適用宣言書は、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)認証のプロセスにおいて中心的な役割を果たします。本記事では、適用宣言書の基本的な役割と作成手順、失敗しないためのポイントを具体的に解説します。

適用宣言書とは何か

適用宣言書は、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)における重要な文書であり、管理策の適用状況を明確にする役割を担います。まずは、適用宣言書の基本的な役割とその必要性について説明します。

適用宣言書の定義と目的

適用宣言書は、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)において、管理策を体系的に整理し、適用する理由を明確化する文書です。

適用宣言書の目的は、企業が情報セキュリティリスクに対応する具体的な管理策を示し、外部の審査員や利害関係者にその適切性を証明することにあります。

適用宣言書が必要な理由

情報セキュリティの水準を上げるためには、組織が直面するリスクを明確にし、それに応じた管理策を選定することが欠かせません。

適用宣言書は、選定された管理策とその理由を文書化することで、審査プロセスを円滑に進める手助けをします。

また、適用宣言書を作成する過程で、リスクアセスメント結果とISO規格の要件の整合性を検証することができます。

その結果、情報セキュリティ体制を強化し、審査プロセスを円滑化することができます。

適用宣言書の作成手順

適用宣言書を効率的かつ正確に作成するには、適切な手順を踏むことが重要です。ここでは、管理策の選定からリスクアセスメントとの連携、除外項目の明確化まで、具体的な作成手順を解説します。

管理策の理解と選定

適用宣言書を作る最初のステップは、情報セキュリティを守るための色々な対策(管理策)を理解し、その中から自分の会社に必要なものを選ぶことです。

この段階では、組織の業務内容やリスクを精査し、必要な管理策を選定する理由を明確化します。

例えば、インターネットを通じて外部から不正にアクセスされるリスクが高い会社であれば、アクセス制御への対策を特に重視する必要があります。

対策を選ぶときには、その対策が本当に効果があるのか、実行可能であるかを、客観的に考えることが重要です。

リスクアセスメントとの連携

適用宣言書の内容は、組織のリスクアセスメントと密接に関連しています。リスクアセスメントでは、組織が直面する脅威とそれに対応する脆弱性を特定し、そのリスクを適切に管理するための優先順位を定めます。

この結果を基に、適用すべき管理策が選定されます。

具体的には、リスク評価で特定された高リスク項目について、どのような管理策を講じるのかを適用宣言書に明記します。

また、リスクが許容可能なレベルに低減された場合には、その理由を説明することも必要です。この連携により、適用宣言書が単なる形式的な文書ではなく、実践的なセキュリティ対策の指針となります。

適用除外項目の明確化

ISO/IEC 27001の付属書Aには、すべての管理策が記載されていますが、すべてを採用する必要はありません。

組織の特性やリスクプロファイルに基づき、適用が不要な管理策を除外する場合があります。この際、適用除外の理由を明確に文書化することが求められます。

例えば、組織が特定の技術やプロセスを使用していない場合、その関連する管理策を適用除外とすることが可能です。

ただし、除外の理由が規格の要求事項を満たしていることを証明する必要があります。適用除外の判断基準が不明瞭であれば、審査で問題となる可能性があるため、慎重な対応が必要です。

適用宣言書作成のポイントと注意点

適用宣言書を作成する際には、以下のポイントと注意点を抑えておきましょう。

適用除外の適切な判断

適用除外を行う際には、慎重な判断が求められます。不適切な除外は、審査プロセスでの指摘や認証取得の妨げとなる可能性があります。

除外する場合は、その理由が組織の事業内容やリスクアセスメント結果と整合していることを明確にする必要があります。

また、適用除外の理由が具体的で客観的に説明可能であることが重要です。たとえば、ある管理策が業務プロセスやインフラと無関係である場合、その具体的な状況を示すことで審査員に納得を得られます。このプロセスを通じて、除外が適切であることを明確に証明できます。

最新規格への対応

ISO規格は定期的に更新されるため、適用宣言書も最新規格に対応するよう見直しを行うことが重要です。

最新の規格要件を反映させることで、審査基準への適合性を確保し、情報セキュリティ体制の信頼性を高めることができます。

また、新たに追加された規定や管理策に対応するためには、定期的な内部レビューと外部情報の確認が必要です。このような見直し作業を計画的に行うことで、企業のセキュリティ方針が規格の進化に対応し続けることが可能となります。

適切な適用宣言書作成でISMS認証取得を目指す

適用宣言書は、組織の情報セキュリティに対する取り組みを示す重要な文書です。その作成を通じて、組織全体のセキュリティ対策を強化する機会ともなります。

適切に作成された適用宣言書は、ISMS認証取得を円滑に進めるとともに、組織の信頼性向上にも寄与します。

この機会に、適用宣言書を戦略的に活用し、堅固な情報セキュリティ体制を築きましょう。

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執筆者

Watchy編集部

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【株式会社スタメンについて】 東京証券取引所グロース市場上場。Watchy、TUNAGなど、人と組織の課題解決を実現するSaaSを展開。情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)及びプライバシーマークを取得。