近年、従業員のプライバシー保護対策が足りていないことで、情報漏洩や訴訟リスクに直面する企業が増加しています。プライバシー保護の観点からは、法令順守だけでなく従業員が安心して働ける環境づくりが重要です。本記事では、プライバシー保護の基礎知識から具体的な施策まで、現場で即実践できる対策を紹介します。

プライバシーの保護の基本知識

プライバシーの保護の重要性を理屈では理解していても、具体的に何をすべきか分からない人は少なくありません。そこでまずは、プライバシー保護の本質的な意味から法的リスクまで、管理職として押さえておくべき基礎知識を、実務に即した視点で解説します。

そもそもプライバシーとは?

プライバシーとは、個人の私事や私生活など、他者から干渉や侵害を受けない権利を指します。プライバシー保護とは文字通り、このプライバシーを守ることです

企業が守るべきプライバシーとしては、健康情報、家族構成、居住地情報といった個人情報があります。これに加えて職場特有の情報として、人事評価データ、給与情報、健康診断結果なども重要な保護対象となります。

これら全ての情報について、企業には厳格な管理が求められます。収集は業務上必要な範囲に限定し、目的外利用は固く禁止されます。特に、デジタルデータは複製や転送が容易なため、より慎重な取り扱いが必要です。

個人情報との違い

個人情報は、特定の個人を識別できる情報を指します。これに対してプライバシーは、それらの情報を本人の意思に基づいて管理する権利を包括的に表す概念となります。

個人情報保護法では、氏名・生年月日・住所などの基本情報に加え、マイナンバーや運転免許証番号などの公的な識別情報も保護対象として定められています。

プライバシー保護は、これらの個人情報に加えて、個人の行動・思想・信条・人間関係など、より広範な領域をカバーします。

そのため、企業の対応としては、法令遵守にとどまらず、従業員の権利や尊厳を守る包括的な施策が必要となります。

プライバシーを保護する法律

日本において、プライバシーに関する基本的な法的枠組みは個人情報保護法です。この法律では、個人情報の取得・管理・利用に関する基準が定められており、違反した場合は罰則の対象となります。

加えて、労働安全衛生法や労働基準法においても、従業員の個人情報やプライバシーの取り扱いに関する規定が設けられています。

特に重要なのが、2022年4月に改正された個人情報保護法で、オプトアウト規制の強化や越境移転に関する規制が追加されました。

企業はこれらの法規制を正確に理解し、確実に順守する体制を整備する必要があります。

出典:個人情報保護法|e-Gov 法令検索

出典:労働安全衛生法|e-Gov 法令検索

出典:労働基準法|e-Gov 法令検索

プライバシーの保護がなぜ重要なのか

デジタル時代において、プライバシー保護は企業の持続的成長に不可欠な要素となっています。以下では、プライバシー保護の重要性について詳しく解説します。

従業員が安心して働くため

職場におけるプライバシー保護は、従業員の心理的安全性を確保する上で極めて重要です。適切な保護体制が整備されていない環境では、従業員は常に個人情報漏洩への不安を抱えることになり、業務効率の低下やメンタルヘルスの悪化を引き起こす可能性があります。

特にテレワーク環境下では、業務と私生活の境界が曖昧になりやすく、より慎重な配慮が必要です。

企業は従業員のプライバシーを守ることで、信頼関係を構築し、働きやすい職場環境を実現することができます。これは結果として、生産性の向上や人材定着率の改善にもつながります。

情報漏洩リスクを回避するため

従業員の個人情報が外部に流出するようなセキュリティ体制であるということは、会社にとって重要な機密情報なども漏洩のリスクにさらされている可能性が高いといえるでしょう。

情報漏洩が発生した場合、対応コストや損害賠償の支払いに加え、システム全体の見直しと改修が必要となり、想定以上の費用負担が発生します。

さらに深刻なのが、企業の信用力への打撃です。取引先からの信頼低下は契約解除や取引縮小につながり、株価下落による時価総額の減少も避けられません。

特に昨今は、SNSでの拡散により、信用回復までに相当の時間と労力を要することも珍しくなく、この情報漏洩リスクはテレワークやクラウドサービスの普及により一層高まっています。

セキュリティ向上のため

プライバシー保護の取り組みは、組織全体のセキュリティレベル向上に直結します。情報の分類・管理を徹底することで、重要データの把握が容易になり、効率的なセキュリティ対策の実施が可能となるためです。

また、プライバシー保護のためのアクセス権限の適切な設定により、情報の閲覧・編集を業務上必要な範囲に限定できます。その結果、内部不正や誤操作によるデータ漏洩のリスクを大幅に低減できます。

特に個人情報の流出は内部要因が原因であることが多く、従業員の情報の取り扱いや、セキュリティポリシーを策定することが対策になります。そのため プライバシー保護の観点から社内体制を整理することは、そのまま セキュリティの向上につながるのです。

プライバシーを保護する方法

プライバシーを保護するといっても、具体的にどのような対策が必要なのでしょうか。以下では、具体的な保護手法と実装方法について解説します。

プライバシーポリシーを策定する

プライバシーポリシーは、組織におけるプライバシー保護の基本方針を定める文書です。プライバシーポリシーの策定は、効果的なプライバシー保護の礎となります。

明文化された基準があることで、情報管理における判断基準が統一され、各部門での恣意的な運用や解釈の違いを防ぐことが可能です。

また、ポリシーの存在は、従業員の権利意識と情報管理への当事者意識を高めます。自身の情報がどのように扱われるのかが明確になることで、従業員は安心して情報を提供できます。同時に、他者の情報を取り扱う際の責任も理解しやすくなるでしょう。

セキュリティツールの導入

プライバシー保護を技術面から支えるセキュリティツールの導入は必須です。

セキュリティツールは不正アクセスの防止、データの安全な保管、情報漏洩の防止に寄与します。特にクラウドサービスを利用する場合、データの暗号化とアクセス制御は重要度が増します。

セキュリティツールを仕事で使うパソコンやスマホに導入を義務付けることで、社内全体のセキュリティ水準を上げることが可能です。

導入時には、ツールの機能性、運用負荷、コストパフォーマンスを総合的に評価し、自社の環境に最適なものを選定する必要があります。

監視ツールの導入も効果的

情報セキュリティの維持には、適切な監視体制の構築が不可欠です。具体的には、Watchyのようなツールを導入することで、不正アクセスの検知、データ流出の防止、操作ログの記録が可能になります。

Watchyは、ハードウェアやソフトウェアの資産管理、ファイル操作ログの取得、Web閲覧履歴の監視など、幅広い機能を備えたクラウド型ツールです。

ただし、監視にあたっては従業員のプライバシーを過度に侵害しないよう、収集する情報を業務上必要な範囲に限定します。

例えば、Watchyでは操作ログの取得やUSBデバイスの使用制限を行う際にも、業務に必要なデータだけを対象とする運用が可能です。

監視ツールの導入を検討している場合、Watchyの導入を検討してみてはいかがでしょうか?

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パスワードを強化する

アクセス制御の基本となるパスワード管理の強化は、プライバシー保護の要です。具体的な施策として、パスワードの最低文字数設定、文字種の組み合わせ規制、定期的な変更要求があります。

パスワードマネージャーの導入により、複雑なパスワードの管理と定期的な更新を効率化できます。

多要素認証の導入も推奨され、特に重要なシステムやデータへのアクセスには必須となっています。これらの対策により、不正アクセスのリスクを大幅に低減することが可能です。

従業員に対する教育を行う

技術的対策と併せて重要なのが、従業員への教育です。

情報セキュリティの基本知識、プライバシー保護の重要性、具体的な対策方法について、定期的な研修を実施します。

フィッシング詐欺対策、ソーシャルエンジニアリング対策、情報漏洩防止策などの実践的な内容を含めることが重要です。

加えてインシデント発生時の報告手順や対応フローについても、明確に説明する必要があります。研修の効果を高めるため、実例を用いたケーススタディやハンズオン形式の演習を取り入れることも有効です。

プライバシー保護で注意すべきポイント

プライバシー保護対策は、導入して終わりではありません。以下では、継続的な改善と維持に必要な重要ポイントを解説します。

体制は定期的に見直す

四半期ごとにリスク評価を実施し、新たな脅威への対応策を検討するなど、プライバシー保護の体制については、技術の進化や法規制の変更に応じて定期的な見直しが必要です。

なぜなら、サイバー攻撃の手法は日々高度化し、従来の対策だけでは新たなリスクに対応しきれない可能性があるからです。

また、リモートワークの拡大や新たなツールの導入によっても、情報管理のリスクポイントが変化します。このような状況に対応するには、現在のセキュリティ体制を定期的に見直し、最新の状況に適応させることが重要です。

体制を定期的に更新することで、潜在的な脅威を事前に察知し、従業員や顧客の信頼を維持し続けることが可能となります。

テレワーク環境下ではルールを厳密にする

テレワーク環境特有のリスクに対応するため、通常よりも厳格なルール設定が求められます。

重要な対策として、業務用デバイスの持ち出し制限、クラウドストレージの利用制限があります。また、自宅での作業環境についても、のぞき見防止や書類の適切な管理など、具体的なガイドラインを設ける必要があるでしょう。

オンライン会議での情報共有についても、参加者の確認や画面共有時の注意事項など、詳細なルールを定めることが重要です。

責任の所在を明確化する

プライバシー保護体制を確実に機能させるには、責任の所在を明確にすることが不可欠です。組織内に情報管理責任者や担当チームを設置し、全社的なプライバシー保護が推進されるルール作りに取り組みましょう。

また各部門にも担当者を配置し、日常的な管理と監督を担当させます。インシデント発生時の対応についても、初動対応から是正措置、再発防止策の実施まで、責任者と手順を明確に定めましょう。その結果、万が一の事態が発生しても、迅速かつ適切な対応が可能となります。

プライバシーの保護で従業員が安心して働ける環境を

プライバシー保護は、デジタル時代における企業の競争力を左右する重要な要素です。適切な保護体制の構築により、従業員は安心して能力を発揮できるようになり、結果として企業の生産性向上にもつながります。

本記事で解説した対策を基に、自社の状況に合わせた保護体制を整備してください。重要なのは、形式的な対応ではなく、実効性のある施策を継続的に実施することです。

経営層との連携を密にし、必要な予算と人員を確保しながら、段階的に対策を強化していくことを推奨します。プライバシー保護は、企業の持続的な成長を支える基盤となるのです。

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著者情報

Watchy 編集部

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Watchyは、株式会社スタメンが運営する、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)およびプライバシーマーク(Pマーク)を取得しているクラウドサービスです。東京証券取引所グロース市場上場。