ISMS認証は情報セキュリティマネジメントシステムを構築したことを統一的に証明する標準です。企業にとってはセキュリティの向上や信頼性の向上に繋がる一方、費用や時間がかかるのも事実です。認証を得るにあたっては、実際にどの程度の費用が必要になるのでしょうか?

本記事では、ISMS認証取得の意義や費用の内訳、そして費用を抑える方法について解説します。

ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)とは

ISMSは、企業が持つ情報資産を守るためのフレームワークであり、信頼性や安全性を高める重要な取り組みです。このセクションでは、ISMSの基本的な概念やその目的、企業に与える影響について詳しく解説します。

ISMSの概要と目的

ISMSとは「Information Security Management System」の略称で、日本語では「情報セキュリティマネジメントシステム」と呼ばれます。

その意味は情報セキュリティのためのさまざまな対策に加え、その計画や運用といったマネジメントまでを含んだ仕組み(システム)のことです。

情報の機密性・完全性・可用性の3つのセキュリティ要素を一定の水準で維持し、改善し続けるサイクルそのものを指します。

ISMS認証取得のメリット

ISMS認証を取得することで、企業には以下のようなメリットがあります。

まず、ISMSの取得に際して情報セキュリティ方針の策定や従業員の教育が求められるため、組織全体のセキュリティ意識が向上します。

次に、ISMSは第三者機関が審査・認証するため、客観的な基準で厳しい要件をクリアしたセキュリティ体制を構築していることを、取引先や顧客に対しアピールできます。その結果、企業としての信頼性が向上し、新規顧客の開拓などにつながることもあるでしょう。また、官公庁や自治体の入札条件には、ISMSの取得が条件になっていることもあります。

中小企業にとって、新規株式公開(IPO)を目指す際には、セキュリティ体制の整備が重要な要件となり得ます。情報漏洩をはじめとしたセキュリティに関するインシデントが発生した場合、IPOの延期や中止の懸念も生まれます。IPOにとってISMSの取得は必ずしも必要ではありませんが、上場に向けたセキュリティ体制の構築につなげることは可能です。

ISMSには、上記のようにセキュリティに関するさまざまなメリットがあります。

ISMSとISO27001の違い

ISO27001は、国際標準化機構(ISO)が定めたセキュリティに関する国際規格です。一方でISMSは上述したように、セキュリティ水準を保つためのシステムを指します。

ISMSというシステムを構築するために満たさなければならない要件がISO27001です。規格はISO27001以外にもクラウドセキュリティに限定した「ISO27017」などがあります。

ISMS認証取得にかかる費用の内訳

ISMS認証取得には、審査費用やコンサル費用などがかかります。それぞれにどの程度の費用が掛かるか、相場を紹介します。

審査費用の詳細

審査費用には、新規に取得するための初回審査費用と、継続して認証を得るための維持審査費用、3年に1度の更新審査費用がかかります。初回審査費用の方が比較的高額です。ここでは初回審査の費用について見ていきましょう。

審査費用の相場は、以下の要件によって異なります。

  • 審査機関
  • 業種
  • 拠点数
  • 従業員数

初回審査費用の相場としては、50万〜130万円程度かかります。

コンサルティング費用の相場

自社のリソースのみで認証取得が難しい場合、コンサルティングを活用して取得を目指すことも可能です。

コンサルティングの費用については、コンサルティングにどこまで介入してもらうかによって変わります。アドバイスを求めるだけならそれほど高額ではありませんが、システムの構築や運用サポートまで求める場合は高額になります。

コンサルティングの費用についても、業種や拠点数、従業員数に加えてどこまで加入してもらうかで

変わりますが、アドバイスのみなら年間30~50万円程度、運用のサポートまで行ってもらう場合は100万円以上かかることもあります。

ISMS認証取得後の維持・更新にかかる費用

続いては、ISMSを取得した後の維持・更新にかかる費用を紹介します。維持費用は毎年、更新費用は3年ごとにそれぞれ費用がかかります。

維持審査と更新審査の費用

維持審査は1年に1回、更新審査は3年に1回のペースで行われます。一般的には維持審査の費用が50万円ほど、更新審査の費用が60〜70万円程となります。

費用は審査機関によっても異なるため、あらかじめ複数社から見積もりをとると良いでしょう。

内部監査とセキュリティ対策の費用

ISMSを取得した後は、セキュリティレベルを維持し続けなければ認証を保持し続けることができません。そのため、セキュリティ対策ツールのライセンス費用やセキュリティ担当者の人件費は必要経費となります。

また、ISMSの維持・更新審査を受けるためには、内部監査の記録の提出が求められます。そのため、内部監査にかかる費用も毎年発生します。

上記は事業規模やセキュリティ体制にもよって異なるため具体的な金額を述べることは難しいですが、毎月数万円から数十万円の費用は想定する必要があるでしょう。

ISMS認証取得費用を抑えるためのポイント

ISMS認証取得費用は決して低くはありません。少しでも費用を抑える方法について以下で解説します。

複数の審査機関からの見積もり取得

審査機関やコンサルティング会社によって費用は異なります。そのため、どちらもまずは複数社から見積もりをとることをおすすめします。

特に、審査員の宿泊費や交通費については、審査機関によって差が出やすい点なのでチェックしておくと良いでしょう。コンサルティング会社についても、料金以外にサポート体制や業務範囲も加味して総合的な判断を下すことがポイントです。

補助金・助成金の活用方法

補助金や助成金制度を利用できる自治体もあります。例えば東京都港区では、補助対象経費(消費税別)の1/2、上限50万円までの補助金を受け取ることができます。

自治体によって、対象範囲や事業者の条件は異なりますので、あらかじめ自治体に問い合わせてみてください。

参考:ISO等取得支援事業補助金 - 港区立産業振興センター

ISMS認証取得でセキュリティ水準を上げる

ISMSの取得により、企業はさまざまなメリットを享受することが可能です。特に、セキュリティ水準を上げられることは、セキュリティインシデントに課題を抱えている企業にとっては重要なポイントと言えるのではないでしょうか。

しかしながら、ISMS認証は取得後も維持・更新に費用がかかることも事実です。そのため、企業にとって本当に必要であるかを検討し、取得の際には複数の機関から見積もりを取ったり、自治体の補助金を利用するなどして、費用を少しでも抑えられるよう工夫することをおすすめします。

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執筆者

Watchy編集部

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【株式会社スタメンについて】 東京証券取引所グロース市場上場。Watchy、TUNAGなど、人と組織の課題解決を実現するSaaSを展開。情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)及びプライバシーマークを取得。