ISMSは、企業の情報資産を守るための枠組みですが、形だけの運用で「意味がない」といった声も聞かれます。しかし適切に運用すれば、情報漏洩のリスクの低減につながります。ISMSのメリットや、意味のある取り組みにするためのポイントを解説します。

ISMSとは何か

ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)は、企業が保有する情報資産を適切に管理し、セキュリティリスクから守るための包括的な仕組みです。

単なる技術対策だけではなく、組織全体でセキュリティを維持・改善していくための、体系的なマネジメントシステムとして機能します。まずは、ISMSの定義と目的、他のセキュリティ認証との違いを確認しておきましょう。

ISMSの定義と目的

ISMSは組織が保有する情報資産を適切に管理し、機密性・完全性・可用性を維持するための情報セキュリティ管理の枠組みです。情報漏洩や情報の改ざんといったリスクを想定し、未然に防ぐとともに、影響を最小限に抑えるのが目的です。

ISMSではまず、どの情報が重要かを特定し、それに対するリスクを評価しなければいけません。その上で、情報を守るためのルールや対策を決め、きちんと実施されているかを監視します。さらに必要に応じて、ルールや運用方法も改善します。

リスクの洗い出しから、対策の実施・評価・改善までを継続的に進めるとともに、環境や事業内容の変化に応じて適宜見直しをするのも特徴です。これにより、常に現実的なセキュリティ体制を維持できます。

ISMSと他のセキュリティ認証との違い

ISMSと混同されやすいセキュリティ認証として、プライバシーマーク(Pマーク)があります。Pマークは、個人情報保護に特化した国内規格であるのに対し、ISMSは個人情報を含むあらゆる情報資産を対象とした仕組みです。

またSOC2レポートやISMAP認証など、特定の業界・用途に特化したセキュリティ認証も存在しますが、ISMS認証は業種を問わず適用できる汎用性の高さが特徴です。

組織全体または特定の部門・事業所単位で、認証を取得できる柔軟性を持っているのも、ISMS認証の特徴です。

ISMS取得企業数の推移

ISMS(ISO27001)の取得企業数は、近年着実に増加傾向にあります。2002年時点では取得企業数は100社台にとどまっていましたが、情報漏洩事故の増加や社会全体のセキュリティ意識の高まりを背景として、徐々に導入企業が増えています。

2022年には取得企業数が7,000社を超え、2024年12月時点では登録数が8,000社を超えている状況です。この推移からISMSは一時的な流行ではなく、更新を重ねつつ、継続的に運用される仕組みとして定着していることが分かります。

最近では、中小企業でも取引要件や事業継続リスクへの対応を目的として、認証を取得する組織が増えており、導入の裾野は確実に広がっています。

※出典:ISMS認証登録数 8,000件突破のお知らせ - 情報マネジメントシステム認定センター(ISMS-AC)

ISMSを導入するメリット

ISMS認証を取得することで、情報漏洩対策だけではなく、実質的な経営基盤の強化にもつながります。ISMSを導入するメリットについて、具体的に確認しておきましょう。

情報漏洩のリスクを低減できる

ISMSを導入する最大のメリットは、情報漏洩や不正アクセスといったリスクを体系的に低減できる点です。場当たり的な対策ではなく、リスクを洗い出し、優先順位を付けた上で管理策を講じられるため、施策の抜けや漏れが起こりにくくなります。

さらに、定期的な見直しを行うことで、新たな脅威にも対応しやすくなるでしょう。万が一問題が起きた際にも、被害の拡大を防ぐ体制づくりにつながります。

取引先からの信用を得られる

ISMS認証の取得は、企業の情報セキュリティに関して、一定水準の取り組みをしている証明になります。特にBtoBの取引では、委託先の管理体制を重視する企業が多く、ISMSの有無が選定基準に影響することも少なくありません。

書面での説明だけでは伝えにくい管理レベルを、認証を通じて客観的に示せる点は一種の強みといえるでしょう。また、既存の取引先に対しても、長期的な信頼関係を築く要因として役立ちます。

内部統制の強化につながる

ISMSの認証の取得は、情報セキュリティに関するルールの整備を通じて、内部統制の強化にも寄与します。情報の取り扱い手順や権限管理が明確になることで、業務の属人化を防ぎ、組織としての統制が取りやすくなるでしょう。

さらに、記録やレビューを前提とした運用が求められるため、問題発生時の原因特定や再発防止にも役立ちます。単なるセキュリティ対策を超えて、組織基盤の安定化につながる点は大きなメリットの一つです。

ISMSは「意味がない」と思われがちな理由

上記のように、ISMSの認証取得には多くのメリットがあります。しかし、企業によっては「形だけで実効性がない」「コストに見合う効果が感じられない」といった、不満の声も少なくありません。こうした評価が生まれる背景には、以下の要因があります。

形だけの運用になる可能性がある

ISMS認証を取得することが目的化してしまい、認証取得後は形式的な維持だけに終始するケースは少なくありません。審査に合格するための文書類は整備されているものの、実際の業務現場では手順書通りに運用されていなかったり、ルールが形骸化していたりする場合もあるでしょう。

また、年に一度の審査対応のためだけに書類を整える「審査対応型」の運用に陥ってしまい、セキュリティ体制の改善がおろそかにされている企業もあります。

セキュリティに関する知識が不足している

セキュリティに関する専門知識を持つ人材が不足していると、ISMSの効果的な運用は難しくなります。リスクアセスメントを適切に実施するには、技術的な脅威や脆弱性に関する理解が必要ですが、知識不足のまま表面的な評価にとどまってしまうケースがあります。

その結果、本当に対処すべきリスクが見過ごされたり、逆に過剰な対策に時間とコストを費やしたりする事態が発生しがちです。また、最新のサイバー攻撃の手法や脅威情報に関する情報収集が不十分だと、対策が遅れがちになり、実効性を失ってしまう場合もあります。

事業規模や環境・現場の実態に合っていないケースも

ISMSの要求事項を画一的に適用しようとすると、自社の事業規模や業務環境に合わない、過剰な仕組みになってしまうことがあります。

例えば、小規模な組織が大企業向けの複雑な管理体制を導入しようとすると、維持コストが事業規模に見合わず、現場の負担が大きくなりがちです。

また、業種や業務の特性を考慮せず、標準的なテンプレートをそのまま適用すると、実務とルールが乖離し、形だけの運用になる可能性もあります。現場の実態を無視した厳格すぎる決まり事は業務効率を低下させ、従業員の反発を招くこともあるので注意が必要です。

ISMSを「意味のある取り組み」に変えるポイント

上記のように、ISMSが「意味がない」とされる原因を理解し、意味のある取り組みに変えるには、以下のポイントを意識することが重要です。それぞれ詳しく見ていきましょう。

目的の明確化と適切なルールづくり

ISMSを有効に機能させるためには、まず導入目的を明確にする必要があります。例えば、取引先からの要請への対応なのか、情報漏洩防止なのかによって、重視すべき管理項目は変わってくるでしょう。

目的が曖昧なままでは、必要以上に厳しいルールを設けてしまい、現場の負担が増えてしまう可能性があります。業務フローや実態を踏まえた現実的なルールを設計することで、運用の形骸化を防ぎつつ、現場で無理なく実践できるセキュリティ体制の構築につながります。

経営層の積極的な関与

ISMSを全社的な取り組みとして定着させるには、経営層の関与が不可欠です。トップがセキュリティ対策の重要性を理解し、方針として明確に示すことで、現場の受け止め方は大きく変わります。

担当部署任せの取り組みでは優先順位が下がりやすく、改善活動も停滞しがちです。経営層が継続的に関与することで、ISMSを単なる管理業務ではなく、事業を支える重要なセキュリティ基盤として位置付けるようにしましょう。

さらに経営層が現場の意見を聞きながら、リスク評価や方針決定にも参加することで、全社的にバランスの取れたセキュリティ対策を進められるようになります。

リスクアセスメントの徹底

ISMSの運用の中心となるのがリスクアセスメントです。想定される脅威や弱点を正確に洗い出し、影響度や発生の可能性を評価することで、優先的に対策すべきポイントが明確になります。

あらゆるリスクに同じ対応を取る必要はなく、限られたリソースをどこに配分するかが重要なポイントです。さらに定期的にリスクを見直すことで、事業環境や技術の変化にも柔軟に対応でき、常に最新の状況に即したセキュリティレベルを維持できます。

効率的な運用体制の構築と改善

ISMSを持続可能な取り組みにするには、現場の負担を最小限に抑えられる運用体制の構築が必要です。専任の担当者だけに負担が集中しないように、役割分担を明確にして、部門横断的な協力体制を整えましょう。

またツールやシステムを活用して、文書管理やリスク管理、インシデント管理などの業務を効率化する必要があります。手作業で管理していると更新漏れやミスが発生しやすく、担当者の負担も大きくなるため、適切なツールの導入を検討しましょう。

さらに定期的な内部監査を通じて、運用上の問題点や改善の機会を発見し、継続的に改善を図ることも重要です。内部監査は形式的なチェックではなく、実効性を評価し、より良い運用方法を提案する機会として活用しましょう。

従業員教育とセキュリティ意識の向上

ISMSの実効性を高める上で、従業員一人一人の理解は欠かせません。ルールを守る理由や背景が共有されていなければ、形だけの対応に終わってしまうでしょう。

定期的な従業員教育や情報の共有を通じて、情報セキュリティが業務や会社の信用に直結することを伝えることが重要です。実際の事例や想定されるリスクを共有することで、従業員が自分事として捉えやすくなり、意識の定着につながります。

ISMS取得のための基盤づくりなら「Watchy」

ISMSを実効性のある取り組みにするには、日々の管理業務の負担を抑えつつ、必要なセキュリティ対策を実行できるツールやシステムの導入がおすすめです。Watchyは、IT資産管理や操作ログの可視化といった機能を通じて、情報セキュリティ対策を支援するクラウドサービスです。

ISMS対応を目的として、PCやデバイスの管理を効率化し、手作業による管理負担を軽減した事例もあります。直感的に操作できる管理画面やサポート体制により、専任のシステム担当者がいない環境でも運用しやすい点が特徴です。

また中小企業の事例では、プライバシーマークの取得に向けた操作ログ管理にも、Watchyが選ばれています。直感的な管理画面と丁寧なサポートにより、専任のシステム担当者が不在でも安心して運用できるツールです。この機会にぜひ、導入をご検討ください。

Watchy(ウォッチー) - クラウド型IT資産管理・ログ管理ツール

※参考:ISO規格に対応するための資産管理を効率化した事例 - Watchy(ウォッチー)

Pマーク取得に向けて操作ログ管理をできるようにしたかった - Watchy(ウォッチー)

ISMSの重要性を理解して全社的に取り組む

ISMSは単なる認証の取得が目的ではなく、組織の情報資産を守り、事業の継続性を高めるための重要な施策です。形だけの運用になると意味はありませんが、適切に設計し運用すれば、情報漏洩リスクの低減や内部統制の強化など、多くのメリットをもたらします。

ISMSを意味のある取り組みにするには、目的を明確にした上で、自社に合ったルールづくりや経営層の積極的な関与、徹底したリスクアセスメントが必要です。効率的な運用体制の構築とともに、従業員教育にも力を入れましょう。

認証の取得をゴールとするのではなく、継続的にセキュリティレベルを向上させる仕組みとして、全社的に取り組むことが重要です。

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執筆者

Watchy編集部

従業員が安心して働ける環境を提供するための、IT資産管理、情報漏洩対策、労務管理に関するコンテンツを発信しています。

Watchyは、株式会社スタメンが運営するクラウドサービスです。企業のIT情報統制の課題やバックオフィスの課題を、情報システム担当者が手薄な状況でも、Watchyが解決。設定・運用の手間を最小化しながら、押さえるべきポイントを確実に押さえた企業統制の実現を支援します。

【株式会社スタメンについて】 東京証券取引所グロース市場上場。Watchy、TUNAGなど、人と組織の課題解決を実現するSaaSを展開。情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)及びプライバシーマークを取得。