昨今のデジタル化の加速により、中小企業においても情報資産の重要性が増大しています。適切な管理体制の構築は、事業継続性の確保とリスク管理の観点から経営戦略上の重要課題となりました。この記事では、限られた経営資源で実現可能な、実践的な情報資産管理の手法を解説いたします。
目次
情報資産とは何か
企業経営において重要な情報資産の定義から、その種類、管理の必要性まで、基本的な概念を分かりやすく解説いたします。
情報資産とは、企業活動において価値を持つ全ての情報とそれらを扱うシステムや設備を指します。一般的な中小企業における情報資産としては、顧客データベース、製品の仕様書、業務マニュアル、社内規定などのデジタルデータが挙げられます。
それに加え、契約書、報告書、企画書といった紙媒体の文書も重要な情報資産として位置付けられます。
現代のビジネス環境において、こうした情報資産の適切な管理と保護は、事業継続の基盤となっています。とりわけ、DXが進展する中、企業の競争力維持には、これら情報資産の戦略的な活用と厳密な保護が不可欠です。
情報資産の種類
デジタル化が進む現代において、企業が保有する情報資産は多岐にわたります。それぞれの特性を理解し、適切な管理方法を選択することが、企業の持続的な成長には不可欠です。
以下では、主要な情報資産の種類と、その特徴について詳しく見ていきましょう。
社員や顧客の個人情報
個人情報保護法の対象となる重要データとして位置付けられます。氏名、住所、メールアドレスといった基本情報に加え、入社日、職歴、給与情報なども含まれます。
一般企業においては、人事部門が主管となり、アクセス権限を厳密に設定した上で、専用のデータベースで管理するケースが一般的です。
特に、マイナンバーなどの特定個人情報については、通常の個人情報より厳格な管理が求められます。
企業の取引情報や財務情報
取引先との契約内容、販売実績、仕入れ情報、決算書類など、企業活動の根幹を成す情報群です。経理部門や営業部門が中心となって管理を行い、ERPシステムやクラウド会計ソフトなどを活用した一元管理が主流となっています。
これらの情報は、企業の経営戦略に直結するため、部署や役職に応じた段階的なアクセス権限の設定が不可欠です。
業務に関するノウハウや知識
業務マニュアル、社内規定、業務プロセス、ベストプラクティスなど、日々の業務遂行に必要な情報資産です。ナレッジマネジメントシステムを導入し、部門横断的な情報共有を実現している企業も増加傾向にあります。
属人化を防ぎ、組織全体の生産性向上につなげるため、適切な文書化と共有の仕組みづくりが求められます。
製品情報や特許などの知的財産
製品設計図、研究開発データ、特許情報、ソースコードなど、企業の競争優位性を直接的に支える情報資産です。
研究開発部門や知的財産部門が管理の中心となり、専用のバージョン管理システムや特許管理データベースを用いて、厳重な管理を行います。
これらの情報は、企業の将来的な成長に直結するため、特に高度なセキュリティ対策が必要とされます。
物理的な資産
サーバー機器、ネットワーク設備、PCなどのハードウェアも重要な情報資産です。
情報システム部門が一元的に管理し、定期的な保守点検や更新計画の策定を行います。クラウドサービスの利用が一般化した現在でも、オンプレミス環境との適切なハイブリッド構成を検討する必要があります。
情報資産の管理がなぜ重要なのか
デジタル社会における企業活動において、適切な情報資産管理は事業継続の必須条件となっています。その重要性は年々増大しています。
デジタル化により管理すべき情報が増えている
業務のデジタル化に伴い、企業が扱うデータ量は指数関数的に増加しています。従来の紙文書に加え、電子メール、チャットログ、センサーデータなど、新たな形態の情報資産が次々と生まれています。
クラウドストレージの活用やデータベースの構築により、これらの情報を体系的に管理する必要性が高まっています。
サイバー攻撃とセキュリティは日々進化している
サイバー攻撃の手法は高度化し続けており、企業の情報資産を狙った標的型攻撃やランサムウェアの被害が後を絶ちません。
AIを活用した新種のマルウェアの出現など、セキュリティ上の脅威は増大の一途をたどっています。こうした状況下では、従来型の対策に加え、最新のセキュリティ技術の導入が不可欠です。
企業価値を守るため
現代の企業経営において、情報資産は売上や利益に直結する重要な経営資源です。中小企業にとって、長年の営業活動で築いた取引先との関係性や、技術者の経験から生まれた製造ノウハウなどは、代替の効かない貴重な資産となっています。
実際の経営現場では、情報資産の不適切な管理による様々な問題が発生しています。取引先の機密情報が流出した結果、取引停止に追い込まれるケース。あるいは、製品の製造工程データが外部に漏洩し、競合他社に模倣されてしまうケース。さらには、重要なデータが消失したことで、業務が停滞し、顧客対応に支障をきたすケースなど、その影響は経営全体に波及します。
こうしたリスクへの対策として、中小企業では経営資源の制約を考慮した現実的なアプローチが必要です。社内の重要な情報を把握し、その取り扱い方法を明確にすることから始めるのが得策でしょう。加えて、従業員教育を通じた意識向上も重要な施策となります。
情報が外部に流出する要因
情報漏洩のリスクは、内部と外部の双方に存在します。それぞれの特性を理解し、適切な対策を講じることが重要です。
会社内部で発生する情報漏洩の原因
内部からの情報漏洩は、意図的なものと非意図的なものの両方が存在します。意図的な漏洩としては、退職予定者による情報持ち出しや、金銭目的での情報売買などが挙げられます。
一方、非意図的な漏洩の典型例として、メールの誤送信、USBメモリの紛失、クラウドストレージの権限設定ミスなどがあります。特に問題となるのが、セキュリティ意識の低さや、ルール違反の常態化です。
具体的なケースとして、私用デバイスでの業務データの取り扱い、パスワードの使い回し、機密文書の放置などが報告されています。
これらの問題に対処するためには、技術的対策だけでなく、従業員教育の徹底や、業務プロセスの見直しが必要です。また、内部監査の実施や、情報持ち出しの監視システムの導入など、抑止力となる仕組みの整備も重要な対策となります。
外部から発生する情報漏洩の原因
外部からの脅威は、年々その手法が巧妙化しています。標的型メール攻撃では、実在する取引先を装い、精巧に作られた偽装メールを送信するケースが増加しています。
また、クラウドサービスのアカウント情報を狙ったフィッシング攻撃や、セキュリティの脆弱性を突いた不正アクセスなども深刻な問題となっています。
特に注意が必要なのは、取引先や委託先を経由した情報漏洩です。サプライチェーン全体のセキュリティレベルは、最も脆弱な部分に左右されるため、取引先の選定や監督にも注意を払う必要があります。さらに、ソーシャルエンジニアリングを活用した攻撃も増加傾向にあり、SNSなどで公開された情報を悪用されるリスクも存在します。
これらの外部脅威に対しては、技術的対策の導入に加え、インシデント発生時の対応手順の整備が重要です。
情報資産を管理する方法
効果的な情報資産管理には、体系的なアプローチが求められます。組織の規模や業態に応じた最適な管理手法の選択が重要です。
情報資産を分類・整理する
情報資産の効果的な管理には、適切な分類体系の構築が不可欠です。一般的な分類方法として、機密性、完全性、可用性の三つの観点からの評価が広く採用されています。
機密性の観点からは、「極秘」「社外秘」「部外秘」「一般」などのレベル分けを行い、それぞれに応じたアクセス制御や取り扱い手順を定めます。
完全性の観点からは、データの改ざんや損失が業務に与える影響度を評価し、バックアップ頻度やアクセスログの保管期間を決定します。可用性の観点からは、システム障害時の業務影響を考慮し、重要度に応じたバックアップ体制や代替手段を整備します。
これらの分類作業は、情報システム部門だけでなく、実際に情報を取り扱う現場部門との協議を通じて進める必要があります。また、定期的な見直しを行い、新たに発生した情報資産を適切に分類体系に組み込んでいくことも重要です。
アクセス権限と管理者の設定
アクセス権限の管理は、情報セキュリティの基本となる重要な施策です。権限設定の基本原則として、「最小権限の原則」と「職務分掌」の二つが挙げられます。
具体的には、部署や役職に応じた標準的な権限テンプレートを作成し、それを基準としながら、個々の業務内容に応じて細かな調整を行います。
特に注意が必要なのは、人事異動や退職に伴う権限の変更・削除です。これらの管理を確実に行うため、人事システムと連携した自動化の仕組みを導入する企業も増加しています。また、特に重要な情報へのアクセスについては、上長による承認プロセスを設けたり、操作ログを定期的に監査したりする仕組みが必要です。
さらに、システム管理者による不正を防ぐため、特権IDの使用状況を監視する仕組みや、重要な操作に対する相互チェック体制の整備も重要となっています。
管理する場所やルールを決める
情報資産の保管場所と取り扱いルールの明確化は、効果的な管理体制の根幹を成します。デジタルデータについては、社内サーバー、クラウドストレージ、エンドポイントデバイスなど、それぞれの特性を考慮した保管場所の選定が必要です。
特に、クラウドサービスを利用する際は、データの所在地や法的要件への適合性を確認することが重要です。物理的な文書については、施錠可能なキャビネットでの保管や、シュレッダー処分の手順など、具体的な取り扱い方法を規定します。
また、情報の持ち出しや複製に関するルールも明確にする必要があります。さらに、災害時のバックアップデータの保管場所や、復旧手順についても事前に定めておく必要があります。
外部の脅威から情報資産を守る対策
サイバーセキュリティの強化は、現代の企業にとって最重要課題の一つです。総合的なセキュリティ対策の実施が不可欠です。
社員に対するセキュリティ教育の実施
効果的なセキュリティ対策には、従業員の意識向上が不可欠です。セキュリティ教育は、新入社員研修から始まり、定期的な研修、役職や部門に応じた専門研修など、体系的なプログラムとして実施する必要があります。
教育内容としては、情報セキュリティポリシーの解説、実際のインシデント事例の研究、標的型メール対応訓練などが含まれます。特に重要なのは、単なる知識の伝達ではなく、実践的なトレーニングを通じて、セキュリティ意識を日常的な行動に結び付けることです。
また、テレワーク環境特有のリスクや、私用デバイスの業務利用に関する注意点など、働き方の変化に応じた新たな教育テーマも重要となっています。教育効果を測定するため、理解度テストや模擬訓練の実施、インシデントの発生状況のモニタリングなども必要です。
リスクの評価と監査を定期的に実施
情報セキュリティリスクの評価と監査は、PDCAサイクルの重要な要素として定期的に実施する必要があります。
リスク評価では、情報資産の洗い出しから始め、それぞれの資産に対する脅威と脆弱性を特定します。具体的な評価項目として、システムの脆弱性診断、アクセスログの分析、物理的なセキュリティ対策の確認などが含まれます。
また、クラウドサービスの利用状況やサードパーティリスクの評価も重要です。監査においては、情報セキュリティポリシーの順守状況、アクセス権限の適切性、セキュリティ対策の実効性などを確認します。これらの結果は、経営層に報告するとともに、改善計画の策定に活用します。
特に、重大な脆弱性が発見された場合は、速やかに対策を講じる必要があります。さらに、外部の専門機関による第三者監査を定期的に実施することで、客観的な評価と改善提案を得ることも推奨されます。
セキュリティソフトの導入
効果的なセキュリティ対策には、適切なセキュリティソフトの選択と導入が不可欠です。基本的な対策として、全てのエンドポイントにアンチウイルスソフトを導入し、定義ファイルの自動更新を確実に行う必要があります。
さらに、次世代ファイアウォールやEDR(Endpoint Detection and Response)など、高度な脅威に対応できるソリューションの導入も検討します。
また、データ損失防止(DLP)ツールを導入し、重要情報の外部流出を防止することも重要です。これらのツールは、単独での導入ではなく、SIEM(Security Information and Event Management)などの統合管理プラットフォームと連携させることで、より効果的な運用が可能となります。
ツールの選定に当たっては、自社の運用体制や技術力を考慮し、適切な製品を選択することが重要です。また、導入後の保守や更新作業も考慮に入れた計画が必要です。
情報資産を管理するツールの導入
情報資産を効率的に管理するためには、目的に応じた適切なツールの導入が重要です。文書管理システムでは、ファイルの保管場所の一元化、バージョン管理、アクセス権限の詳細設定などの機能が必要です。また、データ暗号化ツールを導入し、重要情報の保護を強化することも推奨されます。
またクラウドストレージを活用する場合、アクセスやログ履歴の監視機能も有効です。フォルダー内のファイルに対して行われた作成、削除、名称変更などの操作をログとして取得する機能や、ソフトウェアの情報、ハードウェアの管理を行うといった対策も、情報資産を守るのに役立ちます。
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適切な管理の実施で情報資産を保護しよう
情報資産の適切な管理は、企業の持続的な成長に不可欠な要素です。特に重要なのは、単なる技術的対策だけでなく、組織的な取り組みとして情報資産管理を位置付けることです。
経営層のリーダーシップのもと、全社的な管理体制を構築し、継続的な改善を進めていくことが求められます。
今後も、デジタル化の進展やサイバー攻撃の高度化に伴い、情報資産管理の重要性は一層高まっていくことが予想されます。記事の内容を参考に、自社の状況に応じた適切な管理体制の構築を進めていきましょう。
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