う危険があります。
また、機密情報の漏えいは、取引先や顧客からの信頼を失う原因にもなります。企業は、機密情報の管理体制を強化し、不正な持ち出しやアクセスを防ぐ必要があります。
インサイダー取引につながる情報漏えい事件の具体例
インサイダー取引につながる情報漏えい事件の具体例としては、上場企業の役員や従業員が、未公表の重要情報を第三者に漏らし、その情報を利用して株式の売買を行うことなどが挙げられます。
インサイダー取引は、金融商品取引法違反であり、厳しい処罰の対象となります。また、インサイダー取引が発覚した場合、企業の信用は大きく失墜し、株価に深刻な影響を与えます。企業は、未公表の重要情報の管理を徹底し、インサイダー取引の防止に努めなければなりません。
情報漏えい事件が企業に与える影響
情報漏えい事件が発生した場合、企業は様々な影響を受けます。顧客からの信頼喪失、ブランドイメージの低下、法的責任と賠償金の発生、株価下落と企業価値の毀損など、その影響は多岐にわたります。
ここでは、情報漏えい事件が企業に与える主な影響について詳しく解説します。
顧客からの信頼喪失
情報漏えい事件が発生すると、顧客からの信頼が大きく損なわれます。特に、顧客の個人情報や取引情報が漏えいした場合、顧客は企業に対する信頼を失い、他社へ乗り換えるなどの行動を取る可能性があります。
顧客の信頼を取り戻すためには、事件の原因究明と再発防止策の実施、誠実な顧客対応が不可欠です。信頼回復には長い時間を要するため、企業は情報漏えい事件の防止に全力で取り組む必要があります。
ブランドイメージの低下
情報漏えい事件は、企業のブランドイメージを大きく低下させます。事件が公になると、メディアで大きく取り上げられ、ネガティブな報道が続くことで、企業の評判が悪化します。ブランドイメージの低下は、顧客離れや売上減少につながるリスクがあります。
また、優秀な人材の確保や取引先との関係維持にも影響を与える可能性があります。企業は、情報漏えい事件の防止とともに、危機管理体制の整備に努める必要があります。
法的責任と賠償金の発生
情報漏えい事件が発生した場合、企業は法的責任を問われる可能性があり、個人情報保護法違反に該当する場合、行政処分や罰則の対象となります。
また、漏えいした情報の本人から損害賠償請求を受ける可能性もあります。賠償金の支払いは、企業の財務に大きな負担となります。さらに、訴訟対応に伴う弁護士費用や人的コストも発生します。
企業は、法令遵守の徹底と適切な情報管理により、法的リスクを最小限に抑える必要があります。
株価下落と企業価値の毀損
情報漏えい事件が発生すると、株価が下落し、企業価値が毀損されるリスクがあります。事件の規模や影響度によっては、長期的な業績悪化につながる可能性もあります。
株価下落は、投資家の信頼を失うだけでなく、資金調達力の低下や敵対的買収のリスクにもつながります。
また、企業価値の毀損は、ブランド力の低下や人材流出など、様々な悪影響を及ぼします。企業は、情報漏えい事件の防止と迅速な対応により、株価と企業価値への影響を最小限に抑えなければなりません。
情報漏えい事件が起こる原因と防止策
情報漏えい事件が起こる原因には、人的要因、技術的要因、物理的要因、組織的要因など、様々なものがあります。それぞれの要因に応じた防止策を講じることが、情報漏えい事件のリスクを最小限に抑えるために不可欠です。
ここでは、情報漏えい事件の主な原因と、その防止策について解説します。
人的要因による情報漏えいとその防止策
人的要因による情報漏えいには、従業員のうっかりミスや故意による情報持ち出しなどがあります。メールの誤送信、USBメモリの紛失、不適切な情報共有など、人的ミスが原因となるケースが少なくありません。
また、不正な情報持ち出しや内部犯行も深刻な問題です。防止策としては、従業員教育の徹底、アクセス権限の管理、モニタリングの実施などが重要です。情報セキュリティに関する定期的な研修や、機密情報へのアクセス制限、ログの監視などにより、人的要因によるリスクを軽減することができます。
技術的要因による情報漏えいとその防止策
技術的要因による情報漏えいには、不正アクセスやマルウェア感染などがあります。サイバー攻撃者が、システムの脆弱性を突いて不正にアクセスしたり、マルウェアに感染させたりすることで、情報を窃取するケースが増加しています。
防止策としては、ファイアウォールやウイルス対策ソフトの導入、脆弱性対策の実施、暗号化の適用などが重要です。定期的なセキュリティパッチの適用や、強固な認証システムの導入、重要データの暗号化などにより、技術的要因によるリスクを軽減することができます。
物理的要因による情報漏えいとその防止策
物理的要因による情報漏えいには、機器の紛失や盗難、災害による情報の消失などがあります。ノートPCやUSBメモリなどの可搬媒体の紛失、オフィスへの不正侵入による情報の盗難、火災や水害による情報の消失など、物理的な脅威も看過できません。
防止策としては、施設の入退室管理、機器の施錠保管、バックアップの実施などが重要です。セキュリティゲートの設置や、重要な機器の施錠保管、定期的なバックアップの取得などにより、物理的要因によるリスクを軽減することができます。
組織的要因による情報漏えいとその防止策
組織的要因による情報漏えいには、情報管理体制の不備や委託先の管理不足などがあります。情報セキュリティポリシーの未整備、役割と責任の不明確さ、委託先の安全管理措置の不徹底など、組織的な問題が情報漏えいを招くことがあります。
防止策としては、情報セキュリティポリシーの策定、委託先の管理徹底、監査の実施などが重要です。経営層のリーダーシップのもと、全社的な情報セキュリティ体制を整備し、PDCAサイクルを回して継続的に改善することが求められます。
情報漏えい事件発生時の適切な対処法
万が一、情報漏えい事件が発生した場合、企業は速やかに適切な対処を行う必要があります。初動対応の遅れや不適切な対応は、被害を拡大させ、企業の信頼を大きく損ねる可能性があります。
ここでは、情報漏えい事件発生時の適切な対処法について、初動対応から信頼回復に向けた取り組みまで、詳しく解説します。
情報漏えい事件発生時の初動対応
情報漏えい事件が発生した際は、速やかに事実確認を行い、被害の拡大を防ぐ必要があります。情報漏えいの発生を確認したら、直ちに経営層へ報告し、対策本部を設置します。併せて、関係部署との連携を図り、社外への公表の要否を検討します。
初動対応の遅れは、被害を拡大させるだけでなく、企業の危機管理能力に対する信頼を失うことにもつながります。平時から、情報漏えい事件を想定した緊急時対応計画を策定し、定期的な訓練を行うことが重要です。
情報漏えい事件の公表と顧客対応
情報漏えい事件が発生した場合、事実関係を正確に公表し、顧客に対して誠意を持って対応することが重要です。公表の時期や方法については、関係機関との調整を図りつつ、適切に判断する必要があります。
個人情報が漏えいした場合は、本人への連絡と謝罪、二次被害の防止策の提供などが必要です。顧客からの問い合わせには、真摯に対応し、再発防止に向けた取り組みを丁寧に説明することが求められます。企業は、危機管理広報の体制を整備し、迅速かつ適切な情報発信に努めなければなりません。
情報漏えい事件の原因究明と再発防止策の実施
情報漏えい事件の原因を徹底的に究明し、再発防止策を講じることが重要です。原因究明には、技術的対策、人的対策、物理的対策、組織的対策など、多角的な視点が必要です。
外部の専門家の助言を得ながら、客観的な事実関係の把握に努めます。
原因究明の結果を踏まえ、再発防止策を立案し、速やかに実施することが求められます。再発防止策には、セキュリティ対策の強化、従業員教育の徹底、情報管理体制の見直しなどが含まれます。企業は、再発防止策の実施状況を定期的にモニタリングし、継続的な改善を図る必要があります。
情報漏えい事件後の信頼回復に向けた取り組み
情報漏えい事件後は、信頼回復に向けた取り組みが重要です。再発防止策の実施状況を適切に公表し、顧客や社会からの信頼を取り戻すための活動を継続的に行います。
具体的には、セキュリティ対策の強化、従業員教育の徹底、情報管理体制の見直しなどの取り組みを、ステークホルダーに丁寧に説明することが求められます。
また、事件の反省を踏まえた企業文化の改革や、社会貢献活動などを通じて、企業の姿勢を示すことも重要です。信頼回復には長い時間を要しますが、誠実な対応を続けることで、徐々に信頼を取り戻すことができます。
企業が取り組むべき情報セキュリティ対策
情報漏えい事件を防ぐためには、企業が包括的な情報セキュリティ対策に取り組む必要があります。
ここでは、情報セキュリティポリシーの策定、従業員教育、技術的対策、IT資産管理とログ管理ツールの導入、情報セキュリティ監査など、企業が取り組むべき主な対策について解説します。
情報セキュリティポリシーの策定と従業員教育
企業は、情報セキュリティポリシーを策定し、全従業員に周知徹底する必要があります。情報セキュリティポリシーは、情報資産の保護に関する基本方針や、従業員が遵守すべき規則を定めたものです。
ポリシーの策定に当たっては、経営層の関与が不可欠です。また、定期的な従業員教育を実施し、情報セキュリティに対する意識を高めることが重要です。
教育内容には、情報セキュリティポリシーの解説、情報漏えい事件の事例紹介、セキュリティ対策の実践方法などを盛り込みます。
情報セキュリティポリシーの策定について、詳細を知りたい方は下記の資料を参考にしてみてください。
参考資料:「情報セキュリティーポリシー」とは? - Watchy(ウォッチー)
アクセス制御と暗号化による技術的対策
情報漏えい事件を防ぐためには、アクセス制御と暗号化による技術的対策が欠かせません。アクセス制御とは、情報資産へのアクセスを必要な者に限定し、不正アクセスを防ぐための仕組みです。ユーザーIDとパスワードによる認証、アクセス権限の設定、ネットワークの分離などが含まれます。
また、重要な情報を暗号化することで、万が一情報が漏えいしても、その内容を保護することができます。暗号化の対象には、ファイルやフォルダ、メール、データベースなどがあります。企業は、アクセス制御と暗号化を適切に組み合わせ、技術的対策を強化する必要があります。
IT資産管理とログ管理ツールの導入
IT資産管理とログ管理は、情報セキュリティ対策の基本です。IT資産管理とは、企業が保有するハードウェアやソフトウェア、データなどのIT資産を一元的に管理することです。IT資産の所在や状態を把握することで、紛失や盗難、不正使用のリスクを軽減できます。
また、ログ管理とは、システムやアプリケーションのログを収集・分析し、不審な動きを検知する取り組みです。ログを監視することで、不正アクセスやデータ漏えいなどの兆候を早期に発見し、対処することができます。
ここで、効率的なログ管理を実現するツールとして、Watchy(ウォッチー)を紹介します。
Watchyは、ログの収集・分析からIT資産管理まで網羅でき、直感的な操作性と必要な機能だけを選んで導入・運用できるコストパフォーマンスを兼ね備えています。
中小企業から大企業まで、組織規模に応じたスケーラブルな構成が可能で、情シスでなくとも簡単に設定できる管理画面が特徴です。PC1台・1機能100円からリーズナブルに利用できるので、この機会に導入をご検討ください。
Watchy(ウォッチー) - クラウド型IT資産管理・ログ管理ツール
情報セキュリティ監査の実施と継続的改善
情報セキュリティ対策の実効性を確保するためには、定期的な監査が重要です。
情報セキュリティ監査とは、情報セキュリティ対策の適切性や有効性を評価し、改善点を明らかにするための活動です。監査の対象には、情報セキュリティポリシーの運用状況、技術的対策の実施状況、従業員の意識レベルなどが含まれます。
監査で発見された課題を踏まえ、PDCAサイクルを回して継続的に改善を図ることが求められます。
また、監査結果を経営層に報告し、情報セキュリティ対策の重要性を認識してもらうことも重要です。
企業は、情報セキュリティ監査を通じて、対策の形骸化を防ぎ、実効性を高めていく必要があります。
情報漏えい事件から企業を守るために - 包括的な情報セキュリティ対策の重要性
情報漏えい事件から企業を守るためには、経営層のリーダーシップのもと、全従業員が一丸となって情報セキュリティ対策に取り組むことが重要です。
人的対策、技術的対策、物理的対策、組織的対策を多層的に組み合わせ、PDCAサイクルを回して継続的に改善することが求められます。
情報セキュリティ対策は企業の信頼と存続に直結する重要な経営課題であり、その重要性を認識して包括的な対策を講じることが、情報漏えい事件のリスクを最小限に抑えることにつながります。
企業には、情報セキュリティ対策への投資を惜しまず、全社一丸となって取り組む姿勢が求められます。
本記事を通じて、情報漏えい事件の脅威と対策の重要性を理解いただき、自社の情報セキュリティ体制の見直しと強化に役立てていただければ幸いです。

Watchy編集部
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