近年、中小企業においても、情報漏洩対策が急務となっています。大企業だけでなく、中小企業もサイバー攻撃や内部の情報管理ミスによる漏洩のリスクが高まっており、これを軽視することは大きな経営リスクに繋がります。

もし、情報漏洩が発生した場合、経営に致命的な打撃を与えるだけでなく、取引先や顧客、従業員、さらには株主などの信頼を失う危険性があります。

本記事では、中小企業が直面する情報漏洩の主な原因や対策、そして万が一漏洩が発生した際に取るべき対応をわかりやすく解説していきます。

中小企業が情報漏洩対策を行う重要性

情報漏洩が発生した際に最も重要なのは、直接的な被害はもちろん、長期的な影響を最小限に抑えることです。たとえば、顧客の個人情報や会社の機密情報が漏洩すると、第三者に悪用され、サイバー攻撃の標的となるリスクが急増します。特に中小企業では、こうした攻撃への対策が不十分であるケースが多いため、事態の深刻さを認識しておくことが重要です。

具体例として、ある企業では、社員のPCがマルウェアに感染し、顧客情報が外部に流出する事故が発生しました。この場合、取引先だけでなく、従業員や株主といった多くのステークホルダーに重大な影響を与える結果となり、信頼回復には長期間を要しました。こうした被害を未然に防ぐためにも、情報漏洩のリスクをしっかりと調査し、対策を講じることが必要です。

【無料配布】情報漏洩対応マニュアルのサンプル

こちらでは、情報漏洩対応マニュアルのサンプルを無料で配布しています。自社に合った内容を加えて、独自のマニュアル作成にご活用ください。

情報漏洩を防ぐためには、まずは現行のセキュリティポリシーを見直し、強化することが不可欠です。まず、現在のポリシーを詳細に分析し、今回の漏洩で明らかになった脆弱性や課題に対応するために改訂を行いましょう。特に、情報の分類と取り扱い方法、アクセス権限の管理、データの暗号化基準、外部デバイスの使用制限といった重要項目を重点的に検討します。

さらに、クラウドサービスやリモートワークといった新しい働き方に対応したガイドラインも取り入れる必要があります。

改訂されたセキュリティポリシーは、経営層の承認を得た上で、全従業員にしっかりと周知徹底することが重要です。周知後も定期的な監査やPDCAサイクルを実施し、継続的な改善を行うことで、組織全体のセキュリティレベルを高めることができます。強化されたセキュリティポリシーは、組織のセキュリティ文化の基盤となり、長期的なセキュリティ向上につながります。

また、情報セキュリティポリシーの作成方法や、作成時のポイントについて詳しく知りたい方は、Watchyの提供する「情報セキュリティーポリシーとは?」の資料もぜひご活用ください。

なぜ情報漏洩が起こってしまうのか

情報漏洩の原因は多岐にわたりますが、特に近年では、デジタル化の進展に伴い、サイバー攻撃による漏洩が急増しています。株式会社東京商工リサーチの調査によれば、2022年の情報漏洩事故は前年比1.2倍増の165件に上り、過去最多を記録しました。この背景には、クラウドサービスやリモートワークの普及により、デジタルデータの管理が以前よりも複雑化していることが挙げられます。

以下では、代表的な情報漏洩原因を具体例とともに解説します。

ウイルス感染・不正アクセス

最も多い情報漏洩の原因は、ウイルス感染や不正アクセスです。2022年の情報漏洩事故のうち、91件(全体の55.1%)がこれに該当しています。

たとえば、ある企業では、社内のPCがマルウェア「Emotet」に感染し、従業員のメールアドレスや内部資料が外部に流出する事態が発生しました。このケースでは、取引先にも同様のウイルスが送信され、信頼関係が損なわれる結果となりました。

このようなウイルス感染は、日常的なメールのやりとりやインターネットの利用によっても簡単に起こり得るため、社員一人ひとりがセキュリティ意識を高めることが求められます。

誤表示・誤送信

次に多い原因は、「誤表示」や「誤送信」です。2022年には43件(全体の26.0%)がこれに該当しました。たとえば、あるWebサービスでは、誤って無関係の個人情報を公開してしまう事故が発生し、ユーザーのクレーム対応に追われることとなりました。また、メールの送信ミスや、CCとBCCの使い分けミスによって、社外秘の情報が第三者に送信されてしまうケースも多く報告されています。

これらの事故は、システムの設計ミスや人為的な操作ミスによって発生するため、社内の情報管理体制を見直し、社員に対する教育を徹底することが必要です。

紛失・誤廃棄

最後に、「紛失・誤廃棄」による情報漏洩も見逃せない問題です。2022年には25件(全体の15.1%)がこれに該当しました。このケースでは、書類やデータが誤って廃棄されたり、紛失されたりすることによって、情報漏洩が発生する可能性があります。

たとえば、ある企業では、紙媒体で管理していた顧客情報の書類が誤って廃棄され、その後復元できないという事態に陥りました。このような事故は、デジタル化が進んだ現在でも起こり得るため、書類やデータの管理方法を徹底し、重要な情報は適切にデジタル化することが重要です。

従業員の個人情報が流出してしまうとどうなるのか?

従業員の個人情報が流出してしまうと、企業にとってさまざまな深刻な影響が生じます。

まず、個人情報が悪用されるリスクが高まります。たとえば、流出した従業員の住所や電話番号が詐欺やなりすましに利用される可能性があります。これにより、従業員が精神的なストレスを受けるだけでなく、金銭的な被害にもつながる恐れがあります。

さらに、企業にとっても信頼の低下が避けられません。従業員が自分の情報が守られていないと感じると、企業への不信感が強まり、離職率の上昇や従業員のモチベーション低下を招く可能性があります。

加えて、企業は法的責任を問われることがあります。日本では個人情報保護法により、適切な管理を怠った企業には罰則が科される場合があります。この罰則には、行政指導や罰金が含まれることもあり、企業の財政面にも打撃を与えることが考えられます。

実際にある企業では、従業員の個人情報が外部に流出した結果、多額の損害賠償請求や、取引先との契約解除に追い込まれる事態に発展しました。このように、情報漏洩は企業の存続にも影響を与えかねない重大なリスクであるため、徹底した管理体制を構築することが不可欠です。

結論として、従業員の個人情報が流出すると、個人と企業の双方に深刻な損害が及ぶ可能性があり、その影響を最小限に抑えるためには、日頃からの適切な情報管理が必要です。

情報漏洩が起きてしまった際の原因調査の手法

情報漏洩が発生した場合、その原因を特定し再発を防ぐためには、漏洩経路や影響範囲を正確に把握することが重要です。ここでは、6つの主要な調査手法を解説します。これらの手法を理解し、適切に実施することで、情報漏洩に迅速かつ効果的に対処できます。

ディスク調査

ディスク調査とは、パソコンのハードディスクを詳しく調べる方法です。過去にアクセスされたデータや、インターネットの閲覧履歴、削除されたファイルを復元することができます。

この調査では、パソコンの種類によって得られる情報が異なるため、専門的な知識が必要ですが、非常に重要な手法です。

資産管理履歴調査

資産管理履歴調査は、あらかじめ導入しておいた管理ツールを使って、パソコンの利用履歴や操作履歴を調べる方法です。

誰が、いつ、どんなファイルを作成、変更、削除したのかを確認できます。

この手法を実施するには、事前に資産管理ツールを導入しておく必要がありますが、管理体制を整えておけば、不正な操作や情報の流出を素早く発見するのに役立ちます。

不正プログラム解析

不正プログラム解析では、パソコンに侵入したウイルスやマルウェアの動作を調べます。

これにより、どのような機能を持っていたのか、どこに情報が送られたのかがわかります。

解析方法には、プログラムを直接分析する「静的解析」と、実際に動作させて確認する「動的解析」の2種類があります。これらを駆使して、不正プログラムの正体を暴きます。

メモリ調査

メモリ調査では、パソコンのメモリ(作業中に一時的にデータを保存する場所)を調べます。メモリには、不正プログラムの痕跡や使われた通信ポートの情報が残っていることがあります。

ただし、メモリは電源を切るとデータが消えてしまうため、電源を落とさないように注意することが大切です。

サーバ履歴調査

サーバ履歴調査では、ネットワーク上のサーバ(ファイルを保存する場所や、認証を管理する仕組み)を調べます。

どのデータが外部に送信されたかや、不正なアクセスがあったかを確認することができます。

サーバに残されたログ(履歴)を組み合わせて調査することで、問題の発生箇所や時期を特定できます。普段から履歴をきちんと保存する仕組みを整えておくことがポイントです。

通信内容の調査

通信内容の調査では、ネットワーク上で行われた全ての通信を専用の機器で解析します。

これにより、外部に送られたファイルや、ウイルスによる不正な通信を確認することができます。

どの情報がいつ外部に流れたのか、どのサーバに送られたのかを正確に把握できるため、重要な手法です。

情報漏洩が発生した際の対応ステップ

情報漏洩が起きてしまった場合、その被害を最小限に抑えるためには、迅速かつ適切な対応が欠かせません。ここでは、独立法人情報処理推進機構(IPA)が提供する「情報漏えい発生時の対応ポイント集」をもとに、具体的な対応ステップをわかりやすく解説します。

【1】発見・報告

まず、情報漏洩の兆候や事実を発見した場合には、すぐに責任者に報告します。

この段階での重要なポイントは、証拠を保全することです。不必要な操作を避け、調査がスムーズに進められるようにします。また、漏洩の可能性があるパソコンやシステムを特定し、外部からの通報があった場合は、詳細な記録を残しておきましょう。

起きた事象を整理し、漏れなく記録することが、この後の対応を円滑に進めるための第一歩です。

【2】初動対応

次に、対策本部を設置し、具体的な対応方針を決定します。

この段階では、被害の拡大を防ぐための初動措置が重要です。たとえば、該当するサービスを一時停止したり、感染した端末をネットワークから切り離したりすることが必要です。特に、不正プログラムが動作している可能性がある場合は、物理的に端末を隔離し、被害が広がらないよう対策を取ります。

初動対応が迅速であれば、二次被害の防止にもつながります。

【3】調査

初動対応を進めながら、並行して原因調査を行います。

調査の際には「いつ」「どこで」「誰が」「何を」「なぜ」「どのように」の5W1Hに基づいて情報を整理することが重要です。このアプローチにより、情報漏洩の原因や範囲を的確に把握し、今後の対応に役立てることができます。

【4】通知・報告・公表

被害の詳細が明らかになった後は、速やかに関係者への通知や報告、公表を行います。

まず、漏洩の対象となる取引先や個人に対して直接通知を行います。個別通知が難しい場合は、企業のWebサイトやメディアを通じた発表も検討が必要です。

また、必要に応じて、監督官庁や警察への報告、IPAへの公表も検討します。特に、犯罪の可能性がある場合は、警察への届け出が不可欠です。

【5】抑制措置・復旧

次に、漏洩による被害の拡大を防止し、データの復旧作業を行います。

たとえば、IDやパスワードが漏洩した場合には、該当アカウントの利用停止やパスワードの再設定を行います。さらに、バックアップデータを用いて、失われた情報の復旧を進めます。

この段階で、顧客や関係者が情報漏洩に対する不安を感じることが多いため、専用の相談窓口を設置するなど、迅速な対応が求められます。

【6】事後対応

最後に、再発防止策を徹底します。

情報漏洩を二度と繰り返さないためには、物理的なセキュリティの強化(サーバールームの施錠など)、技術的な対策(アクセス制御やデータの暗号化)、管理面の改善(情報資産の保管方法の見直し)、さらには従業員教育が不可欠です。

また、経営層への詳細な報告を行い、必要に応じて責任の所在を明確にし、内部者による漏洩であった場合には厳正な処分が求められます。

情報漏洩対応マニュアル作成で押さえておくべきポイント
情報漏洩が発生した際、迅速かつ適切な対応を行うためには、事前に対応マニュアルを整備しておくことが不可欠です。このマニュアルは、従業員が混乱せずに的確な行動を取れるようにするための指針となります。

以下では、情報漏洩対応マニュアルを作成する際に押さえておくべきポイントを具体的に解説し、ケース別の対応ステップや、マニュアルのサンプルも紹介します。

情報漏洩対応の5原則

情報漏洩対応の最も重要な目的は、漏洩による被害を最小限に抑えることです。この目的を達成するためには、以下の5つの原則に基づいた対応が必要です。

これらをマニュアルに盛り込むことで、予期せぬ状況にも柔軟に対応できる仕組みが作れます。

被害拡大防止・二次被害防止・再発防止の原則

情報漏洩が発生した際に最も優先されるのは、被害が広がらないようにすることです。たとえば、漏洩した情報が外部で悪用されないように、ネットワークからの切断や不正アクセスの遮断が求められます。さらに、二次被害や再発を防ぐために、システムの脆弱性を早急に修正します。

事実確認と情報の一元管理の原則

発生した事実を正確に確認し、全ての情報を一元管理することが大切です。これにより、何が流出したのか、どの程度の影響があるのかを把握し、適切な対応策を講じることが可能になります。また、部門間での情報共有をスムーズに行い、全員が同じ情報を基に対応を進められるようにします。

透明性・開示の原則

情報漏洩が発生した場合、影響を受ける取引先や顧客に対しては、迅速かつ透明な情報開示が必要です。誤った情報が拡散しないよう、正確な内容を速やかに発表し、関係者との信頼関係を保つことが重要です。

チームワークの原則

情報漏洩対応は、社内の複数の部門が協力して取り組む必要があります。IT部門だけでなく、法務や広報、経営陣も連携して対応することで、適切な役割分担を行い、効果的な対応を実現します。チームとしての連携がスムーズであるほど、対応スピードが上がり、被害を抑えることが可能です。

備えあれば憂いなしの原則

情報漏洩は、いつ発生するか予測が難しいため、事前にマニュアルを整備し、従業員が適切に対応できるよう教育を行うことが重要です。定期的な訓練を実施し、従業員全員が対策を理解している状態を保つことで、万が一の事態に備えられます。

ケース別の対応ステップ

情報漏洩の対応は、基本的には「発見・報告」「初動対応」「調査」「通知・報告・公表」「抑制措置・復旧」「事後対応」という6つのステップで進行します。しかし、具体的な対応内容は発生したケースによって異なります。ここでは、代表的な7つのケースを挙げ、対応ステップをマニュアルに反映する際のポイントを解説します。

紛失・盗難の場合の対応

物理的な情報機器が紛失・盗難に遭った場合は、まず機器をネットワークから切断し、外部からの不正アクセスを防ぎます。必要に応じて警察への届け出も検討し、被害拡大を防ぐための措置を講じます。

誤送信・Webでの誤公開の場合の対応

メールの誤送信や、Web上での誤った情報公開が発生した場合は、関係者に速やかに通知し、訂正措置を取ります。公開された情報はすぐに削除し、再発防止のためのシステム設定変更なども行います。

内部犯行の場合の対応

従業員が意図的に情報を漏洩した場合、速やかに証拠を収集し、関係者への聴取を行います。必要に応じて法的手続きを進め、内部統制の強化を図ります。

Winny/Share等への漏洩の場合の対応

ファイル共有ソフトを通じた情報漏洩の場合、漏洩したファイルの特定と拡散防止が重要です。共有ソフトの使用を社内で禁止する対策も必要です。

不正プログラム(ウイルス、スパイウェア等)の場合の対応

ウイルスやスパイウェアが原因の情報漏洩では、感染した端末を隔離し、ウイルス駆除を実施します。被害拡大を防ぐために、セキュリティ体制を強化することが求められます。

不正アクセスの場合の対応

外部からの不正アクセスが原因で情報が漏洩した場合、速やかにシステムを遮断し、ログを確認して侵入経路を特定します。脆弱なセキュリティ部分を見直し、強化策を講じます。

風評・ブログ掲載の場合の対応

SNSやブログでの風評被害に関しては、誤解を解くために正しい情報を発信し、必要に応じて法的措置を取ります。影響を最小限に抑えるための迅速な対応が鍵です。

まとめ

本記事では、情報漏洩対応について、情報漏洩調査の原因や種類のほか、対応ステップ、マニュアル作成まで徹底解説しました。
情報漏洩対応で重要なことは、情報漏洩対応の5原則の下、被害を最小限に抑え、適切な対応をすることです。再発防止策や復旧を行うことはもちろん、必要な情報公開をするなど透明性を確保することで、被害拡大防止や類似事故の防止など、企業の説明責任を果たすことができます。
本記事を参考に、情報漏洩対応を適切に行いましょう。

低コストでセキュリティ対策を始めるなら

  • 「セキュリティ対策が求められているが、予算が限られている」
  • 「ひとり情シス状態で、管理負担が大きい」

こうしたお悩みを抱える中小企業の方は多くいらっしゃいます。

予算やリソースが限られている企業では、市販のパッケージソフトが高額で、オーバースペックになりがちです。

弊社の「Watchy」は、PC端末の台数や必要な機能に応じて契約内容を調整できるため、コストを抑えながら最適なセキュリティ対策を実現します。

ITの専門知識がなくても簡単に操作できるシンプルな管理画面を備えており、運用負担が少ない点もWatchyの特徴です。

まずは無料で資料をダウンロードしてお確かめください。

Watchy:https://watchy.biz/
運営会社:株式会社スタメン(東証グロース市場4019)

著者情報

Watchy 編集部

従業員が安心して働ける環境を提供するための、IT資産管理、情報漏洩対策、労務管理に関するコンテンツを発信しています。

Watchyは、株式会社スタメンが運営する、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)およびプライバシーマーク(Pマーク)を取得しているクラウドサービスです。東京証券取引所グロース市場上場。