テレワークの普及やサイバー攻撃の巧妙化を背景に、情報セキュリティ対策は経営における最重要課題の一つとなっています。その対策の一環として、ISMSを取得する企業が増えているのです。本記事では、ISMS認証を取得している企業の特徴や、認証取得のメリット、具体的な取得プロセスまでを体系的に解説します。
目次
ISMS認証を取得している企業の傾向
情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)認証は、組織の規模や業種を問わず取得可能な国際規格として注目を集めています。
特に情報管理の厳格さが求められる業界での取得が顕著となっており、その動向から企業のセキュリティ意識の高まりが見て取れます。ISMS認証を取得している企業にはどのような傾向が見られるのかを、まずは見ていきましょう。
BtoB企業
製造業や情報サービス業を中心とするBtoB企業では、セキュリティ体制の強化と取引先からの信頼獲得を目的とした認証取得が進んでいます。
背景として、システム開発プロジェクトへの参画要件として指定されるケースが増加している点が挙げられます。加えて、サプライチェーン全体でのセキュリティ強化の観点から、主要取引先からの要請で取得するケースも目立ちます。
認証取得により、情報セキュリティに関する信頼性が向上し、新規取引先の開拓にも優位に働くと考えられています。
自治体や公共団体と取引する企業
公共事業への参入を目指す企業にとって、ISMS認証取得は重要な要件となっています。公共機関との取引では、個人情報保護やセキュリティ管理体制の確立が不可欠とされており、入札要件としてISMS認証が明記されるケースが増加傾向にあるためです。
特に情報システム関連の案件では、セキュリティ管理体制の証明としてISMS認証が求められることが一般的となっています。
また、自治体の情報システム構築や運用保守の案件においては、ISMS認証が事実上の参入要件となっているケースも少なくありません。
エンタープライズ企業
大手企業では、グループ全体でのガバナンス強化の一環としてISMS認証取得を推進する動きが顕著となっています。
国際展開を行う企業においては、ISO/IEC 27001に基づくISMS認証を取得することで、グローバル共通の基準でセキュリティ管理体制を構築している企業が多く見られるようです。
特に、機密性の高い情報を扱う業界での取得が特に進んでおり、これらの企業では部門単位での取得も活発に行われています。
また、事業継続性の観点から、災害対策やサイバーセキュリティ対策の一環として、ISMS認証の取得を推進するケースも増加しています。
ISMS認証を取得している企業を探す方法
ISMS認証取得企業の調査は、自社の取得検討や取引先の選定において重要な判断材料となります。効率的な調査方法と、その活用方法について解説していきます。
企業のホームページを確認
企業のWebサイトでは、ISMS認証取得に関する情報が複数の箇所で公開されています。一般的な掲載場所として、企業情報ページや品質管理のセクションが挙げられます。
ここでは、認証の取得範囲や取得年月日などの詳細情報を確認することが可能です。加えて、プレスリリースやニュースセクションにおいても、ISMS認証取得に関する告知が掲載されているケースが多く見られます。
新規取得時には、取得の背景や今後の活用方針などが詳しく説明されていることがあり、自社の取得検討における参考情報として活用できます。また、CSR報告書やサステナビリティレポートなどの企業報告書にも、情報セキュリティへの取り組みの一環として、ISMS認証に関する記載が見られるようです。
ISMS-ACで検索する
一般社団法人情報マネジメントシステム認定センター(略称:ISMS-AC)が運営するISMS適合性評価制度のWebサイトには、認証取得組織の検索システムが用意されています。
このシステムでは、業種、地域、認証範囲などの条件を指定して検索を行うことが可能です。
検索結果からは、認証取得組織の正式名称、登録範囲、初回登録日、有効期限などの情報を確認することができます。
同業他社の動向調査や、取引先候補の信頼性確認など、さまざまな用途での活用が可能となっています。なお、検索結果には最新の認証状況が反映されているため、認証の維持・更新状況の確認にも有効です。この機能は、特に新規取引先の選定や、業界内でのISMS認証取得状況の把握に役立ちます。
企業がISMS認証を取得する理由
情報セキュリティ対策の重要性が高まる中、ISMS認証取得を検討する企業が増加しています。取得目的は企業によってさまざまですが、主要な理由とそのメリットについて解説します。
セキュリティ体制の強化
ISMS認証取得のプロセスを通じて、組織全体での包括的なセキュリティ管理体制を確立することができます。
具体的には、情報資産の特定から始まり、それぞれの資産に対するリスクアセスメントの実施、適切な管理策の選択と導入まで、体系的なアプローチが可能です。
特にテレワーク環境下における情報漏洩対策として、明確な指針と管理体制を構築できる点が高く評価されています。
また、定期的な内部監査や外部審査の実施により、PDCAサイクルを回しながら継続的な改善を図ることができます。これにより、最新のセキュリティリスクへの対応や、インシデント発生時の迅速な対処が可能となり、組織全体のセキュリティレベルの底上げにつながっています。
社員のセキュリティ意識の向上
ISMS認証取得を通じて、全社員の情報セキュリティに対する意識を効果的に向上させることができます。認証取得のプロセスでは、情報セキュリティポリシーの策定や、具体的な実施手順の整備が必要となるためです。
これらの文書化された規程や手順に基づき、定期的な教育・訓練を実施することで、各社員が自身の役割と責任を明確に理解し、日常業務における適切な情報管理を実践できるようになります。
お役立ち資料:「情報セキュリティーポリシー」とは?
自治体・公共団体の事業に参入するため
前述のように公共事業への参入において、ISMS認証取得は重要な要件となっています。特に情報システム関連の案件では、セキュリティ管理体制の証明としてISMS認証が求められることが一般的です。
入札要件として明記されるケースも多く、認証を取得していないと応札自体ができない状況も発生しています。また、自治体や公共団体との取引では、個人情報保護や機密情報の管理が特に重視されており、ISMS認証はそれらの要件を満たす証明として活用されています。
認証取得により、公共事業への参入機会が広がり、新たな事業展開のチャンスにつながっています。さらに、一度認証を取得すれば、他の自治体案件への展開も容易になるというメリットもあるでしょう。
ISMS認証の取得や審査費用について
ISMS認証取得を検討する際、プロセスと費用の理解は重要な検討要素となります。ここでは、具体的な取得手順から費用の概算、外部リソースの活用まで、実務的な観点から解説します。
ISMSの審査の流れ
ISMS認証取得のプロセスは、一般的に1年程度の期間を要します。審査は、認証を取得する初回審査と、認証を維持するための審査、そして認証を更新する審査があります。
初回審査の場合、一次審査でマネジメントシステムの存在や、必要な文書が存在しているかの確認が行われます。次の二次審査では一次審査で確認した内容が組織に適応できているかの確認が行われます。
この運用期間中に内部監査を実施し、必要な是正措置を講じます。最後に、認証機関による審査を受け、要求事項への適合が確認されれば認証が付与されます。
この認証を維持する審査は1年ごと、認証を更新する審査は3年ごとに必要となり、この審査では、取得時の運用が維持できているかを確認されます。
ISMSの審査にかかる費用
認証取得にかかる費用は、組織の規模や認証範囲によって大きく異なります。主な費用項目として、初回審査費用、年次の維持審査費用、3年ごとの更新審査費用が挙げられます。
加えて、体制構築や文書作成にかかる内部コスト、教育研修費用なども考慮する必要があります。審査費用の目安として、従業員50人程度の組織では、初回審査でおよそ100万円前後、その後の維持審査で年間30-50万円程度を見込む必要があります。
審査費用は事業規模以外にも、宿泊費や審査期間によっても異なります。
コンサルへの依頼も検討しよう
ISMS認証取得には専門的な知識と経験が必要となるため、外部コンサルタントの活用を検討することが推奨されます。コンサルタントを利用することで、要求事項の解釈から具体的な対応策の策定まで、効率的な認証取得が可能となります。
特に、リスクアセスメントの実施方法や、文書体系の整備など、専門性の高い領域でのサポートは有効です。
ただし、コンサルタント費用は別途必要となるため、予算計画に含める必要があります。選定の際は、過去の支援実績や、対象業界での経験などを確認し、自社に適したコンサルタントを選ぶことが重要です。
ISMS認証の取得でセキュリティを構築する
ISMS認証取得は、組織的なセキュリティ管理体制の確立において有効な手段です。取引先や顧客へのアピールだけでなく、セキュリティ体制を構築することにも役立ちます。
重要なのは、ISMS認証を単なる認証取得で終わらせるのではなく、組織の持続的な成長とリスク管理の基盤として活用することです。認証取得後も、定期的な内部監査や見直しを通じて、PDCAサイクルを確実に回していく必要があります。
また、情報セキュリティに関する最新の脅威や対策についても、継続的に情報収集を行い、必要に応じて管理策の更新を行いましょう。
取得のためには、自社の現状分析から始め、段階的な準備を進めていきましょう。ISMS認証取得は、投資に見合う十分な価値をもたらす取り組みであり、今後のビジネス展開における重要な競争力となることでしょう。
低コストでセキュリティ対策を始めるなら
- 「セキュリティ対策が求められているが、予算が限られている」
- 「ひとり情シス状態で、管理負担が大きい」
こうしたお悩みを抱える中小企業の方は多くいらっしゃいます。
予算やリソースが限られている企業では、市販のパッケージソフトが高額で、オーバースペックになりがちです。
弊社の「Watchy」は、PC端末の台数や必要な機能に応じて契約内容を調整できるため、コストを抑えながら最適なセキュリティ対策を実現します。
ITの専門知識がなくても簡単に操作できるシンプルな管理画面を備えており、運用負担が少ない点もWatchyの特徴です。
まずは無料で資料をダウンロードしてお確かめください。
Watchy:https://watchy.biz/
運営会社:株式会社スタメン(東証グロース市場4019)
著者情報
Watchy 編集部
従業員が安心して働ける環境を提供するための、IT資産管理、情報漏洩対策、労務管理に関するコンテンツを発信しています。
Watchyは、株式会社スタメンが運営する、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)およびプライバシーマーク(Pマーク)を取得しているクラウドサービスです。東京証券取引所グロース市場上場。