
テレワークの普及に伴い、従業員が私用端末を業務で使用する機会が増えています。このBYOD(Bring Your Own Device)という概念はデスクレス業務の効率を向上させる一方で、情報漏洩やデバイス紛失といったセキュリティリスクを伴います。本記事では、中小企業が知っておくべきBYOD導入の基本と背景・メリット・リスク、さらに効果的なセキュリティ対策について詳しく解説します。
目次
BYODの基本と導入の背景
テレワークの普及やデジタル化に伴い、従業員個人がスマホやPCを管理することが求められています。その結果、従業員一人一人が企業の重要な情報を扱うことも増え、セキュリティリスクが増加しています。そこで役立つのがBYODです。
BYODとは何か。その基本的な情報についてまずは見ていきましょう。
BYODとは何か
BYODは、企業が従業員の個人所有デバイスを業務に活用する仕組みを指します。従業員は慣れ親しんだデバイスを使用できるため、操作の効率が向上し、柔軟な働き方が実現されます。
また、企業側にとっては、新たなデバイスを購入する必要がなく、コスト削減が期待できます。ただし、個人デバイスでの業務利用には、情報漏洩や不正アクセスといったリスクも伴うため、適切なセキュリティ対策が必須です。
BYODが注目される背景
BYODが注目される背景には、デジタル化の加速への対応が挙げられます。具体的な例としてはペーパーレスです。一昔前であれば、顧客への説明や取引先に持ち込む資料は紙媒体のものでした。しかし現在はメールやクラウドサーバーを使って資料を共有するのが一般的になっています。
他にも、社外でのコミュニケーションや、地域性を問わない働き方への対応など、デジタルデバイスを仕事に活用する機会は圧倒的に増えてきています。
この社会がデジタル化へ移行している情勢そのものが、BYODが注目される理由といえるでしょう。
BYODを導入するメリット
BYODを採用することで、中小企業はコスト削減やシャドーITの防止といった多くのメリットを享受できます。どのようなメリットがあるのかを具体的に解説します。
購入・管理コストの削減
BYODの最大の利点は、企業がデバイス購入や維持にかかるコストを大幅に抑えられる点です。
通常、企業が従業員に端末を貸与する場合、その購入費用に加え、定期的なメンテナンスやアップグレード、さらに故障時の修理対応やサポート終了後の買い替え費用など、多額の出費が必要です。
従業員数が増えるほどこの負担は大きくなり、特に中小企業にとって財政的な課題となります。
しかし、BYODでは従業員自身のデバイスを使用するため、これらのコストを削減できるだけでなく、紛失や破損時の責任が個人に委ねられるため、管理工数費も軽減されます。
このように、コストと管理負担の両面で大きなメリットが得られるのです。
シャドーITを防止する
企業が許可していないデバイスやソフトウェアを従業員が業務で使用するシャドーITは、セキュリティリスクを高める深刻な問題です。
なぜなら、企業の管理が行き届かない個人のデバイスで会社の重要な情報がやりとりされる場合、誰がどのように、そして誰に情報を共有したかが不明確となり、セキュリティインシデントが発生する可能性も高まるとともに、万が一発生した際に、発生源を突き止めることが難しくなるからです。
BYODの導入により、企業によって承認されたデバイスやアプリケーションの使用を促進することで、このリスクを抑えることができます。
業務効率の向上
BYODでは、従業員が日常的に使用しているデバイスを業務にも活用できるため、操作性に優れ、業務効率の向上が期待されます。
新しい端末やソフトウェアの使い方を学ぶ必要がなく、スムーズに業務を進めることが可能です。その結果、社内ヘルプデスクへの問い合わせ件数も減少し、ITサポートにかかる負担が軽減されます。
また、従業員が自身の慣れた環境で作業することで、操作ミスが減ります。結果として、研修にかかるコストやデバイスの操作を習得する時間が減少し、企業全体の効率を底上げする効果ももたらすでしょう。
BYODに伴うセキュリティリスク
BYODの導入は多くのメリットをもたらす一方で、情報漏洩やデバイス紛失といったセキュリティリスクを伴います。どのようなリスクがあるのかを具体的に見ていきましょう。
情報漏洩リスク
BYOD(私用端末の業務利用)は、従業員が自身のデバイスを業務に活用する仕組みですが、企業が直接管理できない部分が生じるため、セキュリティ上のリスクが伴います。
たとえば、端末のソフトウェアが適切に更新されず、脆弱性が放置されるケースが考えられます。
これにより、情報漏洩やサイバー攻撃のリスクが高まり、企業の信用や競争力に深刻なダメージを与える可能性があります。こうしたリスクを回避するには、BYOD導入時に明確なセキュリティポリシーを策定し、適切な対策を実施することが不可欠です。
従業員プライバシー侵害の可能性
BYODのセキュリティ対策として広く導入されているMDM(モバイルデバイス管理)には、従業員のプライバシーを侵害する可能性があります。
MDMは、企業が端末の位置情報や個人情報、さらにはWebの閲覧履歴や利用状況を収集できる機能を持ちますが、これが従業員にとってプライバシー侵害と受け止められてしまうケースが少なくありません。
特に、業務と私生活の両方に使用されるデバイスでは、個人のインターネット検索やアプリ利用が監視対象になる可能性があるため、従業員の不満を招くことがあります。
MDMによる厳格な規制はセキュリティを高める一方で、私用端末に適用することでBYOD本来の柔軟性を損なう場合もあり、この点が課題として挙げられます。
デバイス紛失時のリスク
従業員がデバイスを紛失した場合、データを第三者に閲覧されてしまい、機密情報が外部に流出するリスクがあります。
特に紛失に従業員自身が気付いていない場合や、会社に注意されるのを恐れて報告をしなかった場合などは発覚が遅れて、被害が拡大する可能性も否めません。
中小企業が取るべきBYODセキュリティ対策
BYODの導入において、セキュリティリスクを最小限に抑えるためには、包括的な対策が必要です。ここでは、中小企業が実践すべき具体的な手法を紹介します。
BYODを含む情報セキュリティーポリシーを策定する
まず、企業は明確なBYODポリシーを策定する必要があります。このポリシーには、使用可能なデバイスやアプリケーション、セキュリティ基準、禁止事項などを含めるべきです。
また、ポリシーは従業員に周知され、順守が徹底されるような仕組みを設けることが重要です。
加えて、BYOD以外の情報セキュリティポリシーを策定することも必要になります。情報の管理方法や取り扱い、ミスが発覚したときにどのように対応するのかなどをあらかじめ決めておきましょう。
セキュリティポリシーの策定方法を知りたい場合は、「Watchy(ウォッチー)」が提供している以下のホワイトペーパーを参照してみてください。
管理アプリやセキュリティツールの導入
次に、モバイルデバイス管理(MDM)やセキュリティツールの導入を検討しましょう。
企業はデバイスの利用状況をリアルタイムで監視し、不正アクセスや情報漏洩を未然に防ぐことができます。また、必要に応じてデバイスをリモートロックしたり、データを消去したりする機能も重要です。
従業員の教育
最後に、従業員へのセキュリティ教育を徹底することが不可欠です。
パスワード管理の重要性やフィッシング詐欺への対処法など、基本的なセキュリティ知識を共有することで、人的リスクを大幅に減らすことができます。
定期的なセミナーやトレーニングを実施し、最新のリスクや対策を常に意識させる取り組みも効果的です。情報漏洩に対する一番の対策は、従業員のセキュリティ水準を上げることなので、積極的に取り組みましょう。
BYODの導入はルールの策定が重要
BYODは中小企業にとって大きな可能性を秘めていますが、適切なルールとセキュリティ対策が整っていなければ、そのメリットを十分に活用することはできません。
本記事で紹介した基本的な知識と対策を参考に、自社に合ったポリシーを策定してみてください。
継続的に対策を見直しながら、従業員が安心して働ける環境を構築することが、企業の成功につながります。
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著者情報
Watchy 編集部
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